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貴方の過去を俺はどう受け止めれば善い?
THE TRUTH
第7章:「白い死神」
キリトが居なくなったあの日から
気が付けば3週間が過ぎていた。
コータは、あれ以来ずっと俺の家に住み着いていた。
俺はもう完全な人間になったんだからと云うと
『兄に任せられた事だから』と云い張り
家を出て行く素振りは見せなかった。
キリトが居なってから、死神は一度も俺の前に現れる事なく
コータにキリトの詳細を聞いても『判らない』の一点張りだった。
家からキリトの姿が消えて、住んでいた空気さえ失われようとしている今。
俺の記憶からも徐々にキリトの存在が消えようとしていた。
死神なんて、本当は居なかったんじゃないかって。
そんなある日。
家に一通の手紙が届いた。
真っ黒の封筒で、宛名すら書かれていないそれは
玄関のポストから入れられていた。
封を開けると、中には一枚の手紙が入っていた。
そこには、赤い文字でただ一筆。
『今夜伺います』
とだけ書かれていた。
それが死神からだと判るのに時間は要せず
まさかキリトが?
と小さな期待を寄せていたのは嘘じゃなかった。
『兄はココには戻らない』
そうコータは俺に告げた。
でも俺は、突然届いたその手紙に、小さな期待をしていた。
***
「よお」
「ホントに・・・あーたが来るなんて・・・」
チャイムが鳴って、高鳴る胸を押さえきれずに俺はドアをイキオイよく開ける。
そこには、黒いスーツにマフラーをくるりと巻いたキリトの姿があった。
髪が幾分伸びているように感じたり、ちょっと痩せたようにも感じた。
キリトはポケットに手を突っ込んで
鼻をくすんとすすってみせた。
「何て顔してんだよ馬鹿」
「だって・・本当に・・・あーたがココに戻ってくるなんて・・」
俺はどんな顔をしているだろう。
多分、情けない顔をしているに違いない。
だって、目頭が柄にもなく熱い。
「あがっていい?っていうか・・・ただいま。か」
へらっと顔を緩ませて笑ったキリトを、抱きしめずにはいられなくて
俺は力任せに引き寄せて抱きしめた。
胸元で「苦しい」とか「びっくりした」とか聞こえてきたけど
その腕を緩める余裕はなくて、抱きしめて温もりを感じるのに精一杯だった。
***
キリトをリビングに招き入れて、ソファーにキリトを座らせる。
暖かい紅茶を出して俺も横に腰を下ろした。
さっきまで居たコータの姿はリビングから消えていた。
「・・・コータ・・・来ただろ?」
「あー・・うん。さっきまで居たんだけど・・」
「俺に逢いたくないのも当然か・・・」
ポツリと呟いた言葉。
「え?どうして?」
「なぁ潤」
「ぅん?」
「ちゃんと話しようと思って来たんだ」
「話?」
「俺の・・・過去の話」
過去の話?
死神であるキリトの過去に疑問がないと云ったら嘘になる。
興味はあった。
でも、それを聞き出したいとは思わなかった。
どうしても、踏み込めないところがある。
キリトの過去に触れたら
全てが壊れてしまいそうに思えて。
「俺・・・俺さ」
「・・・・・キリトッ・・」
「俺実は・・・」
「キリトッッ!!!」
「え・・ッ・・・」
俺にはまだキリトの過去を受け入れることなんて
「御免キリト・・・」
出来ない。
「俺にはまだキリトの過去を聞く事は出来ない」
「潤・・・・」
「怖いんだ・・あーたの過去に触れる事で・・全てが壊れてしまいそうで・・・・・」
「なぁ潤・・・聞いてくれ。俺は・・・どうしてもお前に・・」
「御免・・・・」
胸騒ぎがした。
キリトがこれから云う言葉が呪詛のように感じる。
酷い呪いに掛けられて、もう戻れない気がした。
だから聴きたくないと俺は耳を塞ぐ。
これは逃げかもしれない。
だけど、逃げずには居られない程のこの胸騒ぎは
抑えられなかった。
「聴くべきだと思うよ。潤君」
その声は、コータだった。
「コッ・・・コータッ・・・・」
「久し振りだねお兄ぃ」
「ココに・・・ずっと居たのか・・・?」
「そうだよ。お兄ぃに託されてからずっと」
「・・・・・・」
「それより潤君。お兄ぃが話そうとしてる事。聴いておくべきだと思う」
コータは俺とキリトの向かい側に腰を下ろすとそう云った。
聴いておくべき?
という事は、コータも知っている事なのか?
「・・・コータは・・知ってるの?キリトが話そうとしてる事・・・」
「知ってるよ。俺も当事者の一人だから」
「え・・・?」
「・・・・お兄ぃ。話して」
まだ俺の気持ちの準備が出来ない間に
キリトが呼吸を置く。
目線を上に上げて
息を吸う。
一瞬の沈黙の後に。
真実が語られた。
***
その真実が
空に消えてしまえばと思った。
。○一言○。
ひゃー!もう何だか久し振りに小説書いたら意味の判らないものに…。
とりあえず終わりはまだ先です(苦笑)
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