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いい人だと思っていたら
大間違いだぞ?
■■■アイラヴお兄様 U■■■
第二話:「俺の家のブラックホール」
無事にライヴも終え、スタッフ一同と飲み明かそうかと盛り上がる楽屋をそそくさと抜け出してきた。
「はぁ・・・」
廊下を少し歩いたところにある、自販機でお茶を買って座り込む。
疲れた・・・・。
ライヴは楽しかったし、疲れるのは当たり前のことだけど、今日は何時も以上に疲れた。
理由はもちろん、ライヴ前の楽屋での一悶着。
あれからお兄ぃはライヴのMCでも話題を振る事無く、さらりとメンバー紹介をして俺になるべくかかわらないようにしてた。
当たり前だよなぁ(苦笑)
「あーっ・・・なんちゅー夢見てんだ俺・・」
ずずっとあったかいお茶をすすりながら、天井を見つめぼぉーっとする。
「欲情してんのかな俺・・・・」
「そうなのコータ?」
俺の独り言に返事を返したのは、言うまでもなく潤。
いつの間にか横で同じようにお茶をすすっている。
「潤っ!!」
「キリトに欲情してんの?」
「そっ!!!そんなんじゃ・・・・ないけどさ」
「今自分で言ってたじゃん」
モゴモゴと俯いて言葉を濁す俺に潤は更に突っ込んで質問をしてくる。
「ねぇ本当にキリトのこと好きなの?」
「えっ…あー…いや…その…」
「好きなの?」
「っ…いやだからその…つまり…」
「好きなんだ?」
「……はい…」
言葉を濁しても突っ込んでくる潤。
コイツには適わないよ本当。
「へぇ…抱きたい?キリトのこと。」
「っ!?そそそそそそんなっ滅相もございません!!!!」
「何でそんな慌てんのさ。抱きたいんでしょ?だから夢見たんじゃないの?」
どうしてそういうとこまで突っ込んでくるかなぁ…
何て答えろっていうんだよ。
「いやまぁ…そうなのかもだけどさ…」
「協力してあげようか?」
「はい?」
AM 3:30
ピンポーンっピンポーンっ
「あぁ?…なんだよ…お前か…」
「御免…疲れてんのに…」
「そう思うなら来るなよ。」
俺は、お兄ぃの家の玄関前に居た。
もうすっかり日付も変わって、世間一般で言う真夜中ってやつ。
真夜中のチャイムを鳴らすとバスローブ姿のお兄ぃが出てくる。
凄くうっとおしそうな顔で、玄関先に立つ俺を目にしてもっと嫌そうな顔を一瞬見せた。
「あがっても…いい?」
「勝手にしろ」
玄関をあけてさっさと奥へと入ってしまうお兄ぃを横目に、おずおずと部屋へと入る。
リビングに入るとテーブルに水のペットボトルが置いてあるだけで、他には何も目ぼしい物はなかった。
お兄ぃの姿もない。どうやら寝室へ直行したようで…。
潤に「協力してあげようか」と言われ、返事をする間なく潤は行動へ移した。
打ち上げ話で盛り上がるスタッフに俺の具合が悪いから。と言って回り
『具合が悪いならまた日を改めるか』となるように仕向け、皆がそれぞれ家に戻るようにしたのだ。
全ての片付けなども終え、帰路についた頃には日付は変わっていた。
丁度各自家について、風呂に入りベッドに着こうかと言う時間を見計らってお兄ぃの家に来た俺。
『キリトん家言って、雰囲気作ればこっちのモンだからさっ頑張れよ』
そういって潤も帰っていた。
頑張れよって言われても…このお兄ぃの不機嫌な状態でどうしろと??
「お兄ぃ…?」
寝室を覗くと真っ暗で、リビングから差し込むわずかな光でお兄ぃがベッドに横になっていることを
確認できる。声をかけたって、もちろん返事なんてない。
「ねぇお兄ぃ…」
「・・・・・」
「話聞いて欲しいんだけど…」
「・・・・・・・」
声をかけても一向に返事は返ってこない。
「夢のことなら謝るよ…謝るからさ…話聞いてほしいんだ」
「・・・・よ」
「え…?」
「ドア・・閉めろよ。・・・眩しい・・・」
「あっ・・・御免・・・」
パタンっ
ようやく聞けたお兄ぃの言葉に、俺は慌ててドアを閉めた。
「そっち・・・言ってもいい・・・?」
「どうでもいいからさっさと話せよ・・・眠いんだから」
「あ・・・うん・・」
冷たいお兄ぃの口調。
でもどうしても謝りたかったから…。
おずおずしくベッドへ近付き、横になっているお兄ぃを踏まないようにベッドサイドに腰をかけた。
ぎしっ
スプリングのきしむ音が静かな部屋に響く。
お兄ぃの体がちょっと俺の方へ傾いた気がした。
「あのさ・・・夢のこと・・・本当御免・・・・・悪気があって・・あんな夢見たんじゃないんだ・・」
「じゃあ何であんな夢みるんだよ。」
「っ!」
いきおいよく起き上がり俺をきっと見据える。
相当怒ってるな…この顔は…。
「だから・・・その・・・・」
「あぁ?はっきり言えよ!イヤラシイ夢見やがって!そんなに欲情してんのかよ!!」
「そういうわけじゃ・・・・」
「じゃあどうしてあんな夢見るんだよ!!はっきりお兄様の前で説明してみろっっ!!!」
どんどんと俺に言い寄って、しまいには胸倉を掴んでぶんぶんと振り回してくる始末。
お願い…落ち着いてお兄ぃ…(涙)
「夢見たのはっ・・・そのっ・・・お兄ぃに・・・」
「俺になんだってんだよ!!ええっ!?」(ぶんぶんぶんっ)
「お兄ぃに・・・欲情してる・・・だけだよ・・・・」
お兄ぃの目を見ないようにして、ぼそぼそとそういう。
絶対チョップが飛んでくると思った。
でも、何時まで待ってもチョップは飛んでこなかった。
ハラハラしながら、ちらっとお兄ぃの顔を見るとその顔は真っ赤で…
俺の顔をじっとみたまま固まっていた。
思ってもみない意外な反応に、俺は戸惑うしかない。
「お・・・お兄ぃ・・・・・?」
「っ!!!」
喉に詰まってようやく出た言葉で声をかけると、何かに気がついたように我に返り
途端に俺から離れると布団にもぐりこんでしまった。
どういうこと・・・今の反応。
「お兄ぃ・・・?」
「・・・・・・・」
「お兄ぃってば!!」
どうしても確かめたかった、今の反応。
どうして怒らなかったの?
俺はまた反応を示さなくなったお兄ぃから布団をもぎ取った。
すると今度はベッドにうつ伏せになり、枕に顔をうずめて隠してしまう。
「ちょっと!お兄ぃ!!」
「やめっ!!やめろってば!!」
その枕をも俺がもぎ取ろうとすると、物凄い勢いでそれを拒む。
悪いけど、力でお兄ぃに負ける気はしない。
・・・なんて思ってる場合じゃないよ。
ばっ!!
とりあえず、力任せに枕を引っ張ってみる。
するとしつこいぐらいにお兄ぃは枕にくっついてきて、そのまま枕ごと俺の上に圧し掛かってきた。
状態で言えば…ベッドに倒れこんだ俺の上にお兄ぃが乗っかってる・・・という感じ。
お互いに至近距離で目が合って、何だか照れくさくて思わず目をそらしかけた。
でもそれはお兄ぃの方が早くて・・・目が合ったのはほんの一瞬だった。
「お兄ぃ・・・」
「・・・・・手・・・離せよ・・・・」
お兄ぃの腰には俺の手がしっかりと絡みついている。
無意識に。(本当かよ)
「・・・・・・・・・・・やだって言ったら・・・?」
「ッ!冗談言ってんじゃねぇよ!離せっ!!」
「やだ」
「いい加減にしろよお前っ!!」
「・・・・・・いやだ」
あまりにも聞き分けがないもんだから(お前だ)、嫌がって暴れるお兄ぃを
更に抱きしめた。
きゅっと背中がきしむ音がして、ちっこいお兄ぃの体はいとも簡単に俺の腕の中に納まってしまう。
夢で見たように、懐かしいお兄ぃの匂いがする。
顔にかかった黒髪が頬をくすぶってなんだかくすぐったかった。
「・・・お兄ぃ・・・俺お兄ぃが好きだよ・・・」
「お前っ!・・・・・何言ってっ・・・」
「冗談でも夢でも嘘でもない・・・キリトが好き・・・」
「っ・・・」
ぎゅっとお兄ぃの体を抱きしめてワザと耳に息がかかるように、俺の声がしっかり聞こえるように。
顔は見えないけど…多分相当困った顔してんだろうな。
そりゃそうだよ、男から…しかも実の弟からこんなこと言われて困らないヤツがどこにいるんだ。
俺の言葉の後から、お兄ぃは黙りこくったまま、何も言わなかった。
嫌われたかなこりゃ。
「・・・・・なぁ・・・・」
「えっ?なっなに?」
言うんじゃなかったかなぁなんて一人で懺悔に浸っている俺に、突然消えそうなぐらいちっこい声で
お兄ぃが声をかけてきた。
「俺は・・・お前が嫌いだ。」
「(がつーんっ)あ・・・あそう・・・」
口を開いたかと思えば、かなりキツイ一言。そりゃそうだよなぁ・・・
実の弟から好きだなんて言われて「はいそうですか」って言ってくれるわけないよなぁ・・・
でももう少しソフトに言って欲しかったよ、お兄ぃ(涙)
「大嫌い」
「?」
そう言いながらお兄ぃは何故か俺の首元に顔を押し付けてくる。
「金髪で・・・・ナマイキに鼻ピとかしてるお前が嫌い。」
「???お兄ぃ??」
首元で喋られて、軽く息が肌に当たる。
と思っていたら、ぷにぷにした柔らかいものが俺の首を伝う。
え?え?え?
も・・・もしかして・・・
「嫌いだよ・・・コータなんか。」
「っ・・・お・・・お兄ぃ??」
もしかしなくても、首を伝っていたのはお兄ぃの唇。
そのまま鎖骨辺りに舌まで這わせてきた。
言ってることとやってること違いません???(滝汗)
「でもさ」
はたっと顔をあげて、じっと俺を見る、その目は。
いつものカリスマ。
「抱かせてやってもいいよ。お前になら。」
そういって俺の唇とお兄ぃの唇とが触れた。
「っ・・ん・・・それ・・・本気にするよ?」
軽いキスの後に、名残惜しそうに唇を離す。
俺がそう問うと、お兄ぃは
「なんなら俺もその気にさせてみろよ」
なんて、偉そうな表情を見せて挑発をする。
その表情を了解の承諾として受け取り、上に乗っかる体をそっとベットに押し倒した。
下から見るのとはまた違ったお兄ぃの表情。
眼光はじっと俺の目だけを見ている。
「俺もう辞めないよ?」
「辞めたらお前の負けだからな」
「上等・・・体力じゃ負けないから」
「ナメんなよ。お兄様だぞ俺は」
「こんな細っこいクセに・・・」
抱きしめた時よりももっと細く感じたお兄ぃの体。
肌は見た目よりも柔くて、あったかかった。
この後どうなったかって?
そりゃもちろん。
ばぁぁぁぁぁぁんっっっ!!!!
「もちろんそんな簡単にヤらせるワケはないんだよねっ」
その言葉と同時に部屋の扉をイキオイよく開けて飛び込んでくる奴が居た。
もちろんそれは・・・・
「ッ!?!潤っっ!!!」
これから!!
っていう大事な時に、協力してやるって言ってくれた潤がやってきた。
もちろん、俺とお兄ぃは呆然。
「コータ残念だったなぁ。悪いけど、キリトを独り占めする時間はここでオシマイ♪」
はぁ!?
何言ってんのこのヒト!!!(涙)
「どういうことだよ・・・コータ」(怒)
あーーー!!!お兄ぃまで何故かキレてるーーーっ(涙)
折角ご機嫌取ったのに・・・折角ここまでたどり着いたのにーーーー!!!
ヤりきれない気持ちの俺をよそに、潤はずかずかと部屋に入るとばふっとベットに腰をかけた。
「残念だなぁコータ。時間切れ☆続きはまた今度にでもー」
「潤ー!!どうしてっどうしてこれからって時に!!!」
はっきり言って生き地獄とはこのことです。
夢のことと言い、元気になったまま放置されてしまう若気の至りをどうしてくれるんですか(涙)
潤がここに入ってきたことで、一気にイケイケムードは暴落。
このまま潤が帰って続けるにも、お兄ぃはすでにご機嫌斜め。斜めどころかキレてますよ・・・。
仕方なく、俺はベットから降りてトイレへ向かう。
「なんなら俺が手伝ってあげようかー?」
「結っっ構ですっっ!!!」
そうして俺はむなしく、トイレとともにすることになった。
潤のバカっ・・・。
潤のバカっ・・・。
このままじゃ俺病気になるっつーの。
それから後も、何度かお兄ぃといい雰囲気になっても、何故か!何故か潤にことごとく邪魔をされる。
時には電話、時には自宅訪問。
そんなこんなで、お兄ぃとのお初はまだまだ先になりそうな予感・・・。
大体どっからわいて出るんだよ!!
俺の家はブラックホールじゃないんだ!!
潤のバカーーーっっ!!!!!
■一言■
アイラヴお兄様の続編です。一応これでこのお話は終わりなんですが…
気が向いたらまたその後を書こうと思っています^^
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