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こんな日は
あーたと何時までも一緒に居たい。
小雨
シトシトシトシトシトシトシトシト
「雨何時んなったら止むんだよー・・・」
「それ何回目?」
「だってさー・・・ジメジメしてヤじゃん。雨」
「でも降ってるもんは仕方ないでしょうに」
「けどなー・・・」
何時ものように仕事帰り、家にキリトを招いた。
朝起きた時から仕事中も、そして今に至るまで
ずーーーっと雨が降っている。
ザーッと降るならまだしも、シトシトと規則的に小雨が続く。
大降りだったら外に出る事も諦めが付くが
小雨なら、ちょっと出ようかな?とか思う。
でも、俺は雨降るとクセっ毛が出るし
身体が何だかダルイ気がするし
気圧が下がってて頭が痛い気もする。
だからこんな雨の日は
いつも家に籠もりっきりだった。
それはどうやらキリトも同じなようで。
外に出たそうだが、窓の向こうは小雨が降り続く。
これじゃあ出れやしなかった。
雨の所為で地味にテンションも下がり気味。
さっきから窓の傍に椅子を持っていき
外ばかり眺めては溜息を付いている。
そんなウダウダなキリトさんに紅茶を差し出した。
「おー・・さんきゅー」
「本当に止まないねー雨」
「予報は何だって?」
「午後からも80%」
「あー・・・止まないハズじゃん」
キリトは受け取った紅茶にふぅふぅと息を何度か吹きかけて
一口二口、口に運ぶ。
「はぁ」
「どしたの?さっきから溜息ばっか」
「何かさー・・滅入るだろ。雨」
「あー確かに」
「滅入った」
「あははははは。滅入ったんだ?」
「そう」
「珍しい」
「何かダルイしなー・・・身体」
「ダルイ?」
「うんダルイ。何もする気がなくなるー・・・」
椅子からズルズルと足を滑らせて気だるそうにしているのを見ると
本当に滅入っているようだ。
「そろそろ日付変わるね」
そんな言葉をふと口に出すと、キリトはゆっくりと部屋の壁時計に目をやる。
針は0時前を刺していた。
「本当だよー・・・あー・・風呂入らなきゃー・ウゼー・・」
「うはッ!ダルそー!」
「だーからダルイんだよ俺はー・・・」
「どれだけダルイんですか本当。どうするの?お風呂」
「湯張ってる?」
「ううん。まだ」
「じゃあいいー・・明日入る」
「そう?じゃあ着替えてお布団へドウゾ」
「ダルイ」
「は?」
お風呂に入るのかと思いきや、ダルイらしくお風呂は明日にするようだ。
なので着替えてベットに行きなさいーって云ってるのに
またダルイとか云い出して、俺の服の裾を掴む。
「ダルイんだよ俺は」
「知ってるよ」
「な?」
「うん」
「ダルイんだぞ?俺は」
「うん知ってるってば」
「だから、な?」
「何?」
「お前いい加減本当馬鹿だな」
「何それ(笑)」
一体俺には何が云いたいのか全く判らない。
ダルイダルイの一点張り。
服の裾は離して貰えない。
最終的には馬鹿呼ばわり。なんなのあーた。
「何?ダルイから何?」
「俺はなーダルイんだぞ」
「何回目よそれ」
「ダルイって事はー・・はいッ潤サン!俺の足はどうなっているでしょう?」
「突然クイズ形式かよッ!(笑)えー・・・?足?」
「そう足」
突然クイズ形式で攻められてますます混乱するばかり。
キリトは足をプラプラさせていた。
「えー・・プラプラしてる・・・?」
「ぶーっ」
「何?」
「降参?」
「降参」
「足はー、ダルイの」
「何だそりゃ」
「じゃあ次。俺の手はどうなっているでしょう?」
答えはどうやら足はダルくなっているらしい。
そして今度は手をプラプラさせて問う。
って事は・・・・
「手もダルイ?」
「ぴんぽーん。という事は?」
「いう事は?」
「俺はダルくて動けないのです」
「ぶはッッ!!」
「笑うとこじゃねぇんだよ(怒)」
「怒るとこでもないでしょうにッ!(笑)」
ようするに、ダルくて動けないからどうにかしろって事だったらしい。
っていうかさ、それぐらい普通に云ってよ。
どれだけ遠まわしなんですか。
「だから連れていけ」
「ベットまで?」
「おう」
「はいはい」
最初から連れてって欲しいならそう云えばいいのに。
天邪鬼なんだかなんなんだか。
俺はそんなキリトの手を握り、ベットまで引いていった。
さすがに俺にキリトを抱っこする事は出来ない(笑)
うんうんと満足そうに頷いていたキリトをベットに座らせて、
俺はクローゼットからパジャマを出した。
「はい、パジャマ。着替えてねー」
「ダルイって云ってんだけど、俺」
「嘘ッ。着替えも出来ないの?」
「出来ない。無理。全然無理」
「もー。仕方ないねぇ」
ダルイ彼は着替えすら出来ないらしい。
仕方なく、キリトの着ているパーカーの裾をめくり上げる。
「はい、バンザーイ」
「バンザーイ」
「脱げた脱げた。はいじゃあまたバンザーイ」
「バンザーイ」
「よしっ。上お着替えオシマイ」
バンザイさせてパーカーを脱がせて、
ボタンを留めたまま今度はパジャマを着させた。
さてと。
「はいじゃあ今度はズボンね」
「こっちはいい」
「何だそりゃ」
「下は自分で履ける」
「今更恥ずかしがらなくても」
「そうじゃないッ。馬鹿野郎ッ」
「野郎って云うな野郎って(笑)」
今度は下を脱がそうとしたらイヤイヤと首を振り自分で着替え始める。
あーた、どうせやらせるなら最後までやらせなさいよッ!
なんて思ったけど口には出さない。
上下お着替えの終わったキリトは、ボフンとベットに横になって、
モゾモゾと布団に入っていった。
それを見ながら俺もパジャマに着替える。
キリトが寝た後にでも風呂に入ればいいか。
そう思っていると、布団の中からくぐもった声が聞こえてきた。
「じゅーん」
「はいはい?」
「じゅーんー」
「だからなぁに?」
「馬鹿」
「何それ(笑)」
「馬鹿潤」
「早く寝てください(笑)」
一体何かと思ったら、馬鹿馬鹿と連呼する。
理由も判らず馬鹿なんて云われて、普通に云われたら腹が立つけど
どういうわけかあーたに云われると腹が立つというか・・・
何か笑える。
「馬鹿潤。問題だ」
「またぁ?」
「俺は今どういう気分でしょう?」
「ふえ?気分?ダルイんじゃないの?」
「ぶー」
「えーなんだなんだ?」
着替えを終えた俺は、ベットに腰を掛けて布団にもぐったままのキリトの頭を撫でる。
布団の隙間からちょろっと見える黒髪がもそもそと揺れた。
「どういう気分でしょうかー」
「何?どういう気分?もう降参」
「淋しい」
「ぶッ」
「悲しい」
「ぶはッ」
「お前に傍に居て欲しい」
「わー素直だ」
「なんてな」
「嘘かい(笑)」
「のなんてな」
「淋しいの?」
「そう」
「じゃあ素直に云いなさいよホントにもー」
一体何が云いたいのかこの人は。
傍に居て欲しいたら淋しいたらと、珍しく素直に云ったかと思えば
それは嘘だとか。
でもそれが本当は嘘で、実際は傍に居て欲しいたら。
もう意味が判らない。
ポンポンと頭を再度撫でると、チマチマとこちらに身体を寄せてくる。
「ホントに淋しいの??」
「何度も云わすな馬鹿」
「どうしたの?素直になるなんて珍しい。雨降るよ」
「もう降ってるだろ」
「あぁだから雨なんだ」
「嬉しいクセに。俺が素直だと」
「嬉しいよ。凄い」
寄せてきた身体に覆いかぶさるように抱きしめると
布団から顔だけ出して見せる。
「苦しかった?」
「違う。顔見てないと淋しい」
「わおッ。本当に素直だ」
「嬉しいだろ?」
「嬉しい通り越して、ちょっと怖いよ俺」
「今夜はどしゃぶりだな」
「自分で云いなさんな(笑)」
珍しく素直になったキリトの身体を抱いて
その夜を過ごした。
結局キリトに離して貰えず、風呂に入る事は出来なくて。
朝になって二人で風呂に入る事になるのだった。
ずっと降り続いていた小雨は
どういうわけか、朝にはカラリと晴れ上がっていた。
。○一言○。
また白っぽいイメージでお話が書きたくなってやってみました。
ただのお兄ちゃんの我侭小説になってしまって、撃沈したのは云うまでもありません(凹)
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