無料-
出会い-
花-
キャッシング
暇潰しにもならないよ。
Platonic love
<SIDE キリト>
俺が聞いたのは。
二人のこんな会話だった。
『こーら、タケオ君』
『いいじゃん少しだけ』
『駄目だってば』
『いつもキリトとヤってんでしょ?たまにはしてやるよ』
何だよコレ。
数分前。
煙草を買いに出て、戻った控え室からタケオと潤の姿が消えていた。
何処に行ったのかと周りに聞いたら、俺の戻る少し前に二人で出て行ったとのこと。
アイツらも煙草調達にでも行ったのかと、喫煙所で煙草をふかしていると
喫煙所に接したドアの向こうから人の話し声が聞こえてきた。
そこは、物置。
別に耳を澄まして訳ではないけど、自然と聞こえてくる声は耳に届く。
暫く聞いているうちにそれが、タケオと潤だと分かって
俺はドアに近付いた。
ドアを開けようと、ノブを引きかけた時
中の会話に俺は躊躇した。
『俺、潤が好きなんだけどなー』
『だからそれは何度も聞いたって』
タケオが潤に告白している?
『相手してくんないの?』
『俺にはキリトが居るし』
俺と潤はメンバー公認の仲。
身体の関係までいっちゃってる仲だった。
告白されて、潤が俺と付き合っていると云ってくれた事に
少なからず俺は胸を撫で下ろす。
『知ってるよ。承知で云ってる』
『どういう事?』
『キリトに内緒で付き合おうって云ってるの』
『わお』
俺に内緒で!?
んな事してみろ、ぶっ殺すぞ。
なんて思っている反面、ドアノブから離れた俺の手には
じんわり汗が滲んでいた。
『どう?俺バレないようにするし。付き合おうよ』
『無理無理。だって俺嘘つけないしさ』
『嘘付けとは云ってないよ。隠すだけ』
『変わらねぇッ(笑)』
タケオの奴・・・
いい度胸してやがる。
『こーら、タケオ君』
『いいじゃん少しだけ』
『駄目だってば』
『いつもキリトとヤってんでしょ?たまにはしてやるよ』
『こらこらッ。何勝手に触ってんの』
『俺上手いよ?キリトより絶対』
『そういう問題じゃないって(笑)』
潤もよく平然と笑っていられるもんだ。
触るとか上手いとか何なんだよ一体。
俺はいよいよ我慢出来なくなって、再度ノブに手を掛ける。
『ね?付き合おう?』
『どうしようかなー』
『お、考えてくれるの?』
『タケオ君次第』
『わーお』
『なんてね、駄目。キリトに怒られる』
今の会話だけでもちょっとむかっ腹が立った。
俺は二人の会話を裂くように、イキオイ良くドアを開けた。
その瞬間の二人の顔と云ったら。
「うおッ。キリトっ」
真っ先にタケオが反応して、潤からさり気無く距離を置く。
潤は、表情は変えなかったものの「聞かれたかな」って思っているんだろう。
「どこ行ったのかと思ったら。何やってんだよ二人で」
「別に何もないよ。話してただけ」
「こんな物置で?」
タケオが何も無いというものの、物置で二人っきりで話なんて可笑しすぎるだろ。
「聞いてたんでしょ?話」
「聞いてたよ」
「盗み聞きなんて趣味悪いよ?」
「うっさい。タケオ、どういうつもりだよ」
「や、別に・・・」
「潤がそんなに好きなのかよ」
「あー・・・うんまぁ」
うんまぁって。
潤は俺と付き合ってんだよ。
「潤は俺と付き合ってんだよ」
「知ってるよ」
「お前にはやれんッ」
「や、あーた誰(笑)」
潤がツッコミを入れながら、ニヤニヤ笑っている。
あのなぁ、重要な事なんだぞコレは。
「あーでも俺も潤が好きだしさ」
「それは知らんッ」
「多分キリトより俺のが潤を好きだと思うけど」
「ぁんだとコラ」
俺よりお前のが潤の事好きだと!?
何抜かしてんだコイツ。
俺のが好きだっつーの。
「ちょっとちょっと、喧嘩しないでよしょうもない事でー」
「「しょうもなくない!」」
「ハモられても(笑)」
コイツにはこの重要さが全然判ってない。
しょうもなくもない!
「潤ッ!お前は俺とタケオのどっち取るんだよッ!」
「そうだよ、潤に決めてもらおう」
「はぁ?突然俺にふらないでよ」
「いいから答えろッ!どっちが好きなんだよッ!」
「えー」
俺とタケオの問いかけに、潤は腕を組んで首を右に傾けたり、左に傾けたりしている。
うーんとか、えーっととか。
っていうか迷うとこかとそれッ!!
「お前なぁッ!お前は俺と付き合ってんだぞ!!」
「判ってるよ」
「なら答えはすぐ出るだろうが!」
「でもさ、タケオ君の気持ちも無視はできないでしょうに」
「馬鹿かお前ッ!?」
「馬鹿じゃないって」
「俺と付き合ってんのにタケオと迷うなんて可笑しいだろ!?」
「別に迷ってるワケじゃないよ」
「迷ってるだろ現に!!」
「違うって」
俺と付き合ってるのに、タケオと迷う必要なんてないだろうに。
一体なんなんだ。
答えなんてすぐに出るハズだろ?
イライラさせるなよ!
「早くしろッ!」
「だーからちょっと待ってよ」
「待てないッ!」
「もー。今すぐは答え出せないよ」
どういう意味だそれ!
やっぱり迷ってるんじゃねぇか!
「お前ムカツク・・・」
「ちょっと待ってって」
「・・・・もういい。今日はお前んち行かないからなッ!顔も見たくねぇッ!!」
「あッ!キリト!?」
いい加減ムカっ腹の立った俺は、潤が引きとめようとするのも聞かずに
思いっきりドアを閉めて部屋を飛び出した。
俺と付き合っているくせに、何で今更タケオと迷う必要があるんだよ。
意味わかんねぇ。
俺がこんなにもお前の事好きなのに。
***
<SIDE 潤>
「あーあ。怒らせたー」
「タケオ君の所為でしょうに」
「何で俺の所為?」
キリトは俺の制止も聞かずに部屋を飛び出して行った。
返答に迷っているフリをしている間に、顔色が変わるのは見て取れた。
相当腹が立っているんだろうって。
でも、そこですぐに答えを出しちゃあつまらない。
だから迷っているフリをした。
答えなんて、キリトを取るに決まってる。
「大体さー。本当に俺の事好きなの?タケオ君」
「うあ。本気だって。冗談だと思ったの?」
「うん」
「ひどっ。好きだよ本当に」
「そっか。でも無理」
「知ってるよ。断られるのは予想してた」
「じゃあ何で?」
「キリトに独占されるのが嫌だったから」
「何それ」
「ガキなだけだよ俺も。欲しい玩具取られるのが悔しいのと一緒」
「俺は玩具かい(笑)」
俺はタケオ君の話しに耳を傾けながらも
ポケットから葉巻を出して火をつける。
「ココ禁煙ですよー」
「いいじゃん。一本だけ」
「じゃあ俺も吸っちゃお」
「何だそりゃ。はー」
紫煙を吐き出すと、見上げた天井が煙で濁る。
さぁてこれからどうするかなー。
「本気で俺と付き合う気はない?」
「え?」
「キリトにはバレちゃったけど、別にキリトと別れろなんて云わないし」
「あー・・・」
「潤の2人目でいいから。付き合えない?」
2人目か・・・。
「うーん・・」
「頻繁に遊んでくれとも云わないしさ」
「タケオ君、俺とどうしたいの?」
「どうって云うか・・・俺はお前が傍に居てくれればいいだけ。好きなだけだから」
「そっか。うん」
「キリトに嫉妬はするだろうけど」
タケオ君の吐き出した煙で、またも部屋が濁りだす。
自分の葉巻の臭いと、タケオ君の煙草が焼ける臭い。
2種類の臭いが混じって、俺の鼻をつく。
「うんでもやっぱり駄目だ」
「そう云ってくれると思った」
「え?」
「俺と付き合うだなんて云ったら、怒鳴ってやろうと思って」
「どういう事?」
「試しただけ」
「試した?」
「本気でキリトの事が好きかどうか。本気なら俺の事なんて考えてる余裕ないハズだしね」
「何だよそれー。あーもう考えて損したー」
「ははッ。いい暇潰しにはなったろ?」
「冗談じゃないよタケオ君。キリト勘違いしたままじゃんッ」
「だーからそれを何とかするのが、お前の役目だろ?」
俺を試したというタケオ君の言葉。
ようするに、ただの暇潰しだったらしい。
真剣に考えてた俺が馬鹿みたいじゃないか。
しかも、その話を聞いちゃってたキリトはまんまと策にハマって
誤解したまま飛び出しちゃったし。
悪質にも程があるぞ、タケオ君。
「本当悪質」
「暇潰し暇潰し。ほら、早く行ってやらないと屋上からピューって事もありうるよ?」
「そういう事云うなっつーの!(笑)」
俺は葉巻を口にしたまま部屋のドアノブを握る。
早くキリトを見つけ出して、理由を説明しなきゃ。
そう思った時。
ふいに腕を掴まれて引き寄せられたと思ったら
葉巻が口から滑り落ちて、代わりにタケオ君の唇に塞がれた。
「ッ・・・」
頭をしっかり固定されている所為で、拒む事は出来なくて
何秒か後に唇が離された時には、酸欠で息苦しかった。
「はッ・・・・ちょっとタケオ君ッ・・・」
「早く行ってやれよ」
「判ってるよッ!」
「なぁ潤」
「もうッ!何ッ?!」
「暇潰しだからな。全部」
突然のキスに動揺する間も与えず、タケオ君が背中を押す。
俺は、今度こそキリトを探しに出ようとドアを引き開けた。
その時に、また引きとめられて
振り返った視界に入ったタケオ君は後姿で。
そうポツリと呟いただけだった。
「・・・・判ってるよ」
バタンッと閉めた扉の音がヤケに大きく聞こえる。
パタパタと走り出し、キョロキョロと辺りを見回すのはただのカモフラージュに過ぎない。
本当は動揺しているのを顔に出さないので精一杯だったから。
あんなキスしといて、全部暇潰しだなんて
本当に悪質にも程がある。
暇潰しだなんて嘘のクセに。
キスの余韻の残る唇を、きゅっと噛む。
タケオ君は暇潰しだと云ったけど
こんなのは暇潰しにもなりゃしない。
唇が触れた一瞬でも、熱いと感じたこの気持ちを
どうしてくれるんだあの人は。
俺は内心キリトに御免なさいと何度も謝りながら
必死にキリトを探し始めるのだった。
***
<SIDE キリト>
「コレで良かったんだっけ?」
「お前演技上手いのなー」
「報酬は?」
「ほい。煙草3箱」
「サンキュ」
「これで潤も当分は浮気しようだなんて思わないだろ」
「元々浮気しようなんて考えてないと思うけどなぁ。キリト一筋っぽいし」
「馬ー鹿。そんなの判ってんだよ。恋愛はなー一方通行じゃつまらないからな」
「どういう事?」
「この辺で釘刺しておくのがベストってもんなんだよ」
「何かよく判らないけど。まぁ勝手にやってよ。二人のバカップルごっこにはもう付き合わないからねー」
「判ってるよ。サンキュな、タケオ」
「はいはーい」
気持ちは伝わらなければ意味が無い。
だけど、潤から与えられるだけの恋愛なんてまっぴら御免だ。
俺からも与えてやらなきゃ、楽しみが無い。
タケオの気持ちに揺らぐようじゃまだまだだけど
元々揺らぐのは目に見えてた事だし。
これで自分の中に俺に対する罪悪感が出来て、
益々俺から離れられなくなるだろ?
俺から絶対離してなんてやらないからな。
覚悟しとけよ、潤。
***
「恋愛は一方通行じゃつまらない。・・・か」
吐き出した紫煙は天井へと舞い上がり、くるりと円を描く。
「じゃあ何時まで経っても一方通行な潤への俺の気持ちはどうしてくれるんですかね、キリトさん」
ジュッともみ消した煙草の火は、俺の気持ちの灯火、そのものだった。
。○一言○。
リクエスト有難う御座いました!
リクエストを頂いてから大分時間が経ってしまって…申し訳ない限りです(汗)
タケオ→潤×キリということで細かく設定も頂いていたのですが…
結局、頂いた設定の何一つ出せないままで…本当に申し訳ありません;;
リクエスト下さった樹閹様、有難う御座いました^^
樹閹様に限りお持ち帰りOKです。
[PR]動画