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壊れてしまったこの場所−Tokyo−で
俺たちはまた
再生する。
■■■再生の朝■■■
第一話:壊れたTokyoで。
『ザザザ・・・ザザ・・・・異・・・常な・・・ザザ・・気象・・・状・・況の中・・・』
「・・・うるさい・・・」
ノイズ交じりのラジオに俺は目を覚ました。
外を吹き荒れる砂風。
今にも外れそうなドアの隙間から部屋の床にも砂が入りこんでいる。
「・・・今日も・・異常気象か・・。」
「・・・た・・けお・・?」
「・・・おはよ。キリト。」
何もない殺風景な部屋に無造作に置かれたキングサイズのベット。
そこに横たわる俺とキリトの身体。
俺たちは付き合って2年の仲。
この異常なTokyoで出会った俺たちは決して来ることのない朝を待ち続けて
幾度となく身体を重ねあった。
夜・・・と呼ばれるモノはないが、かつて「朝」のあったころに「夜」と呼ばれていた
時間に二人でこのベットに横たわって、お互いの体温を確かめ合った。
そして今・・・
ラジオから聞こえてくるノイズで目を覚ましたそこは真っ暗。
外も部屋の中も真っ暗闇。
唯一、ベットサイドの小さなランプだけが辺りの状況を把握する手がかりとなっている。
Tokyoに「闇」が訪れてからもう2年半。
2年半もの間、俺たちは一度も太陽を見ていない。
「朝」を見ていない。
今でも夢に見るアノ日。
忘れもしない、2年半前の2月24日。
Tokyoから太陽が消えた。
原因は異常気象による「何か」。それ以外は何も分からない。
太陽がなくなったTokyoには草も、花も自然と呼ばれるものはもうない。
人工的な食べ物と、大量の水。
異常なまでの大気中の気温は、身体の自由を奪うほど厳しく冷たい。
急な環境の変化と、異常なTokyoの状態に
死んでいく人も多かった。
俺の友達も・・・「朝」を見ないまま死んでしまった。
光のないこの世界に
頭がおかしくなる人はそこらじゅうにいた。
精神がヤられてしまって、今では病院は地獄のような状態らしい。
そんなすっかり変わり果ててしまったTokyoでおれたちはひっそりと暮らしていた。
「・・・おはよ・・・って・・・朝なんてこねぇじゃん・・・」
「・・・ははっ・・確かにね・・・・・」
真っ暗の外を見上げてキリトが言う。
その通りだ。
狂ってしまったこのTokyoに「朝」なんて来ない。
時間はあっても「朝」は来ない。
いくら待っても外は真っ暗闇で、この大地が光を浴びることはない。
「・・・なぁ・・タケオ・・?」
「ん・・・・?」
「・・・アイツら・・・どうしてる・・・かなぁ・・・」
キリトが窓にカーテンをかけてベットに寝直すのを確認して俺もキリトの上に
そっと覆い被さる。
首筋にキスを落とした時、キリトはそういった。
「・・・・アイツら・・?」
「・・・・・コータと・・・潤と・・・アイジ・・・。」
「・・・・そういえば・・どうしてるんだろうな・・・」
「っん・・・」
ぼんやりつぶやいたキリトの喉元をキツク吸い上げると、キリトは眉をひそめた。
「・・・アレ以来会ってないっけ・・・」
「っう・・タケ・・オっ・・・」
「・・・・・・生きてるかな・・・アイツら・・・」
2年半前。2月25日。
コータからの一本の電話。
電波状況の悪い携帯電話から聞こえるコータのか細い声。
「潤とアイジと・・三人でしばらく暮らすから・・・」
「・・・・そっちは大丈夫・・・なのか・・・?」
「うん・・・俺とアイジの家は地震で壊れたけど、潤の家はなんとか無事だったからそっちで暮らす・・・。」
太陽が消えたTokyoを次に襲ったのは「大地震」。
震度を測定できないほどの大地震で、Tokyoの人口半分以上が犠牲になった。
そんな中で奇跡的に生き残った俺たち。
「・・・そっか・・・」
「・・・・兄貴のこと・・・よろしく・・。」
「ん・・・俺んとこでキリトの面倒見るよ・・・」
「・・・・うん・・・また連絡するから・・・それじゃ。」
それ以来。
コータからも潤からも・・アイジからも連絡はない。
こっちから何度か電話をかけたが、この状況の中での電波は悪く、
運良く繋がってたころにはすでに3人とも携帯を捨てていたようで、誰も電話に出ることはなかった。
「あっ・・・ぅんっ・・」
「・・・っ・・・キリト・・・っぅ・・・」
「タケっ・・オっ・・・」
「探して・・・みる・・・?」
「っ・・・えっ・・・はぁっ・・・」
「コータと・・・潤と・・アイジを・・・」
「っんんっ!!・・・あっ・・もっ・・やめっ・・・」
「もう一回・・・賭けてみる・・?・・・朝の来ないこのTokyoに・・・」
誰もが捨ててしまったモノ。
誰もが諦めてしまったコト。
人間が見捨てたTokyoというこの大地。
自分も諦めてしまった朝が来るということ。
そんなこの世界にもう一度賭けてみたい。
馬鹿らしいコトかもしれない。
朝が来るということは、100%中たったの1%にも満たないコトかもしれない。
でも
ゼロじゃない。
そんな1%にも満たない確率に賭けてみたくなっただけ。
「・・・・・・・さっきの話・・・本気・・・・・?」
「ん?」
「だからぁ・・・さっきほら・・・言ってたじゃん・・・賭けるとかどうとか・・・」
「ああっ・・・うん・・・本気。」
「・・・・・はぁっ・・・」
「何?ため息ついて・・・」
「・・・・・・・別にっ。・・・で・・アイツらも探すんだろ?」
「もちろん。」
ドコにいるのか分からない3人。
もしかしたらもういないかもしれない。
Tokyoを離れて、もっと「普通」の場所で暮らしているかもしれない。
でも、俺たちだからこそ、どうせ賭けるなら
「仲間」と呼び合えたこの5人で、白々しい賭けをしたい。
勝率が1%にも満たないこの賭けは、賭けと呼ばれるモノではないのかもしれないけど
勝率がゼロじゃない限り、俺たちはTokyoに「朝」を待つ。
そう。
この朽ち果てた大地。
「Tokyo」で。
■一言■
長編パラレルの一話目。舞台は一応Tokyo。
これから大分ややこしい話になっていきます。パラレル大好きなんですが…
書くの難しい(涙)
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