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「死神の長にキスをされたら、死神になるんだよ」
THE TRUTH
第6章:「3つの道」
「ッはぁッ!!!!!」
俺は目を開けると同時に身体を起こした。
「はァッ・・・はッ・・・」
荒い呼吸を整えながら、首の後ろに手をやる。
途端に手がベットリと汗で濡れ、背中を冷たい汗が伝う。
辺りを見渡すと、其処は俺の部屋で、ただの闇。
うっすらと蛍光が示す時計の針は、3時半を刺していた。
『君に夢を見せてあげる。悪夢というサイコーの夢を』
タケオが俺の前に現れた日から3日。
あれ以来俺は毎晩のように夢に魘された。
ありえないぐらいの深い闇で一人にされて
段々と酸素を奪われ呼吸が出来なくなる。
ふと先に目をやると、一寸の灯りが見えて。
それに向かって走ってもちっともその灯りに手が届かない。
そのうち息が出来なくなって、喉を掻き毟って声とも云えない音が口からでる。
一寸先に灯りが見えているのに。
こんなにも手が届きそうなのに届かない。
そんな状況で、意識がなくなっていく夢。
それを毎晩毎晩見続けて、寝不足の所為か最近はちゃんと食事すら出来ていない。
目をつぶれば、また闇が訪れてあの夢に落とされる。
目を閉じたくないと、そう思っていた。
キリトはあの日以来、俺の前から姿を消した。
意識を取り戻した時にはすでに部屋には誰も居なくて
物が散乱しているだけの部屋に、俺だけが居た。
リビングにもフロにも何処にもキリトの姿は無い。
それどころか、キリトが使っていた衣服や食器や生活用品全てが消えていた。
探しても探してもどこにもそれはなくて
次の日には、キリトがこの部屋に居たという空気自体がなくなってしまった。
まるで始めから死神なんて存在しなかった事のように。
***
それからまた4日して、キリトが居なくなって7日目の朝が来た。
その日は朝から小雨がパラついていて、肌寒かった。
ベットから降りて、コーヒーでも飲もうとリビング出た時
チャイムが鳴った。
時計を見るとまだ朝の7時を過ぎたところ。
こんな時間に誰が?
まさか
俺はリビングから逸る気持ちを抑えながら玄関に向かう。
キリトが帰って来た?
イキオイよく、ドアを開けるとそこには
黒スーツの青年が立っていた。
「おはようございます」
「・・・・・誰?」
黒スーツの青年は、襟足の気持ち長い金髪に
鼻ピアスという容姿、身長は俺と変わらないぐらいだろうか。
「・・兄から伝言を」
「兄?」
「キリトです」
「え・・・?キリトの・・弟?」
「コータと云います」
コータと名乗るその青年はキリトの弟だという。
云われて見れば、目の辺りが似ていないでもない。
とりあえず俺はコータを家に上げた。
「何もないけど・・・」
「あ、お構いなく」
ソファーに座るコータにコーヒーを出すと
彼はペコリと頭を下げた。
「で・・・キリトからの伝言って・・」
「あ、それなんですけど・・・」
「うん」
「もう、ココには戻らないと」
「・・・・・ん」
「変わりに俺に貴方の事を任せると」
「君に?」
「はい」
「面倒って・・・俺別に面倒見られる程の事・・」
コータによると、キリトはもうココには戻らないらしい。
きっと、自分の所為だとか何かに責任を感じての事だろう。
コータはキリトの代わりに俺の面倒を見る為に
ココに来たという。
面倒なんて見られる程の事はないと俺が云い返そうとすると
コータはパッと視線を上げて俺を見つめる。
「・・・キスされませんでした?」
「え?」
「死神に」
「死神に・・・?」
そう云われて、頭にタケオからされたキスの事を思い出した。
黒いと感じた何かが自分の中に入っていく感触に
俺は軽い吐き気を覚える。
「死神の長にキスをされたら、死神になってしまうんですよ」
「ッ・・・え?」
「タケオは死神の長です。彼にキスをされた人間は必然的に死神になります」
タケオにキスされた人間が、死神になる・・・?
そんなの信じられるワケない。
「そッ・・・そんなの信じられるワケ・・」
「嘘ではありません。事実、貴方の瞳。赤くなり始めています」
「ッ!」
「ご自分で確かめては如何ですか?」
瞳が?
俺は信じられず、思わず洗面台へと走る。
そんなハズない。
俺は人間だ。
死神になんてなるハズ・・・・・
「嘘・・・だろ・・・」
洗面台の鏡に映る自分の瞳は
わずかに黒さを失い、赤みを帯びていた。
それは、茶色や栗色などでは云い表せない赤み。
「キスされてから一週間。翼が生えるのも時間の問題です」
「!」
声と共に背後にコータの姿が映る。
「俺ッ・・・本当に死神にッ・・・・?」
「このままではあと1週間もすれば完全な死神になります」
「ッ・・・・嘘だろ・・・」
「嘘かどうかは1週間後にハッキリしますよ」
「このまま死神になるのを待つしかないっていうのか・・・?」
「・・・方法はあります」
コータはそういうと、懐のポケットから黒い手帳を取り出した。
ペラペラとめくったあるページで手を止めて俺に目をやる。
「・・・方法は二つ」
「死神になる前に死ぬか、俺と契りを交わすかです」
死ぬか、コータと契りを交わす・・・・?
「どういう・・事だよ・・・」
「死神になる前に死ねば死神にはなりません。元々貴方は去年の2月に死ぬ予定でしたしね」
「ッ・・・・もう一つは・・・・?」
一つは容易に理解出来る。
元々俺は死ぬはずだった人間だ。
死神になる前に死ねば、死神にならなくても済む。
それはまだ理解出来る範囲だけど、もう一つは?
コータは一息置いて、パタンと手帳を閉じると懐にしまった。
そして俺の瞳に視線を合わせる。
「俺は御使いです。云わば死神とは逆の立場の者です」
「御使い・・・?」
「はい。死神になる前なら俺と契りを交わせば死神になる要素を散らす事が出来ます」
「契りって・・・・」
「貴方達の云い方だと、SEX・・ですか」
「君とッ・・・?」
「えぇ」
コータとSEXすれば・・俺は死神にならなくて済む?
「どうされますか?死にますか?俺と契りを交わしますか?それとも・・・」
選択肢は3つだ。
死神になる前に死ぬか
コータとSEXするか
それとも
「大人しく死神になりますか?」
死神になるか。
***
それから俺は、一つの道を選んだ。
死ぬ事は諦めた。
だって、あーたにもう一度逢いたいと思ったから。
死んでしまったらもう逢えない。
だから死ぬ事は真っ先に捨てた。
そして俺は残った二つの選択肢から一つを選んだ。
あーたが必死に守ってくれた事。
それは俺を殺さないで、そのままで居させてくれる事だった。
上司に反対して、傷つけられても必死に守ってくれた
俺の立場。
死神と人間。
そんな許されない二人の立場を
あーたは好きになって愛してくれた。
だから俺も、自分の立場を守ろう。
その夜。
俺はコータとSEXをして、普通の人間に戻った。
■一言■
というわけで久し振りの続きUPです。
何だか本当に意味の判らない話になってきました(苦笑)
最後までコータの位置には悩んだのですが、やっぱり天使側の者で落ち着かせました。
コータは天使側の者で「御使い(みつかい)」です。御使い(おつかい)じゃないです(笑)
位的にはキリトやアイジと同じで、勿論コータの上にはタケオさんと同じような天使の上司がおります。
問題はこの後、コータとキリトは兄弟なのにどうして真逆の立場にいるのか。
ここがミソ!味噌ッ!
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