無料-
出会い-
花-
キャッシング
確かめたくなる時って
誰にでもあると思う。
「好き」の魔力
俺とお兄ぃはメンバー公認の恋人同士。
二人がくっついた経緯は
俺がお兄ぃの事ずっと好きで
駄目元で告白したのがきっかけ。
お兄ぃは「じゃあ付き合うか」とすんなりOK。
絶対蹴りが飛んでくるか、兄弟の縁を切られると思ってた俺にとって
お兄ぃのその言葉は何よりも嬉しかった。
そんなこんなで付き合い初めて早2ヶ月。
毎日みたいにお兄ぃは俺の家に泊まりに来て
一緒に仕事に出る。
この繰り返し。
同じ屋根の下に恋人同士が居て
同じベットで二人肩を並べて寝ているというのに
何も起きないワケがない。
それは今夜もやってきた。
「ねぇお兄ぃ?」
「んあ」
「ぶっ、何その返事」
「ぁんだよ」
夜も更けた2時前。
仕事が済んだのが日付の変わる前で
そこから俺の家に戻って一寸。
俺はすっかり風呂にも入ってくつろいでいるというのに
お兄ぃは分厚い本を片手にソファーで難しい顔をしていた。
お兄ぃの隣に座って声を掛けると
素っ頓狂な返事。
「寝ないの?」
「もうちょっと」
「さっきからそう云ってばっかじゃん」
「寝たいなら先に寝ろよ」
や、違うの。
俺はさーお兄ぃと寝たいんだって。
だからこうやって誘ってんのに。
どうして気付いてくれないかなー。
「俺はさーお兄ぃと寝たいの」
「毎晩一緒に寝てるだろ」
「そりゃそうだ」
って俺も納得してどうする。
「俺達付き合ってさー」
「2ヶ月だろ」
「そう。2ヶ月経つけどさ」
「何もないんだろ」
「そうそう。何もないのはさ」
「どう思うって?もう何回も聞いた」
「そう云うなら何とかしてよ」
俺は2ヶ月経っても
キスの一つもさせてくれないお兄ぃに
いい加減堪忍袋の緒が切れそうだった。
別に怒ってるわけじゃないけど、
何かほら
これじゃ告白する前と大して変わらないっていうか。
ちなみにさっきから話を聞いて返事はしてくれるけど
一回も俺を見てはくれない。
その目は活字を追っている。
「何とかって?」
「何ていうかなー・・キスするとかさ」
「キスぐらい何時でもしてやるよ」
「えッ!?」
「嘘」
ぱたむっと分厚い本を閉じたお兄ぃは
ニヤリと意地悪そうに笑みを浮かべて
「寝むてー」っと寝室へと入って行ってしまった。
何か俺、普通に遊ばれてるよなぁ。
と、つくづく最近思う。
それでもとりあえず、望んでいた形には状況がなりつつある事に
もしかしたらとちょっとした期待を胸に
俺も寝室へと向かった。
「コータ。何か着るもん貸して」
「あっあぁ、ベットの上にパジャマ出してあるでしょ?」
寝室は真っ暗で、
電気付けないからパジャマが見えないじゃん。
と電気を付けようとしたら「付けんな」と怒られた。
「見えてる?」
「見えてるよ。付けなくていいから」
まぁお兄ぃがそう云うならと、
電気は消したままで。
寝室のドアを閉めると、そこは完全に闇。
今日は月も出てないから、正真正銘の真っ暗だった。
「本当に見えてんのかよー」
「見えてるよ」
「俺見えないんだけど」
「心がすさんでるからだ」
「何それ(笑)」
「さあ」
何かスゲェ無責任な事を云われてるような・・・。
いやまぁ何でもいいけどさ。
とりあえずこの辺りにあるだろうと、移動した先にベットがあって
そこにボフンと倒れこんだ。
「痛い」
「ぅえ!?」
「身体踏んでる」
どうりで何か柔らかいと思ったら
俺は先に横になっていたお兄ぃの上に倒れこんでいたようで。
慌てて身体を起こそうとした。
が、
それは呆気なく阻止されてしまう。
理由は、お兄ぃの腕がスルリと首に回されたから。
「コータは何?どうしたいの俺と」
見えない闇の向こうからお兄ぃの声が聞こえてくる。
多分、顔は30cm程先にあるのだろうけど
暗い所為で全く見えない。
お兄ぃに体重を掛けるわけもいかず
俺が両手をベットに付いているから余計に
その距離は遠いはず。
でもどういうわけか
そういうお兄ぃの表情は予想できた。
きっと、口角を上げて
笑っているに違いない。
「どうしたいって・・・」
「一緒に寝たいの?手繋いで」
「や・・それもしたいけど」
「足の間に足挟んで暖めあったり?」
「うん、それもしたい」
「抱きしめあったり?」
途端に首に回された腕に力がこもって
下へ下へと引き寄せられる。
あれよあれよと云う間に
付いていた腕はお兄ぃの肩に置かれて
顔はお兄ぃの耳元へ持って行かれた。
ようするに抱きしめられた。
俺は体重を掛けまいと身体を浮かせようとするけど
お兄ぃがそれを許してくれなくて、ぎゅうと引っ付いてくるもんだから
丸々俺の体重がお兄ぃに掛かっている状態。
「おッ・・・お兄ぃ・・・重くないの?」
「重たくない。俺はそんなヤワじゃない」
「うんでも・・・苦しくなるよ?」
「平気」
さっきは幾分遠かった声も
今は耳元で聞こえる。
たまにお兄ぃが顔を動かすと、頬に柔らかい髪が触れてくすぐったい。
「で、どうしたいの?」
そしてまた話は戻る。
「どうって・・・云われても」
「抱きしめあった。後は?」
「後は・・・」
「キスしたい?」
「・・・ッえ」
俺が返事をする間も無く
突如、首筋に柔らかい感触が伝う。
それは云うまでもなくお兄ぃの唇で。
その唇はツツツッと俺の首筋を上に伝い、顎を伝う。
必然的に俺は顔を上げる形になって
目下10cm先にお兄ぃの顔がぼんやり見えた。
やっぱり予想してた通り
その顔は意地悪そうに笑っていた。
「首だけ?」
ニヤリとまた笑って
ペロリと舌なめずりをする。
何それ。
誘ってんの?
「お兄ぃ、どうしたの?」
「どうもしないよ。首だけで満足かって聞いてんの」
「いや・・そりゃ」
「だろ?だったらもっと顔寄せろ」
寄せろって云われても
ここまでお兄ぃの顔を至近距離で見たこともない俺は
柄にもなくちょっと緊張しているわけで
おずおずと寄せた頭を、後頭部からガシリと掴まれた。
「じれったい」
「いでででででっ!」
「さっさとちゅうしろ馬鹿」
そう云ってお兄ぃはちょっと頭を上げて
俺の唇に吸い寄ってきた。
軽く互いの唇が触れて
一度目が合って、お兄ぃが首を枕に戻したのを合図に
今度は俺から唇を重ねた。
下唇を唇でついばんだら
きゅうと胸元の服が掴まれた。
それを見計らって
ゆっくり舌を口内に差し込む。
何の抵抗もなく滑り込んだ舌に、お兄ぃの舌が絡んできた。
「っぅ・・・ん」
互いの唇の隙間から漏れるお兄ぃの声。
その声はヤケに色っぽくて
想像してたのとは全然違った。
想像してたのかよ。って突っ込みは、置いといて。
十分だろってぐらい、お兄ぃの口内を犯して
そっと唇を離すと
その短い距離を唾液の線が繋いだ。
お兄ぃがそれを舌でペロリと舐め取る。
「ッ・・・満足・・?」
「ん。満足」
息苦しそうにそういうお兄ぃが何だか凄い愛しくて
俺はその身体を抱きしめた。
白い首筋に顔を埋めて、柔らかい空気に酔いしれた。
「コタ・・?」
「・・・ん?何お兄ぃ」
「好きだって云って?」
「え?」
「俺の事好きだって云って?」
どうしたんだろう突然。
と耳を疑いたくなるような言葉が聞こえてくる。
俺がびっくりして顔を上げると、頬にキスをされた。
「お前云ってくれなかった」
「ぅえ!?何時!?」
「告った時」
「えっ!?俺云ったよ!」
どうやら俺が2ヶ月前に告白した時に
好きだと云わなかったから、云って欲しいらしい。
いやでも俺確か云ったような・・・。
「云ってない。『お兄ぃが気になって仕方ないんだ。付き合って欲しい』しか云ってない」
「ぅあ・・・何で覚えてんの」
一字一句逃さずに覚えている所は
さすがと云うべきなんだろうか。
でも、お兄ぃの記憶が本当だとしたら
俺、好きだって云ってないんじゃん。
「俺の事好きなのかどうか、云って」
そしてまた唇が首筋を伝う。
「ッ・・・お兄ぃ・・・」
「云ってくれなきゃ、これから先も何も無いからな」
「云う!云うから」
「じゃあ云って」
本当に好きだって云ってなかったっけ?
なんて考えている間に、お兄ぃがとんでもない事云いだしたから
俺は慌てて断言する。
もういいや。
どっちでも。
また云えばいいだけの話しだし。
お兄ぃの顔が見える距離。
目下10cm。
その唇に触れる瞬間に
「好きだ」
と呟いたら
口角を上げて笑って、
「俺も」
と返してくれた。
それから合わせた唇は
最初のキスより甘くて濃厚で。
「好き」の魔力は凄いと思った。
■一言■
なんだこりゃー!
甘いのかなんなのかイマイチ微妙…。
コータがお兄ちゃんにLOVEっていうのは今まで書いてきたんで
お兄ちゃんがコータを好きでっていうのを目指したんですが…。
どうして私が目指すとそれとは違うお話が出来上がるのでしょうか(知らん)
[PR]動画