無料-
出会い-
花-
キャッシング
自分ペース。
淡色。
俺は潤の事が好きだった。
大が前に6つ付くぐらい好きだった。
でも潤は男だ。
俺も、男だ。
世間一般論として、男が男に惚れるなんて
不潔だとか気持ち悪いだとかで白い目で見られるのは当たり前。
男が女を好きになって、女が男を好きになる。
男と女がくっついて、女と男がくっつく。
それが当たり前だ。
でも俺は、人とは違う自分の気持ちに気付いて
潤が好きだって確信した。
確信してから俺はどうにかしてその気持ちを伝えたいと思うようになった。
だけど、潤は勿論ノーマルで女が好きなワケで
俺が突然告白なんてしたら、軽蔑するに違いない。
何度か腹を括って云い掛けたが、拒否されるのが怖くて、
拒否されてお前に軽蔑されるぐらいなら
今のままの方がいい。と
気持ちを伝えられないまま、ずるずると月日だけが過ぎていった。
そんなある日。
俺はひょんな事からツアー中の遠征先のホテルで潤と同じ部屋に寝ることになった。
理由は俺の部屋に潤が来て、そのままココで寝ると云い出したからだった。
「どうする?もう寝る?」
「え?あーうん先寝ていいよ」
ベットに片足突っ込んで、俺はソファーでTVを見る潤にそう云った。
普段ならホテルの部屋に二人っきりでも、どって事ないのに
何だ今日のこの異常なまでの動悸は。
心臓が煩いぐらいにバクバク云ってて、手はちょっと震えている。
俺は、二人っきりのこの部屋で何を期待しているんだろう。
「明るいと寝れない」
「あぁ御免。じゃあ俺もベット入るね」
部屋の電気は煌々と付いていて、それに不服を漏らすと
潤はTV以外の電気を落として自分もベットに入った。
すぐ隣のベットに潤がいる。
たったそれだけの事なのに、何時もは右を向いて寝るのに
右に潤が居てそっちを向けなくて、
俺は左を向いていた。
「ねぇ?」
ふいに声を掛けられて、俺の心臓は飛び跳ねる。
多少は身体も上下していたかもしれない。
それを悟られないように、いつもと同じように俺は返事をした。
「ぁんだよ」
「んーと・・どうしようかな」
「何だよ」
「あー・・・・や、まぁいいや」
「自己完結すんなよ、後味悪ぃ」
「や、でもいいや御免」
「ったく・・」
声を掛けられた時に、驚きと共に何かを期待した。
二人の会話が途絶えて、部屋にTVの音だけが響く。
たまに潤が布団を動かす音が聞こえる程度。
何も無い事に俺は溜息を付いて、このまま寝てしまおうと目を閉じた。
その時また、
「ねぇ」
と声を掛けられた。
そしてまた小さな期待を持つ胸。
「だから何だよ」
「今から云う事・・・驚かないでね」
「だから何だっつーの」
「俺さ、アイジと付き合ってんの」
衝撃は2度だった。
潤が男と付き合っているという事。
そしてその相手がアイジだという事。
言葉は出なかった。
「びっくりするよね?やっぱり」
「あ・・・たり前だろ馬鹿」
「だよね。でもね」
「何だよ・・・」
「俺が好きなのはあーたなの」
「ッ!?」
思わず俺はベットから飛び起きて、潤に視線をやる。
きっと酷い面をしているハズ。
それでもこの時ばっかりは振り返らずにはいられなかった。
振り返った先に居た潤は、てっきりTVを見ているのだと思ったら
壁の方に向いていて、TVなんてちっとも見ちゃいなかった。
「どういう・・・事だよそれ・・」
「だから、俺が好きなのはあーた」
「違うッ!そうじゃなくてッ!!」
「アイジと付き合ってんのに、どうして俺が好きなのかって?」
「そう・・・」
「アイジも俺の事は好きじゃないんだ」
「は・・?」
「お互いの性欲処理っていうか。アイジはタケオ君と付き合ってんだけどさ
エッチもマンネリ化してくるしって。」
潤が何を云っているのか判らなかった。
性欲処理?
マンネリ化?
恋愛ってそんなもんなのか?
「俺はあーたが好きなんだ」
俺も好きだとは云えなかった。
「俺はッ・・お前がそんな馬鹿な事やってる間は相手にしねぇからなッ!」
そう云い返すのがやっとだった。
ベットにもぐりこんで、きゅっと丸くなると
何だか目頭が熱くなった。
自分の感情全部を打ち砕かれたようなそんな感じ。
「アイジとはもう辞めるよ。あーたが俺の傍に居てくれるなら」
「知らんッ!」
声を詰まらせないように、そう云い返す。
ベットのスプリングがきしむ音がして、身体が外に傾く。
潤が俺のベットに座ったからだった。
「あーたは・・?俺の事嫌い?気持ち悪いと思う?」
「嫌いッ」
「本当に嫌い?」
「嫌いだッ!!」
「俺は・・・あーたが好いてくれてると勝手に思い込んでるんだけど」
「ッ!ふざけんなッ!!」
何でお前にそんなこと云われなきゃいけないんだ。
確かに潤の事は好きだけど、だけどお前にそう云われる事が何だかムカついた。
何もかも見透かされているようで。
「好きなんでしょ?俺の事」
「好きじゃねぇよッ!自惚れんなッ!!」
「そう?じゃあ俺部屋戻るね」
「え?」
「嫌いな俺と同じ部屋で寝るなんてヤでしょ?じゃあオヤスミ」
突然の話の展開に頭がついていかない。
ベットの傾きが元に戻って、足跡が遠のく。
本当に出て行くつもりかよ。
テーブルに置かれた葉巻と携帯を手にする音。
足跡はそのままドアの方へ向かっていく。
カチャリとドアノブを下げる音がしてドアが開いた。
バタンッ。
重たい音がして。
部屋に静寂が流れる。
俺の呼吸以外は何も聞こえない。
「んだよ・・・本当に出て行きやがって・・」
ぽつりと呟いても、勿論返事なんて返ってこない。
「本気にすることないだろ・・・馬鹿潤・・」
音を立ててしまったドアがやけに重たく、冷たく感じて
淋しくなって
俺は思わず身体を飛び起こした。
「潤ッ」
ベットから裸足で降りて、ドアの方へと向かうと
そこには潤が居た。
壁に背を持たれかけさせて、驚きの色を見せる俺の顔を
口角を上げて笑って見ている姿。
「そんなに慌てなくてもいいでしょうに」
「ッ!!!お前ッ」
「馬鹿で悪かったね」
「ムカつくッ・・・・」
「淋しかった?」
「淋しくねぇよ馬鹿ッ!!!」
潤は背を壁からトンと突き放すと
暴れる俺を無理矢理抱きしめた。
ふんわり香った潤の匂い。
夢にまで見た潤の腕の中。
想像してた物とは全然違って、暖かいその腕の中にいると
嫌でも意識がトロリとなるのが判る。
遠のきそうになる意識を保って、俺は精一杯の抵抗をする。
でもそれは、差し支えのない程度。
抑えるつもりは無くても、そうさせてしまう自分の感情。
潤はその腕を掴んで自分の背中に回させる。
必然的に服を掴んでしまうと、潤が小さく耳元で笑った。
「ずっとこうしたかった」
耳元で呟かれた一言に、また目頭が熱くなる。
今度は悔しさとか辛さだとかそんなのじゃなくて、
自分がしたいと思う事が、潤と同じだったという事。
俺も気持ちのどこかで、潤にこうされたいと思ってたんだ。
「あーたが好きだ」
「ッ・・・・俺はお前なんてッ・・・」
「好きなくせに」
「好きじゃねぇよッ!」
「泣いてるくせに」
「泣いてねぇッ!!!!」
「はいはい、泣いちゃうぐらい俺が好きなんだよね」
「違うッ!!!」
「もういいから。黙って黙って」
お前が云わせてるんだろッ!?
って云い返そうとした刹那、潤の顔が近付いてくる。
思わず俺がバチッと目を閉じると、潤がまた笑った。
「そんな緊張しないでよ。キスするだけだから」
それが緊張するんだよ。なんて思ってる間に
潤の唇が触れた。
柔らかい唇が暫くそっと触れているだけの状態で
その間もずっと心臓はバクバクいっていた。
きっとそれは近くにいる潤にも聞こえているハズで。
下唇を軽く吸われて、俺が眉間に皺を寄せると
「可愛い」と息が唇に触れる距離で呟かれた。
「ふ・・ざけんな馬鹿ッ・・・」
「顔真っ赤(笑)」
「馬鹿野郎ッッ!!出て行けー!!!」
ドカンっとその身体を突き放すと
潤は壁に持たれたまま爆笑していた。
目に涙を浮かべて。
俺はと云うと、またベットにもぐりこんで熱い顔を手で被うしかなかった。
どうしてこうも全てがアイツペースなのか。
本当はもっと余裕があったハズなのに。
でもそんなのも悪くないと思う俺も居て
もう何がなんだか判らなかった。
それはきっと
アイツペースに俺が乗せられている所為に違いない。
手で被った顔は、その夜何時まで経っても冷める事はなく、
冷めかけた所でまたアイツペースに乗せられてしまうのでした。
■一言■
スランプ中に書くと大概いいものは出来ません。
本当にその通りだッ!
一体何がしたかったんでしょうか私は…(涙)
とりあえずお兄ちゃんの淡い気持ちを出したかったんですがまた撃沈…凹。
[PR]動画