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ズルイだなんて言わせない。
卑怯だなんて言わせない。
例えなんと罵られても
それが『結果』となるのなら
俺たちは何にでもなるさ。
■■■再生の朝■■■
第六話:「自由」
Kからの電話で俺は早朝6時に本部へ赴いた。
本部の馬鹿デカイ玄関先にはこの前と同じJが待っていた。
何も言わずに俺を向かい入れ、Kの待つ地下室へと案内された。
「ZERO」に居たときにも何度かこの地下室へ足を運んだことはあったが
いつ来ても不気味さは変わらない。
重苦しくカビ臭い空気の廊下を歩き、打ちっ放しのコンクリート壁をつたって
奥へ奥へと入る。一番奥にある鉄の重たい扉を開けるとそこにはKとQ.リダが待っていた。
「ようこそ。」
そうリダに迎えられ黒いソファーに座らされる。
部屋の明かりは薄暗く、地上に立つ高級本部とは全くの別世界を思わせるこの地下室。
一体何を目的にこの部屋を選んだんだか。
「一体話ってのは何だ?」
「まぁそう焦るな。じっくり話を進めようじゃないか。」
「実は昨日。お前の家に何人かの使役を送ったんだが…。突然連絡が取れなくなった。」
「あいつらなら俺が始末したよ。」
「やはりそうか。相変わらずの腕っ節だな。あいつらはあれでもなかなかの腕を持っていたんだが」
「…俺を殺したいなら『JOKER』でも連れてきたらどうだ?」
俺にとってはどうでもいい話。
そんな話がしばらく続いた。
ちなみに俺の言う『JOKER』とは、「ZERO」の中でも拳銃、剣、武道の3つの腕が
ずば抜けていい者ばかりを集めて組織されている部隊。
俺自身、『JOKER』の奴らにあったのは2回程で滅多なことがない限り奴らは表に
姿を見せないことになっている。
「まぁそんな話はここまでにして…本題に入るとしよう。率直に聞くが…タケオ?ここに戻ってくる気はないんだな?」
くだらない。
「何度言わせるんだよ。そんな気はサラサラない。」
「…最高の権利を与えると言われてもか?」
「権利なんてものは今の時代無意味だろ。」
「お前の望む金額を与えるといわれても?」
「金ならどうにでもなるさ。」
くだらないくだらないくだらない。
権力も金も今の俺には無意味だ。そんなものが必要なら俺は「ZERO」を出たりしなかった。
「…お前の望むモノは何だ?」
俺の望むモノ?
「自由。」
「自由…だと?何を言い出すかと思えば…頭にヤキが回ったか?今のお前は自由そのものじゃないか。ここに居た時だってそうだった。
望むモノはなんでも与えられ、部下を自由に使い、なんだって出来た!自由だったじゃないか!」
「そんなもの…本当の自由じゃねぇよ」
コイツらには一生かかっても「自由」が何なのかわからないだろう。
こんな腐ったところにいつまでも居たら 「自由」の意味さえ腐ってしまう。
俺がそうだった。
Kの呼ぶ「自由」は本当の自由なんかじゃない。
「自由」という名の皮を被ったただの「欲望」。
そんなものを「自由」だなんて呼ばせやしない。
「…自由を望むために…たったそれだけのためにAの地位を捨てたわけか…?」
「ああ。」
「たった…それだけのためにか…」
「ああ。地位なんて自由を得るのに邪魔になるだけだ。
自分の地位と権力で目がくらんで頭まで腐って…本当の自由の意味がわからなくなる。そんなもの…必要ない」
「……」
そんな飽きれた顔するなよ。
お前らしくない。
俺の言葉を聞いて、一切俺の気持ちが変わらないことを再確認したK。
何を思ったか
ソファーから腰を上げると床に手をついた。
よせよ。
「…ZEROには…お前の力が必要だ。頼む…戻ってきてくれ…」
「K!!」
俺の前に膝をつき、頭をついて頼み込むK。
その姿にリダさえもが取り乱す。
今まで誰にも頭を下げようとしなかったKが、俺の目の前で土下座している。
自分のプライドを捨ててまで プロジェクトに俺を必要とするのか?
「プロジェクトは…お前が居なくなったあとからぱったりと進歩しなくなってしまった…
お前の力なしではプロジェクトは進まない…頼む…お前の力が必要なんだ」
「どうしてそこまでして…。プロジェクトには俺がいなくなっても進行するように
していたハズだろ?俺がここを出た2年近くも進行していなかったっていうのか…?」
「お前も知ってるだろう…人間と同じようにプロジェクト自身も『頭脳』を持っている…
そこらの人間にあのプロジェクトを扱えるわけがないだろう…」
俺が進行させていたプロジェクトとは
『零プロジェクト』というものだ。
これはKが兼ねてから企画していたもので
その全ては俺にでさえ明らかにはされていなかったが
『Tokyoをゼロに戻す』
それを目的としたプロジェクトだった。
俺が中心となりプロジェクト進行を勤めてきたが俺はZEROを飛び出した。
その後もずっと進行されていたと思っていたが…
まさか俺が抜けたことで全くプロジェクト進行が機能していなかったなんて…
夢にも思わなかった。
その『零プロジェクト』の重要な鍵を握るのが人工頭脳を持った『レイ』と呼ばれる物。
その『レイ』を開発したのは俺で、ずっと完成に向けて作業を続けていた。
『レイ』自身はZEROを出る数ヶ月前に完成していたのだが
『レイ』単体ではプロジェクトを進めることはできない。
『レイ』とその他のプログラムを混合して初めて完成する。
そのプログラムを製作している途中で俺が抜けたためにプロジェクトは進行しないまま
放置されていたのだ。
しかし、プログラムは放置できても、人工頭脳を持つ『レイ』は放置することができない。
プログラムが進行しない2年近くもの間『レイ』はどうしていたかと言うと…
「お父様。頭をお挙げになってください」
地下室の重い扉が開き、そこから一人の少女が入ってきた。
長い黒髪に黒のワンピースを身にまとい、光を持たない漆黒の瞳の容姿をした彼女こそが…
プロジェクトの鍵を握る『レイ』だった。
「レイ…」
レイは土下座するKの手を取りソファーの腰をかけさせる。
「土下座するなんてお父様らしくありませんわ」
「…レイ。素晴らしく成長したもんだな」
「マスター。」
俺が声をかけるとレイはそういって俺の前に両膝をついく。
レイの生みの親とも言える俺をレイはマスターと呼び慕っていた。
俺がここを出たときにはまだレイは12歳ぐらいの幼い少女だった。
しかし、レイの体は人工頭脳と共に普通の人間と同じように体も成長する。
言わばアンドロイドだ。
アンドロイドと言ってもその辺にあるネジと鉄だけのガラクダじゃなく
肌も髪の毛も全てほかの人間と何一つ変わらない、より人間に近いアンドロイド。
そのため人間の2倍の速度ではあるが体も成長するようになっている。
「マスター…ZEROに戻ってきてはいただけませんか?」
冷たい手で俺の手を取り、漆黒の瞳で俺を見る。
レイの目に光は全くない。
だが、レイの瞳に何かを感じたのは嘘じゃない。
俺に何かを求めるようなその瞳は…
嘘じゃなかった。
「…戻ることはできない。ここには俺の探す自由はなかった…ここに居ても俺には苦にしかならないんだ」
「お願いです…このプロジェクトさえ完成すれば全て上手くいくんです…。そのためには何度も言うようにマスターの力が必要なんです」
必死に何かを訴えるようなレイの姿は
ただプロジェクト完成のために俺を求めているようには見えなかった。
もっと別の理由があるようにも見えた。
「タケオ…レイとKがここまで頼んでいるというのに…まだ強情を張るつもりですか…?
どうして…あんな子供たちと居ることがそんなに楽しいんですか!?」
「リダ…」
「お願いですマスター…。」
「ごめん…いくら頼まれても…頭を下げられてもここに戻ることはできない。」
レイやリダやKにいくら頭を下げられてもここだけは譲れない。
ここを出たことは俺の硬い意思だから。
ここには自由はなかったから。
何の先もないこんなとこにはいつまでも留まってはいられないんだ。
俺には時間がないんだから。
■一言■
第六話目です。
いやーややこしい話になって参りました!(そんな自信満々に…)
レイとキリトが一応今後重要な鍵を握る事になるんですが…
ZEROの内部が明らかになるのももうすぐです。
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