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俺にどうしろって?
あと少ししか残されていない時間
言うことを聞かない体
及ばない力
そんな俺にお前は言った
「俺達より先に死んだら許さないからね」
あと数週間しかないって言ってるのに
本当に頭の中読んでるのかよって
聞いてやりたいね。
再生の朝
第十一話:「ゼロをゼロに」
「何笑ってんの?俺ホンキで言ってんだけど?」
俺の頭の中を読んで、数週間しか生きられないことを知ったハズの潤。
なのにお前は言った
「俺達より先に死んだら許さないからね」
本当に頭の中読んでるのかよ。
「お前さー・・俺あと数週間しか生きられないんだよ?」
「わかってるよ」
「なのにお前らより長く生きられるわけないじゃない?」
「そうだね」
「そうだねって」
俺の胸倉を掴んだまま潤は普通に返事を返してくる。
「あと数週間しか生きられないっていうのは、誰の弁なの?」
「弁って・・・一応医者」
「ふぅん」
「何?」
「タケオくんって、人の言うこと信用するような人だったけ?」
失礼なヤツだな、コイツは・・。
「俺の知ってるタケオくんは、人の言うことは信用しない、疑り深い人だったんだけど」
「それがどうしたの」
「今更医者の言うこと信じるなんて、タケオくんらしくないって言ってんの」
「はぁ?」
イマイチ潤の言うことが分からない。
そりゃ確かに俺は、ZEROに居た頃から人の言うことを安々と信用する人間ではなかった。
周りは全員敵だと思っていたし・・・
まぁそれを信用するようになったのは、キリトに出会ってからなんだけど。
たとえ、医者の言うことを信用しなかったとしても
自分の置かれている状況を見れば、あと何ヶ月、何年も生きられるような体じゃないことぐらい
容易に理解できる。
自分でもあと数週間じゃないかと思ってるし。
「自分でも理解出来てるみたいだけど」
「そりゃ俺の体だもん、寿命ぐらい分かるよ」
「じゃあ聞くけど、タケオくんが死んだらキリトはどうなるの?」
また。
またこういうとこ突いてくるんだよ、コイツは。
俺自身もまだよく考え切れてないことを問い詰めてくる。
どうしようもないなコイツ・・・。
「悪かったね、どうしようもないヤツで」
「読むなよ・・・」
「読みでもしなきゃ本当の答え教えてくれないでしょ?タケオくんは」
「少しは信用しろよ」
「イヤ」
「俺はさ、死んでもキリトのこと守ってやるつもりだよ」
どうせ上手いこと言って誤魔化そうとしても、コイツにはバレるだろうと
腹をくくって話し始めた。
「体もないのに?」
「ああ」
「守ってやれる自信あるの?」
「・・・ああ」
「100%守れる自信があるの?」
「・・・・・」
「キリトの傍にいてやれる自信、ホントにあるの?」
「何が言いたいんだよお前」
いい加減潤の質問に苛立ちを覚える。
「守れるかって聞いてるの」
「・・・・体がない分、100%守ってやれる自信は・・・・ないよ」
俺にこんなことを言わせて何をしたいんだ。
俺にも潤みたいな人の思考を読む力があったら、たった今ここで
お前の考えてること覗いてやりたい。
「じゃあどうするの?」
「・・・知るかよ・・」
俺にもわからない。
正直、死んだ後どうなるかなんて、予想も出来ないことだから。
守ってやりたいと思う気持ちはあっても、俺は過去に悪事を働きすぎた。
閻魔大王なんてヤツが、本当にいるとしたら
俺は間違いなく重罪人になるだろう。
自分でもどうしてやればいいのかわからないもどかしさに
イライラしてるっていうのに
お前は俺に何をさせたいんだよ。
「教えてあげようか?タケオくんが一生キリトを守れる簡単な方法」
「・・・え?」
一生キリトを守れる
簡単な方法。
そんな方法があるのなら、是非聞いてみたい。
「簡単なことだよ、タケオくんが死ななきゃいいんだから」
お前本当バカだろ?
「お前・・・本当バカだな」
「失礼だよタケオくん」
突拍子も無い潤の言葉に思わずまた笑いがこみ上げる。
潤は「バカにしないでよ」って顔で、俺の胸倉から手を離した。
「死ななきゃいいって・・・俺だって死にたくないよ?でもさ、体がもたないんだって・・・お前も見てたんだろ?血、吐いてるの」
死ななくていいのなら
誰が喜んで死ぬもんか。大事な人がいるというのに。
でも、残された道が「死」だというのなら
それを選ばずにいることなんて不可能だ。
「見たよ」
「だったら・・・俺の体が限界なのぐらい分かるだろ?」
「分かるよ」
「その体でどうやって生きろって?」
「気合」
「無茶いうなよお前・・・」
「冗談だよ。はい、コレ」
「・・?何コレ」
冗談交じりにそういった潤がポケットから差し出したのは
小さな半透明の瓶だった。
瓶の栓を抜くと、中には青と白のカプセルが数個入っていた。
「薬?」
「そう。コレを飲み続ければ、死ぬことはないよ」
「本当・・・なのか?」
「うん」
「でもどこでこんな薬・・」
「ヒミツ。ただね、タケオくん。この薬はかなりキツイ成分で調合してあるから、副作用が出るんだよ」
「副作用?」
「そう。この薬は病気の進行を止める成分が含まれている。その病気をせき止める薬の成分が
副作用を引き起こす。まぁ体がしびれたりとか、めまいがしたりとか、その程度だけど」
痺れ?眩暈?
それで死ななくて済むのなら
いくらでも飲んでやる
そう思った。
「ただし」
「薬はそこにある5粒と、俺が持ってる10粒。15粒しかない。死なない為には一生飲み続けないといけない」
「どう・・するんだ?」
「作る。しかないよね。作り方は俺がメモってるから、材料さえ揃えばなんてことないと思うんだ」
「そう・・・なのか・・・これで死ななくて済むんだな?」
「そういうこと」
一瞬でとても小さいけれど、進む道に光がさしたように思えた。
これを飲み続けることで、キリトを守ってやれる
ずっと傍にいてやれる。
死ななくて済むんだ。
「協力するから、生きようよタケオくん。まだまだやり残したことあるんでしょ?」
その言葉に耳を疑った。
潤は俺がやり残している事が、あることを知っていたのだ。
「・・・どうしてそれを」
「・・・御免ね。そこまで読むつもりじゃなかったんだけど・・頭の中に流れ込んできて・・・気になるんでしょ?レイって子のこと」
「・・・・・・・・・」
俺が気持ちの中の深く深くに隠しておいたことを
潤はすっかり読み取っていた。
まさか、ここまで力が凄いだなんて。
確かに、潤の言う通り。
俺はレイのことが心配だった。
『零プロジェクト』を完成させるには、レイが絶対必要不可欠となる。
しかし、『零プロジェクト』はまだまだ開発途中段階で
俺が手を加えない限りあのプロジェクトを進行させることは出来ない。
でも
たった一つだけ
今からすぐにでも『零プロジェクト』を起動させることが出来る方法があった。
それにはレイが必要となり、レイ自身をも壊してしまう可能性のある
とても危険な方法だった。
いくら人工頭脳を駆使し、俺が作った人形だとしても
レイは人間と同じ感情を持ち、痛みを感じ、歳もとる。
そんなレイを危険な目にあわせるのにはどうも抵抗がある。
いつか俺の帰りを待てずにKが強硬手段に出て
レイを壊してしまう日がくるんじゃないかと
俺は不安だったんだ。
「レイはアンドロイドだ。でも・・・人間と同じ感情をもっている。俺の作ったいわば子供のようなものなんだ。壊させるわけにはいかない」
「・・・どうせ『零プロジェクト』の進行をやめさせるのなら・・・レイを手元においておけばいいんじゃないの?」
『零プロジェクト』は全てをゼロに戻すプロジェクトであり
ゼロに戻すということは、このTokyoを・・・いや地球をまっさらな地に戻すということ。
そんなことすれば、地球に生存している人間や動物たちは一気にその命を落とすことになってしまう。
そんな馬鹿げたプロジェクトに協力することに、以前は何の抵抗もなかった。
地球がどうなろうと、人間が死のうが自分がどうなろうとどうでもよかったから。
でも今はそんなわけにもいかない。
守りたい人が居る。ずっとこのまま過ごしたい時間がある。
それを簡単にゼロにだなんて戻させるわけにはいかない。
「・・・・・レイをつれてこよう」
レイを壊させやしない。
地球をゼロに戻させるわけにもいかない。
そのためには・・・
「『零プロジェクト』を破壊する」
『零プロジェクト』を破壊して
レイを連れ戻して
またここに戻ってきた時に
俺達が同じ時間を過ごせるように
キリトや皆とテーブルを囲めるように
ゼロをゼロに戻す。
■一言■
再生の朝11話!
これどんだけ続くねんって感じですね(苦笑)
まだまだ続きます(苦笑)
さぁいよいよ動きますよー!!!!!
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