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ただいま
と言ってドアを開けたら
そこにはキリトがいて
アイジがいて
寝て起きたら、またいつもどおりの時間が始まる。
そう信じていた。
■■■再生の朝■■■
第八話:「暗闇に咲く1輪の華」
潤とコータを連れて、キリトとアイジの元へと戻った。
キリトは俺が勝手に一人でZERO本部に向かったことに不安がっていたようで、俺が戻ると真っ先に飛びついてきた。
アイジは潤とコータをベッドに寝かせて一生懸命看病してくれている。
何事にも一生懸命な2人を見てて俺ももちろん、一生懸命
4人を守っていこうと思う。
一生懸命に俺を想ってくれて心配してくれる人がいる。
俺には帰る場所がある。
だけど
そんな俺の考えとは裏腹に
体の方は上手くついてきてくれそうにもなかった。
「げほっ・・・!!はぁっ・・・っ・・・・げほっげほっ・・・!」
白い洗面台が真っ赤に染まる。
不定期に訪れる胸の苦しみと激しい咳き込み。
それに伴って口に広がる鉄の味。
夜中に突然激しい胸の痛みに襲われて目が覚め、
こうやって洗面台に立つのはもう4回目。
荒々しく水道の蛇口から流れる水に負けず劣らずの量の血。
嘔吐を繰り返し出るものは全て真っ赤に染められていた。
水道では間に合わず風呂場へ駆け込む。
シャワーのコックをひねって冷たい水を頭から浴びる。
「っっ・・・!!はぁっ・・・げほ・・・」
しばらくして、嘔吐感と胸の痛みも治まってきた頃には
風呂場の床は真っ赤で、自分でもこれだけの血を吐いて
死なないのが不思議なぐらいだ。
それでも指先が冷たくて頭がぼぉっとするところをみると
やっぱり血液が足りてないんだと実感する。
「はぁっ・・・はっ・・・・」
ザァァァァァァァァァァァ―――――
水を止めないと
血を流さないと
皆が心配する
俺は大丈夫だって
そう
言わないと
「タケオっ!!!」
「キ・・・リト・・・?」
朦朧とした意識の中で見たのはキリトの蒼白の表情だった。
なんでそんな泣きそうな顔してんだよ
冷たいシャワーに体温を奪われて
かじかんでロクに動かない手でキリトを抱きしめる。
「おまっ・・・お前っ!なんでこんなっ!!」
「大丈夫・・・だよ」
「どこが大丈夫なんだよ!・・・こんなっこんな沢山の血・・・・!」
「大丈夫・・・・・大・・丈夫・・・・・」
そこからは何も覚えていない。
何度か声を呼ばれたような気がしたけど
目を開けることは出来なかった。
一生懸命な皆を守りたくて
もっと一緒にいたいと思うのに
どうして体は動かないんだろう。
キリトを抱きしめてやりたいと
そう想うばかりで
ちっとも言うことを聞いてはくれない。
愛してるといいたい。
傍にいるからと抱きしめたい。
もう少し時間が欲しい。
「・・・・・・・・っ・・・」
「タケオ・・・?タケオっ!」
ふと目が覚めたらやわらかいベッドの上だった。
目の前には、やっぱり今にも泣き出しそうなキリトの顔があって
しっかり握られた手は暖かかった。
「大丈夫か!?・・・俺っ・・・どうしていいか・・・わからなくて・・・」
「・・・・ごめ・・・心配・・かけて・・」
まだ微妙に腕が重い。
一体どれぐらい寝てたんだ、俺。
「皆は・・・?」
「アイツらなら隣の部屋で寝てる・・。皆凄い心配してたんだぞ・・?寝たまま全然目ぇ覚まさないし・・」
「そっか・・・」
そのときの俺は、丸二日眠ったままで一度も目を覚まさなかったらしい。
腰も痛いし背中も痛いのはそのせいだったんだな。
「お前・・・どうしてあんなに血を・・?どこか・・体悪いんじゃ・・・・」
「・・・大丈夫だよ、心配しなくても。自分の体のことは俺が一番わかってるから」
「タケオは・・・俺に何も言ってくれないから不安だ・・・。一人で何でも抱え込んで・・・
ちっとも相談してくれない・・・ZEROの本部にだって一人で・・・・」
俺の手をぎゅっと握りうつむいて、一言一言重そうに口を開く。
その目には、涙が浮かんでいてぎゅっと目を閉じたらこぼれおちそうなぐらいだった。
心配をかけたくないと、キリトに何も言わなかった俺の思いが
実はこんなにもキリトを不安にさせていたなんて。
何も言わないことで余計に不安にさせてしまってたんだな・・・。
そろそろ隠し通すのも限界かな・・。
「・・・・キリト・・?」
「ん・・?」
「キリトさえ、苦痛じゃなかったら・・・今から俺が言うこと皆には黙ってて欲しい・・・」
「え?」
「 俺はあと数週間しか生きられないんだ 」
その瞬間に
キリトの表情から色がなくなったのを
今でも鮮明に覚えている。
俺にとっては、キリトが全ての色だった。
俺の無彩色の感情に色をつけてくれるのがキリトであって
全ては彼がいたから成り立っていた。
どうしてもっと早く
このことに気がつかなかったんだろう。
幸せにしてやりたい。
キリトを幸せにしてやりたいと
そう願っていただけなのに。
「それでも俺は・・・・お前と一緒に居たい・・・・・」
そのキリトの言葉が今の俺の生命を繋いでいる。
■一言■
再生の朝8作目です。
タケオさんの病気のお話になりますが…
何か段々くらい話になってきて怖いんですが(苦笑)
「」の処は反転とかすると見えるかもです(笑)
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