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熱を出したり、治したり。
治したと思ったら、まだ出したり。
馬鹿なんじゃねぇの?
って本当思う。
37.5 V
「37.5分。しっかり熱出てるね」
「これは熱ではありませんッ」
「どこが?熱出てるじゃん」
「体温が高いだけですッ」
「それが熱だってーの!もうサッサとベット行くッ!」
「嫌だー!」
「嫌じゃないッ!!」
「俺は断じてベットには行かないからなッ!」
俺が病院から帰ってその数日後に今度はキリトが熱を出した。
熱を測ろうと云ったら、嫌だと文句垂れるし。
それでも押さえつけて熱を測らせたら、37.5分。
顔は熱いし、聞けば肌がピリピリするとの事。
こりゃ熱が上がってくるなと踏んで、ベットに行けと云ったら
またここでも大暴れし始めた。
ソファーにひっついて離れようとしない。
「何云ってんの!ちゃんとベット行って!」
「嫌だッ!!」
「何で?!」
「・・・・」
「何でそこで黙るんですか」
「・・・・・」
「何?何でベット嫌なの?ココだと身体しんどいでしょ?」
「・・・・・・・」
どうしてベットが嫌なのかと聞いてもその理由を云おうとはしない。
それどころかソファーに横になってうつぶせになってしまった。
「キーリートっ」
「ベットやだ」
「もー。ここで寝るの?」
そう聞いたらこくんと頷いてみせる。
一体何だって云うんだ。
とりあえず俺は、寝室からキリト用の枕と掛け布団を持ってきた。
「ハイ、枕と布団。頭上げて」
キリトの頭の下に枕を敷いてやって、布団を掛ける。
あと水枕だな、とその場を離れようとすると服の裾を掴まれた。
「ん?」
「どこ行くんだよ」
「へ?水枕取りに」
「そうか」
そう云って裾は離された。
何だ?と思いながらもとりあえず水枕を取りにキッチンに入る。
冷凍庫から水枕を出して、タオルを巻いて。
後でお粥も作ってやらなきゃ。
リビングに戻り、水枕も敷いてやった。
「気持ちい」
「そう。良かった」
さて今度はお粥だ、とまたその場を離れようとすると
また裾が掴まれた。
「どこ行くんだよ」
「お粥作ろうと思って。食べるでしょ?」
「いらない」
「え?食べないの?」
「いらない」
「そう?じゃあ薬・・・」
「いいからもうココに居ろよ。ウロウロすんな」
「えぇ?薬だけでも飲まないと・・・」
「いいからココに居ろッ」
「ぅはいッ」
お粥を、と云ったらいらないと云われ
その上薬まで拒まれた。
キリトはココに居ろと俺に云い付けて、俺は仕方なくその場に拘束される事になった。
今度は裾から手が離して貰えずに。
キリトが横になっているのでソファーには座れない。
仕方なく床に腰を下ろし、ソファーにもたれる形を取った。
裾を掴むキリトの手を取り、代わりに自分の手を握らせた。
「どーしたの?変だよあーた」
「・・・・」
「またダンマリ?何か云ってよ」
「・・・・・・・」
「云ってくんないと判らないよ?」
「・・・・・・・。・・・馬鹿」
「はぁ!?何で馬鹿扱いされなきゃなんないんすか!」
「お前の所為だ」
「何がぁ?」
「お前の所為でうつった・・・」
「あぁ風邪?」
「違う」
「何?」
「淋しがり癖」
「ぶッ」
何を云い出すのかと思えば、俺の所為で淋しがり癖がうつったそうだ。
っていうか淋しかったならそう云えばいいのに。
「何淋しいの?」
「そう。お前も病気ん時淋しがってた」
「あぁ。そういえば」
「それがうつった」
「ひゃー。あーたが淋しがるなんてねー」
「貴重だぞ」
「あーたが云いなさんな(笑)」
もそもそとソファーで動いて何をしているのかと思えばキリトは
ソファーを転がるように降りてきた。
「ちょっ!何してんの!」
くるくると起用に布団を身体に巻いて、ソファーを降りてくると
俺の膝に頭をちょこんと乗せて、キリトは床に横になった。
「こーら。上で寝てなきゃ駄目だっつーに」
「ココがいいんだよ」
「駄目だって。背中痛くなるよ?」
「布団巻いてるから平気」
「もー・・・。じゃあせめて水枕ぐらいはしてくれる?」
「やだ」
「本当何もかも否定するねあーた(笑)」
水枕を差し出すと嫌だと首を振られる。
本当に俺の云う事なんて何一つ聞いてくれやしないんだから。
「潤の膝枕がいい」
「俺はくすぐったいんだけどね」
「ぷにぷにだから」
「喧嘩売ってる?(笑)」
「いーからこうしてろ」
「はいはい」
自分の太ももにキリトの頭があって、そっと撫でるときゅっと身体を縮込ませる。
頭から伝わる熱が太ももに広がる。
あーこりゃ熱上がってきたかな。
「大丈夫?あーた大分熱いよ?」
「ん。平気」
「本当いい加減、ベット行かない?」
「嫌だ」
「ね、お願い。熱上がってきたら困るから」
「嫌だって」
「云う事聞いて」
「やだッ」
「もー・・・」
「・・・・・お前が・・・ずっと傍に居るなら・・・行く・・かも」
「何ソレ」
「俺がベット行ったらお前来ないじゃん。いつもリビングに居てばっかで」
「あぁ。それで嫌なの?ベットに行くのが」
「そう」
ベットを嫌がる理由がそんな些細な事だったなんて。
キリトは最近疲れている所為か、ベットに入る時間が早くて
寝付くまでは傍に居るものの、寝付けば俺はリビングに出てしまっていた。
起こさないようにとの配慮だったんだけど。
どうもそれが裏目に出てたみたいで。
本っ当、馬鹿だねあーた。
「ちゃんと傍に居るから」
「朝までだぞ」
「うん判った。だから行ってくれる?」
「じゃあ・・行く」
「よし。じゃあ俺水枕とか持っていくから先に行ってて?電気も消さなきゃだし」
「おう」
そういうとキリトは身体を起こし、布団を巻いたまま寝室へと入っていった。
俺は水枕とキリトの枕を抱えて、玄関が閉まっているのを確認して
電気を全部消して、寝室へと入った。
寝室の電気は消えていて、ドアを閉めると完全な闇だった。
大体の感覚でベットにたどり着き、手をポンポンと這わせると
すぐにキリトの身体とぶち当たった。
「はい、枕と水枕」
「うん」
手探りでキリトの頭の下に敷いてやって、俺は身体を踏まないようにベットに入る。
両足を突っ込んで、まだ完全に横になっても居ないうちから
キリトがちまちまと寄ってきて身体に抱きついてくる。
「そんなくっつかれたら寝にくいよ」
「我慢しろ」
「はいはい」
頭を撫でてようやく俺も横になる。
くっついてくる身体を抱きしめると、胸元でちっこく名前を呼ばれた。
「なぁに?呼んだ?」
「何でもない」
「何だそりゃ」
「潤」
「んー?」
「ぷにぷに」
「絶対喧嘩売ってるよねあーた(笑)」
「でも気持ちいい」
「そりゃ良かった。って喜べねぇ俺(笑)」
「大好き」
「わおッ」
「何だよそれ」
話の流れ的にそんなこと云われるなんて思ってもなくて。
大体普段からプライドの高いキリトが、好きだのどうだとのは
云ってくれるわけもなく。
ぽつんと云われた言葉に、びっくりして変な声が出た。
「や、あーたがそんなこと云うなんてなぁって」
「貴重だろ」
「貴重だねー。びっくりした」
「・・・なぁ」
「うん?」
「お前も云って」
「え?」
「云って。俺だけじゃん云ったの」
「あー。好きだよ。大好き」
「心がこもってないッ」
「えぇッ!?」
今度は俺にも云えと云い出し、俺はそういうと
キリトは心がこもってないと胸に頭をゴンゴンしてくる。
「こらこら。頭痛くなるから辞めて」
「痛くねぇよ。ぷにぷにだから」
「ぷにぷにって云うなもう(笑)」
「ちゃんと云えッ!」
「云ってるじゃん。好きだよって」
「もっかい」
「もー。好きだよ」
「もう一回」
「好きだ」
「もう一回・・」
「大好き」
「・・・・・・」
「満足?」
「満足・・・」
「なら良かった」
ふと胸元に視線を下ろすと、オデコが赤い。
ゴンゴン打ち付けた所為か、熱の所為か、それとも照れてるのか。
この位置からじゃよく判らない。
「いい加減寝ないと駄目だよあーた」
「うん」
「しんどいんじゃないの?」
「ちょっと」
「でしょ?凄い熱いもん。身体」
「寝る・・」
「うんそうして」
「逃げるなよ」
「逃げない逃げない」
「じゃあオヤスミ」
「ん、その前に顔上げて」
「え?」
「顔ちょっと上げて」
俺がそういうと、キリトはもぞもぞと顔を上げる。
そのオデコに軽くキスをした。
「はい。オヤスミ」
「・・・・」
「ん?」
オヤスミと頭を撫でたら、頬を真っ赤にしたキリトが
俺を睨みつけていた。
「・・・んな事すんな馬鹿・・」
「へ?いつもしてんじゃん」
「何時もはオデコじゃねぇだろ」
「あぁ。口がいいの?」
「そう」
「もー。我侭」
「いいからさっさとしろ」
「はいはい」
届かないからと思ってオデコにしたんだけど
どうやらそれすら不服だったらしい。
どれだけ我侭なんだよ、病人のクセに(笑)
唇を寄せてくるので、それにそっと唇を重ねる。
下唇を軽く吸い上げて音を立てて離してやると、今度は俺が頬にキスされた。
「オヤスミ」
「はい。オヤスミ」
キリトが眠るまで、一応体温にだけは注意して診ていた。
幸いそれから熱が上がることはなく、次の日の朝には熱も下がり
元気に御飯も食べられるようになっていた。
風邪のウイルスはそれで消滅させられたかに思えた。
しかしその数日後に
今度は家に遊びに来たアイジが何処からか風邪ウイルスを貰ってきていて
ちゃっかり家に撒き散らしてくれたおかげで
今度は二人で同時に寝込むハメになるのだった。
■一言■
えーっと続くに続いた「37.5」ですが今回で本当に最後です!!
もうよっぽどの事がない限り続きません…多分(苦笑)
何か続けてもいい雰囲気なんですけど…いい加減熱ネタもウザイかなぁなんて(苦笑)
やっぱり天邪鬼なお兄ちゃんが大好きです。
そしてそれを怒らずに「はいはい」と聞いてあげる潤君も理想…。
ドリームで御免なさい(苦笑)
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