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小さな体をそっと抱き寄せて
最後にアナタが口ずさんだ言葉
今でもはっきりと脳裏に焼きついている
忘れもしない
アナタが消えた日。
■■■貴方の赤と俺の青と■■■
「夕焼けの色の赤と、空の青。それが混ざると・・・・パープルスカイが見れるんだって」
真っ白なシーツの海に横たわり 汚れのないまっさらな体を
投げ出したままのキリトは 本当に綺麗だった。
事を終えた後に キリトとベッドでたわいもない話をするのが好きだった。
TVの話 最近読んだ本のこと ライヴの話 メンバーの話
どれもこれも話す内容はなんにしろ
貴方とそうやっていられることが何よりも幸せだった。
貴方が突然消えてしまうまで。
「なぁタケオ?もしさ、俺に何かあったら・・・その時は悲しんだりするなよ?」
「何言ってんの?突然」
「いいからっ。約束しろよ」
絶対に 泣いたりしないって。
俺は戻ってくるから。
それから数日して 病院からの連絡で 俺の全ては変わった。
「事故・・・だって」
小さな貴方の体を押しつぶした巨大な鉄の塊。
ひしゃげたその体に 命の息はなかった。
「冗談・・・だろ・・・」
つい数日前まで綺麗だった貴方の体
つい数日前まで聞こえていた。
つい数日前まで 動いていた貴方の心臓。
生きることを諦めたかのように 何の音も発しない体が
とても痛々しくて 思わず抱きしめた。
小さな小さな その体を。
家に戻って 冷たい水を胃に流し込む
途端に吐き気がして トイレに駆け込んだ。
体が水さえもを拒絶して受け付けない状態
これよりも酷い体になってしまった貴方。
もうその体が再び息を吹き返すことなんて
無理に等しかった。
ベッドに横になってぼぉっと天井を見つめる。
「どこ見てるんだよ?」
って声が今にも聞こえてくるようで
酷くむなしかった。
自分の生きる音しか聞こえない部屋。
つい数日前まで、もう1つの生きる音が聞こえていたハズなのに。
今はもう
ふいに我に返った途端に、頬を涙が伝う。
キリトは泣くなといった。
悲しがるなと
そういい残した。
皮肉なもので、涙は止めようと思えば思うほど、その量を増して
あふれ出てくる。
頭から消そうと思えば思うほど
貴方の顔が頭をよぎる。
楽しかった思い出が 俺の息を蝕んで苦しかった。
夕方になって 部屋に差し込む光に気がついた。
その色は
赤と青が混ざって綺麗な紫になっていた。
窓を開けてバルコニーに出ると空は綺麗な紫色。
夕焼けの赤と、空の青が混ざって
貴方が歌ったパープルスカイが広がっていた。
「・・・ちいさ・・な体をそっと・・・抱き寄せて・・・」
不自然な微笑を返すのさ
ふいに浮かんだフレーズに声を合わせる。
バルコニーに吹き付ける風は、信じられないぐらい冷たくて
座り込んで、煙草に火をつけた。
煙草を持つ手がかじかんで、震えてくる。
これは寒さなのか、それとも別の何かに、この懐かしい雰囲気に震えているんだろうか。
「どれだけ・・・不安・・な・・・夜を・・乗り越え」
この時を君が待っていたのかがわかるから
空を再び見上げるとそこにはもうパープルスカイはなくて
濃紺の空が広がっていた。
見上げたその先に
何もなくても
見据えたその先に
貴方が居なくても
悲しまずに俺は生きていけるだろうか
「空を見て・・・みなよ・・・信じられない・・・色に染まってるだろ・・」
今、君と交わす次の約束もきっと守ってみせるよ
その瞬間に その場に流れていた空気が変わった。
懐かしい
あの空気に
「何泣きそうな顔してんだよ、バカ」
目の前に 知っている声の主は立っていた。
上下真っ黒の服に身をまとって
あきれた顔で
でも懐かしげに俺を見下ろしている 貴方がいた。
「・・・き・・りと・・・?」
「泣くなってあれだけ言ったのに」
「どうして・・・・」
「リーダー命令も聞けねぇのかよお前は」
「だって貴方は・・・・死・・・」
俺の前に膝をついて
頬に手をやり口付ける。
まるでそのあとの言葉をふさぐように
触れた唇はひどく温かで、生きている事を照明するようだった。
少なくとも 最後に口付けたアノ時よりは
よっぽど信じられるものだった。
死の味がたした、あのひしゃげた貴方を見たときよりかは
幾分か今の現実を信じられた。
わざわざ俺のとの約束を守りに来てくれたとでもいうんだろうか。
戻ってくる。
と言ったあの時の約束を
「俺は戻ってくるって・・・約束しただろ?」
「・・・・・・・わざわざそれを守りに・・?」
「そ。体はもうないけどな・・」
ふっと浮かべたその笑みはどこか悲しみに満ちていて
俺に泣くなと言った貴方の方が泣き出しそうだった。
目に涙を溜めて、それを気付かれないように 悟られないように笑みを浮かべる。
俺より、貴方の方が辛かっただろう。
突然にその体を奪われて、全てを失った貴方の方が
辛いに決まってる。
「・・・・・逢いにきてくれただけで・・・十分だよ」
触れるのかどうかわかりもしないその体に手を回して
引き寄せると、いつものように俺にその体重がかかってくる。
ふんわりと漂うこの匂いも前のまま
言われなければここに体がないなんて信じられないぐらいで
一瞬貴方が消えたなんて間違いだったんだと
錯覚を起こしてしまいそうだった。
いや
消えたと思ってたことが錯覚だったのかもしれないな
「ありがと」
バルコニーには今も冷たい風が吹き付けていて
知らない間に煙草の火も消えていた。
かじかんでいた手はもう震えることもなく
寒いと感じることもなかった。
傍に貴方がいてくれれば
寒さなんて感じない 寂しいなんて感じない
泣く事だって何もない
ただ傍に貴方さえいてくれれば
■一言■
御免なさい。イタ話で(汗)
昔PURPUL SKYで似たようなのを書いてて、それの改訂版ですね。
でも前のとは大分違う雰囲気になってしまいまひた…(涙)
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