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どうしようなんて考えてる間に行動する事が一番だと
貴方は言った。
■■■ハレーション U■■■
「あーたの事本当は手放したくなかったよ」
固いフローリングを地に、重い扉を背にして俺は座り込んでいた。
扉の向こうから聞こえてくる、愛する人の声。
女なんじゃないかと思うほど、高く消えそうなその声は
自分の為にあるんじゃないと自覚するのが嫌だった。
あの声はタケオ君のもの。
あの体もタケオ君のもの。
あーたの全てはタケオ君のもの。
俺には、そんな顔してくれない。
俺には、そんな声を聞く権利もない。
貴方を愛する権利なんて与えられない。
それでもずっと好きだった。
きっとタケオ君よりずっとずっと前から
貴方だけが好きだった。
何時の間にか貴方はタケオ君の所へ行ってしまって
俺は貴方の瞳にすら映らなくなった。
タケオ君と喧嘩して、俺の腕ん中に貴方を納めたとき。
本当に嬉しかった。
このまま自分のものにしたくて、抑えられない感情を露わにして
ずっと口付けたかったその唇にキスをした。
布団の中で抱きしめた体は冷たくて
タケオ君が来るのは分かってたけど、このまま帰らせたくないって
そう思った。
でもそれは俺の役割じゃなくて
両思いの2人の仲を引き裂く事は、俺には出来ない。
愛しい貴方を
ただ見ていることしか出来ない。
「っぅ・・タケオっ・・・」
「キリト・・・」
「あぁんっあんっぅ」
不規則にきしむスプリングの音。
聞こえてくる声を聞くだけで、イけそうで
今すぐ部屋に飛び込んで、タケオ君を引き剥がしてやりたい。
俺を見て。と言ってやりたい。
アンマリに押さえられないその感情に
立ち上がりドアノブに手をかける。
これを廻して、奥に押す。
ベットの上のキリトを抱きしめて
愛してる。
と言えば、俺の胸の締め付けが少しは楽になるだろうか。
握り締めたドアノブに手からの汗が伝わった時
ドアが向こうに引っ張られた。
ガチャッ。
「うおっ。潤どした?びっくりするじゃん」
「うあっタっタケオくんっ・・・ごめんっ」
「ううん、大丈夫。シャワー借りるよ?」
「あっうんどうぞ。使って使って」
引っ込んだドアの向こうからはコトを終えたタケオくんが上半身裸のまま現れた。
シャワーを借りるとすれ違ったタケオ君から薫る、キリトの匂い。
危なかった。俺何してんだ…。
「潤ー・・・水ー・・・」
開けっ放しにされたドアの奥からは力ないキリトの声が聞こえてきた。
水が欲しいと言うので、冷蔵庫に冷やしてあったボルヴィックを持ってきて
部屋に入った。
バタンっ
締める必要のないドアを閉めた時から
俺はおかしかったのかもしれない。
「はい、キリト」
「んぅ・・・さんきゅ・・・」
ベットの隅に腰を下ろし、裸のまま薄い布団を被ったキリトにボルヴィックを渡す。
細い貴方の指が俺に触れて、さっきまで冷たかった体とは違う熱が伝わる。
「お疲れサマ」
「・・・・ハイ・・」
「どうだった?タケオくんは?」
「・・・・・そういうこと聞くなよお前・・・」
「何で?聞きたいよ?」
「お前には本当悪いと思ってるよ・・・御免な」
「どしたの急に」
「どうもしないけど・・・悪いと思って・・・」
冷たい水をゴクゴクと飲み干すキリト。
細いその喉が音を立てながら上下する。
ボトルをサイドテーブルに置いて、煙草に火をつけた。
きゅっと締まった首。
煙を吐き出す口。
軽く汗で濡れた髪の毛。
全部が愛しい。
「・・・悪いって思ってるの?」
「ん。思ってる」
そう思ってるなら
悪いと思ってるなら
煙草を見ないで
何もない部屋の天井を見ないで
タケオ君を見ないで
「俺を見て?」
ぎしっ
「潤・・・?」
「俺を見てよキリト」
「・・・・何言って・・」
「タケオ君を見ないで俺を見て」
困惑するキリトの上に覆いかぶさって
首筋にキスを落とした。
キリトの指から煙草が灰皿に滑り落ちる。
「やっ・・・潤っ・・!?」
「好きだよ。あーたが好き・・・」
「潤っ!・・・お前のコト悪いとは思ってる・・でも・・・」
「でも何?・・・・俺じゃ駄目なのキリト?」
「駄目とか・・そんなんじゃねぇだろ・・」
なおも困惑した瞳で、俺の目を見る。
やっと
俺を見てくれた。
キリトの腕は距離を縮めようとする俺の肩を掴んでいた。
「タケオが戻ってくるから・・・」
そういって、俺を押しのけようと体を起こす。
「駄目。行かないで」
「駄目って・・・」
その体を抱きしめて再びベットに倒れこませた。
抱きしめたキリトの体は暑すぎるぐらい暖かで
ふんわり薫るその匂いに、意識が飛びそうだった。
「抱きたい・・・あーたを抱きたい」
「何言って・・駄目だって!お前には本当に迷惑かけたし、悪いと思ってるけどっ・・・っ!!」
「っんぅ・・・」
俺の言葉に返事を返すキリトの口をふさいだ。
最初は口付けるだけ。
柔らかく口付けて、少し離してはまた口付ける。
唇を離すときに、キリトの息遣いが漏れてやけにエロティックだった。
「ぅっ・・・んぅっ・・・」
「はぁっ・・」
舌を軽く入れようとしたとき、キリトが嫌がって首を振った。
仕方なく唇を離すと、さっきより困った顔して俺を見る。
「俺のこと嫌い?」
「そんなんじゃないけど・・・でも俺にはっ・・」
「タケオ君がいるから?」
「・・・・・うん」
「俺にはキリトを抱く権利はないんだ・・・?」
「・・・」
「それでも俺は・・・キリトが愛しいよ・・・」
ぎゅうっと抱きしめると、今度はどこも捕まれなくて
何の抵抗もなかった。
首筋にキスを落としても、軽く口付けても
何の抵抗もない。
「キリト・・・?」
「タケオが・・・・・戻ってくるまでだけなら・・・」
「・・・・・ありがと」
あーたの口からそんな言葉が聞けるとは思ってなかった。
泣かれるんじゃないかと思ったぐらいなのに
タケオ君が戻るまでなら、こうしていてもいいって。
優しいね、キリトは。
頬に口付けて、耳を軽く舐めた。
小さく喘ぐ声が聞こえて、自分の行為に感じてくれるのだと思うと
変に感じてくる。
そのまま唇で首筋をなぞって、鎖骨に跡を残した。
それでもキリトは何も言わなかった。
抑えられない感情はエスカレートするばかりで
次を、次をと求めてくる。
布団に手を滑り込ませて、キリトの腰に手を廻した。
タケオ君に馴らされて、なおかつコトを終えたばかりの体はそれだけでも敏感だった。
そっとキリトの下腹部に手を下ろし、キリトのモノに触れる。
途端にキリトが体を震わせて俺を見た。
「潤っ!駄目っ・・・そこまでは駄目だってっ・・」
「・・・感じてるんじゃないの?また堅くなってきてるよ?」
駄目だと拒む言葉とは裏腹にキリトのモノは確かにその熱を感じていて
ピクピクと反応しながら硬度を増していた。
「そこまでは駄目っ・・・タケオが帰ってくるから」
「大丈夫。暫く戻ってこないよ」
タケオ君の風呂が長いことは十分承知の上。
俺はキリトの体を纏っていた布団を剥ぎ取り、その体を露にさせる。
やっぱり下腹部は十分に反応していたようで、先端からはすでに
先走った熱が溢れていた。
「もうイキそうなの?そんなに感じた?」
「・・ばっ!そういうこと言うなよっ・・」
「イキたい?舐めて欲しい?」
「っ・・・・・」
「愛しいよあーたが本当に」
「っんあっ」
堅くなったキリトのモノをそっと口に含んだ。
その瞬間にキリトが体を上下させる。
「・・・・あぁっ・・はぁっ・・・じゅんぅっ・・・」
「ぅん・・・」
器用に舌を絡ませながら吸い上げると、キリトが軽く鳴いた。
俺の頭を掴んでいる手が軽く震えている。
「もっ・・・駄目ぇっ・・・」
「ッん・・・」
ビクビクと体を痙攣させて俺の口内に精を放った。
俺はソレを綺麗に飲み干して、チロリと先端に舌を這わせた。
「じゅんッ・・・・・」
「そんな泣きそうな顔しないでよ。気持ちよかったんじゃないの?」
ぎゅうっとキリトの体を抱きしめると、キリトは俺の首にゆっくりだが腕を回してきた。
その行動が愛しくて愛しくて、キリトの唇にキスをした。
何時までもそうして居たかったけど、タケオ君もそろそろ出てきそうだったから
キリトの体をキツク抱きしめて、その体から身を引いた。
「そろそろタケオ君戻ってくるし、ここまでだね」
名残惜しそうに身を引く俺に、キリトは俺の髪を軽く撫でてくれた。
「・・・・つき合わせて御免」
「あやまんなよ・・・」
「・・・でもキリトが好きなのは嘘じゃないよ」
「分かってるよ」
「抱きたいと思ったのも嘘じゃない」
「分かってる」
「・・・・・・俺の物になって欲しいと思った」
「うん」
「タケオ君とキリトを引き離してでも・・・あーたが欲しいって・・・」
「うん」
一度芽生えた感情は
何時までも抑えられるものじゃない。
「俺やっぱ・・・あーたが好きだよ」
一度捕まえた手を離したのは、愛しい人を返したとき。
二度目に捕まえた体を離したのも、同じだった。
俺はまた、愛しい人を手離して
それからどうするんだろう。
いつまでも、我慢し続けなきゃいけないんだろうか。
何時までも抑えていられるほど
俺は大人じゃない。
どさっ
「潤?」
「・・・・・・ごめ・・・キリト・・・やっぱ抑えられない・・」
「え」
「・・・あーたを抱きたい」
何かが頭の中ではじけた音がした。
キリトの体をもう一度ベットに押し倒して
その体にキスを落としている時に気がついたことだった。
「まっ・・まって!潤っ!!」
「・・・・待てない」
「潤っ!!」
「潤・・・?」
その空気は、以前に給湯室で流れたものと同じだった。
冷たくてココとは違う空気。
ピリピリとした視線は、キリトではなく
今度は俺に向けられている。
「タケ・・オ・・」
「キリト・・・どういうことだよ」
風呂上りのタケオ君だった。
キリトの上に覆いかぶさる俺と、俺の下で涙を浮かべながら抵抗するキリトの姿を見て
ただ呆然と突っ立っていた。
「ちがっ・・・・・タケオっ違うんだ・・・これはっ」
「どうして潤が・・・?説明しろよ潤」
キリトの弁解も耳に届いた様子もなく、タケオ君はただ俺だけを見据えて
一歩一歩近寄ってくる。
途中、そのテンポが速まったかと思ったら
頬に鋭い痛みが走って体が宙に舞った。
ドサッッ!!!
体が床に叩きつけられる。
一瞬目眩がした。
「待て!!タケオ待てって!!」
「キリトは黙ってろ!」
目眩と痛みに床で動けない俺の視界の隅で、
2人の姿が映る。
必死に止めようとするキリトの体をタケオがベットへ突き飛ばしていた。
怒っている。
それぐらい、部屋に流れた空気を感じた時から分かってた。
自分がしてたことも
分かってる。
「潤。お前どういうことか説明しろ!」
説明も何も
「説明も何も・・・見てた通りだよ」
「・・・・」
「キリトを抱こうとした」
「っ・・・お前なんだってそんなこと・・・」
タケオ君には一生わからない。
愛しい人が傍にいるタケオ君には
「俺の気持ちなんて判らないくせに」
バシッッ!!!!
今度は平手打ちだった。
殴られたのとは反対の頬をぶたれた。
きっと、以前にキリトが受けた平手打ちより何倍も痛い。
口の中を切ったのか、鉄の味が口内を走る。
そういえばキリトも
俺と似たような事言って、殴られたんだっけ
勉強できてねぇよ、俺
「信じてたのに」
そんな台詞だけを残して
タケオ君は服を着せたキリトを連れて出て行った。
もう
駄目かもしれない。
そう思った。
「潤っ」
床に座り込んで、暫く部屋の隅だけをぼぉっと見ていた俺に
声がかかった。
ふと顔をあげるとそこには
「キリ・・ト」
「はぁっ・・・はっ・・・」
肩で大きく息をしているところを見ると
走ってきたのだろうか。
タケオ君に強く腕を引かれ、出て行ったハズのキリトが俺の前にいる。
「どして・・」
「・・・・・タケオが・・・行ってやれって」
「タケオくんが・・・?」
「ん・・・・」
キリトは俺に目線を合わせると、きゅっと首に腕を回して抱きついた。
「怒られるよ・・・キリト」
「怒られねぇよ。タケオには言ってきた」
「?」
「潤の傍に居てやっていいかって」
「・・・・え」
「寂しかったんだろ?御免な」
ふんわりと鼻に付いたキリトの柔らかい香り。
暖かいその体に何だか安心できた。
「・・・好きだよキリト・・・・・傍に居てよ」
「傍に居るだろ」
「愛してる・・・どうしようもないぐらい好きなんだ」
「うん。有難う」
「・・・・・キリトっ」
力任せに抱きしめた体は細くて暖かで。
耳元で傍に居ると言ってくれたキリトが愛しかった。
やっぱり諦められないよ
俺にはあーたしか居ないんだ。
ピルルルルルーっピルルルルルーっ
ピッ
「もしもし」
『あーもしもしタケオ君?』
「おぉコータ。どした?」
『タケオ君こそどうしたの?いつもならこの時間お兄ぃとラヴラヴしてるじゃん』
「うんちょっとな」
『ふぅん。潤君にさー電話してんだけど出ないだよ。知らない?』
「潤?今頃キリトと一緒じゃないかな」
『え?ちょっとそれどういう・・・』
ピッ。
ツーッ ツーッ
「有効期限は今日だけだからな、潤」
■一言■
無駄に長いシリアスで申し訳ないです(汗)
タケキリ前提で、前の続きと言うわけでしたが…。
実は潤君はキリトが大好きだったんだよーというお話。
何気に続きがあるんですが…キリが悪いので出すの辞めようかと(苦笑)
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