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手が離れたら、その時は―――――――
睡眠薬。
何時ものように仕事を終えて、キリトを家に招いた。
風呂に入って、コーヒーと煙草で一服して
各々TV見たり、本読んだり、それぞれの時間を過ごして。
時計にチラリ、と目をやったらすでに日付は変わってて
眠たいとそこで初めて実感する。
どっちかが寝室に入ったら、それはもう俺の家の消灯時間になるわけで。
今日はキリトが先に寝室へと入っていった。
特に俺に何か云うわけでもなく。
俺は玄関の鍵を確認して
ソファーの上で眠ってしまった、丸くなった愛猫をゲージへと入れてやる。
リビングの電気を消して、寝室に入ると
キリトがベットに上半身を起こした状態で待っている。
これも何時もの事。
ベットに入って、身体を横たえると
キリトがチマチマとこちらによってくる。
俺の肩に頬を摺り寄せるように。
勿論これも何時もの事だ。
「じゃあオヤスミ」
「おう、オヤスミ」
俺の肩の位置にキリトの黒髪がモソモソと揺れる。
あぁ寝る位置を確かめてるんだなぁなんて思う。
「いい位置見つかった?」
「おう」
「そ、なら良かった」
自分の一番居心地のいい位置を探し当て動かなくなる。
勿論それは俺も同じで、半ば重くなってきた瞼が閉じかけた時
腹部に動く何かを感じた。
「なになに?」
「や、何でもない」
「お腹んトコでこそこそしたらこそばいよ」
「あぁすまん」
腹部で動いていた何かはキリトの手で、
忠告して御免と謝られた後も尚動きは止まない。
それどころか、動く手は俺の腹部から背中へと回った。
「何よ?」
「手どこ」
「手?」
「手探してるのに無い」
背中に回された後も動きは止む事無くパタパタと何かを探している。
何かと聞いたら、それは俺の手だと云う。
俺の手は、片方は枕の下。もう片方は枕の上にあって
探したってそんなところにあるわけもない。
上を見上げればすぐにでも見つかるのに
キリトは布団の中ばかり探していた。
「手?手はココ」
「え、あ、上か」
「何?どしたの?」
「手、繋ごうかと思って」
「ふえー。何でまた」
「何となく」
「珍しいねぇ。ハイじゃあ手繋ごう」
何でまた手を探しているのかと聞けば
手を繋ぎたいからだそうで。
珍しいこともあるもんだ。
明日は雨かなぁなんて思いつつ、手を差し出すとキリトは両手でその手を取った。
「手冷た」
「お前がぬく過ぎるんだよ」
「低血圧?」
「知らん」
「まぁ何でもいいか」
「お前から体温を奪おうかと」
「うひゃ」
「何だよそれ」
「や、面白いなぁと思って」
「面白くない(怒)」
「何でキレるんすか(笑)」
そんなたわいも無い話をしている間に
冷たかったキリトの手が温もってくる。
っていうか手繋いでて寝にくくないんだろうか。
「手繋いでて寝にくくないの?」
「ちょっと寝にくい」
「なら離す?」
「や、我慢する」
「睡眠妨害されてまで手繋がなくても(笑)」
「いいんだよッ!」
「ぅはいッ」
「黙ってこうしてろ」
「ハーイ」
寝にくいといいつつも、
キリトがそれで云いというならいいかと、
俺も納得して再び目を閉じようとする。
にぎにぎにぎにぎにぎにぎにぎ
寝ようと思ったら、繋いでいる手がにぎにぎと握られる。
これじゃあ気になって寝れやしない。
「なぁに?」
「何でもない」
「にぎにぎしたら寝れないよ」
「いいから寝ろッ」
「無理だって」
「じゃあしない」
「うんそうして下さい」
握ったり離されたりして、安眠出来るワケがない。
俺がそれに突っ込むと、いとも簡単に妥協して辞めてしまった。
ちょっと可哀想かな、とも思ったがとりあえず眠たいのもあって
俺は再び目を閉じる。
あ、今度は寝れそう。
つねつねつねつねつねつねつね。
「ちょっとッ。今度は何!?」
「つねってるだけ」
「だけじゃないって(笑)」
やっとこさ寝れそうな雰囲気だったのに
今度は手の平を軽くつねったり引っ張ったりされて。
これじゃあ何時まで経っても寝れやしないよ。
「あーた一体何がしたいの?」
「寝るな」
「は?」
「寝るのを妨害してんの」
「寝ろって云ったのあーたじゃん!」
「俺より先に寝るな」
あーなるほど。
握ったりつねったり、ひっぱったりして俺の睡眠を妨害する理由はそれね。
俺より先に寝るな。だって。
だったら最初っからそう云ってよ!
「もー。なら素直にそう云ってよ」
「お前の為に素直になんてなってやらない」
「や、これはあーたの為でもあるでしょうに」
「どうでもいいから先に寝るな」
「はぁ。判った。じゃああーたが寝るまで起きてるから、寝て下さい」
何ちゅー自分勝手な人なんだと思う反面、
何ちゅー可愛い人なんだろうとも思ってしまう自分に笑える。
ふと気付けば繋いでいた手は離されていて
もういいのかな?と、手を布団から引き出そうと思ったら…
「あー!!!!!!!」
「何!?何なに!??!」
「手離すな馬鹿ッ!!」
なんて怒られてしまった。
「あーたが離したんじゃん!」
「背中かいてたんだよッ!戻せッ!」
「背中かいてたって…(笑)さようですか」
どうやら離したのは一時的にだそうで。
物凄い剣幕で怒られて、仕方なくまた布団の中に手を戻す。
するとすぐ様またぬくもりかけていた手で包まれる。
その手をにぎにぎしてやると、「真似すんな」と布団の中から小さな声が聞こえた。
それがヤケにくすぐったくて。
「なぁ」
「はいはい?」
「手離すなよ」
「寝てる間も??」
「そう」
「でも寝てる間は無意識だから…離したくなくても離れちゃうかもだよ?」
「駄目だ」
「や、無理だから(笑)」
「手離したらチョップだからな」
「嘘んッ!なんでよ!」
「黙れ煩い云う事聞け」
「酷いよあーた…(苦笑)」
「俺を愛してるなら離れないハズだ」
「またそんな無茶云う…」
「あー朝が楽しみだなー」
「性格捻くれてるんだから」
「お前の愛の重さを量ってやろうと思って」
「余計なお世話だってば(笑)」
寝ている間なんて、ほとんど無意識で何時手が離れたって判りはしない。
なのに絶対に離すなだなんて。
本当毎回毎回どうしてこんな無茶云うんだか。
大体寝てる間まで手繋がなくてもねぇ?
「どして手繋がなきゃいけないの?」
「なんでも」
「何で?」
「なんでも!!」
「怒っても駄目。何でか云わなきゃ睡眠妨害するから」
「お前ムカツク…」
「あーたも俺に同じ事してんだよ!(笑)」
「…」
「や、黙られても(笑)」
「…い…やく」
「イヤク?」
「睡眠薬ッ!!!!」
「ほぇ?睡眠薬ぅ?」
手を繋がなきゃいけない理由を無理矢理聞けば
何でも「睡眠薬」だそうな。
如何云う事よそれ。
「…手…繋いでたら安心するから」
「ぶはッ」
「笑うな馬鹿(怒)」
「あはははははははッ」
「だから云いたく無かったんだよ」
「いやいやッ。御免御免。まさかそんな理由だとは思わないからさ」
「いいだろ別に」
「駄目だなんて云ってないじゃん」
「馬鹿潤…」
「馬鹿で結構。じゃあキリトさんが不安にならないように手繋いでてあげましょうかねー」
「ムカツク…」
「いいからもう寝な。明日早いんだから」
「ブツブツブツ…」
「ブツブツ云わないの(笑)」
それから後も暫くは布団の中で、お前があーだこーだのと愚痴を垂れていたキリトだけど
何時の間にかそれは規則正しい寝息に変わっていて。
チラリと布団をはぐって見たら、眉間に皺を寄せているものの
しっかり手だけは握って眠っていた。
その姿にまた噴出しそうになったのを抑えて
俺も重たくなっていた瞼を閉じたのだった。
結局朝まで手は離れる事無く
チョップも食らわせられずに済んだ。
だけど、二人とも変な体制で手を繋いで眠っていた所為で
腕の変なところが筋肉痛になって、四苦八苦したのは云うまでもない?
。○ 一言 ○。
樹閹様にリクエスト頂きました!
潤キリで甘々ギャグということで書かせて頂きました。
リクエストに添えているのか不安ではありますが…(汗)
樹閹様に限りお持ち帰り可能です^^
リクエスト有難う御座いました!
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