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それは限りなく青い空の下で。
この青い空の下。
「うはーっ空が高いなー!」
スタジオで収録作業は今日で4日目に突入。
始めは意気込んでやっていたものの、
部屋に籠もりっきりで何日もっていうのは、いい加減息が詰まってくる。
息が詰まって、気持ちに余裕が無くなると
それは奏でる音にも影響を及ぼし、リーダーに睨まれるのがオチだ。
だから、息抜きに俺はいつも此処に来る。
スタジオの屋上。
鍵が開いているのは随分前から知っていた。
煙草と携帯だけを持って、春の柔らかい風の吹く此処に来るのが
毎度の事になっていた。
屋上のコンクリートの上に仰向けになって
空を見るのが大好きだった。
このビルはそこらの建物よりも高くて
仰向けになったら空しか見えない。
真っ青の空だけしか。
「みーっけ」
「うあッ!」
空だけが俺の視界に入ってるハズだったのに
突如その視界に、キリトの顔が割り込んでくる。
俺は思わず飛び起きた。
「何でッ!?何で此処だって判ったの!?」
「お前毎回此処に来てんだろ?俺が知らないとでも思うなよ」
「ちぇっ。俺だけの秘密の場所だったのに」
キリトはニンマリと笑みを浮かべると
ぷかぷかと煙草をふかした。
俺はまた背中をコンクリートに戻して
空を見上げる。
そのまま何も流れない時間が続いた。
お互い交わす言葉も無くて。
俺はただ空だけを見ていたし
キリトはただ煙草をふかして俺の横にいるだけだったから。
「あーたが抜けて平気なの?下」
俺がふと思いついた言葉を口にすると
キリトはむっとした表情で俺の視界にまた入ってくる。
「お前なぁ俺にだって休憩する時間ぐらいはあるんだよ」
「そりゃそうだけどさ」
「10分抜けてくるってちゃんと云ったよ」
「ならいいけど」
「お前こそ。今頃アイジが必死に探してんぞ?」
「どうにかなるよ」
「勝手だねぇ潤君はー」
そう嫌味を呟いて
キリトも俺の横に仰向けになった。
顔を横にチラリと向けたら
あーたが眩しそうに空を見ていた。
「こんなに眩しいのによく見てられんな」
「慣れてくるよ」
目を凝らして空を見るキリト。
暫くまた風の音だけになって
ぼんやり二人で空を見つめていたら
横のキリトが両手を空に掲げた。
「何してんの?」
「雲が掴めそうな気がした」
「へ?」
「でも無理だった」
「だははははははははッ。どーしたの急に」
「笑うな馬鹿ッ。本当に掴めそうな気がしたんだよッ!!」
「別に否定してないじゃん」
何をしているのかと思ったら
雲が掴めそうな気がした。だなんて。
あーたそんなにロマンチストだったっけ??
今も尚キリトは横で空に向かって手をニギニギしていた。
「あれ?あーた煙草は?」
「缶ん中」
「あぁ紅茶の缶の中か」
「ポイ捨てなんてしねぇよ」
「お見逸れしました」
「うむ」
「うむって(笑)」
「イチイチ煩いんだよお前ッ!空見てろ空ッ!!」
「見てる見てる」
そしたまた二人で空を見上げる。
もう一度視線をキリトに向けると、もう手は上がっていなくて
目も凝らしていなかった。
「おー慣れてきた」
「でしょ?空が高いねー」
「んー」
風がびゅうと吹いて
お互いの髪がなびく。
風に目をつむったあーたの顔が
ヤケに愛しく感じて
俺は身体を起こし
その唇に口付けた。
「好きな人いる?」
「・・・お前順番が違うだろうが」
「御免。つい」
「ついって」
抵抗は無く
すんなり唇を奪えた事に驚く俺を尻目に
キリトは身体を起こし、唇を軽く指の腹で撫でた。
あ。嫌そうだな、なんか。
そりゃそうか。
男からキスされても嬉しくはないよな。
俺はまたゴロリと身体を床に戻し眼を閉じた。
目を閉じても視界の先は明るい。
「お前はどうなんだよ」
「ふぇ?」
突然声を掛けられて、俺は身体を起こした。
視界の先にはあーたが唇に手を置いたままこちらを見ている姿があった。
「好きな奴いるのかって」
「あー・・・。居るには居る」
「誰?」
「や、気付いてよ(苦笑)」
「あぁ俺か」
「じゃなきゃキスしたりしないよ」
「そうか」
眉間に軽く皺を寄せて
唇を被う手を解いた。
そんなに嫌だったんだ。
「御免。いきなりキスして」
「あぁ平気」
平気そうじゃないじゃん。
「でもしたいと思ったからした」
「ん」
「俺、あーたが好きだよ」
「俺も」
耳を疑った。
「は?」
「何?」
「や、ちょっと待って?誰が誰を好きだって?」
「いやだから、お前が俺を好きなんだろ?」
「うんそれはそうだけど・・・その後だよ俺が聞きたいのは」
「俺もお前が好きだ」
「嘘・・・」
「嘘じゃねぇよ」
だってあーた今、嫌そうに・・・
「キスしたら嫌そうな顔したじゃん!」
「してねぇよ」
「してたよ!」
「違うよ。先にやられて悔しいだけ」
「そう・・・なの?」
「そう」
あんな顔するから俺はてっきり嫌がられてるのかと思ったのに。
どうも違うらしい。
俺が先にキスした事が悔しいだのどうの。
そう思うと
肩の力が抜けて、俺はまた床へ逆戻り。
「あー何かほっとしたー」
「何?フラれたと思った?」
「当たり前じゃんっ。あんな顔されちゃ」
「じゃあお詫び」
そして二度目のキス。
今度はキリトからだった。
触れるだけのキスをして、唇が離される瞬間に
ペロリと唇を舐められた。
俺が慌てて口を手で被うと
口角を上げて「顔赤いぞ」と云い放った。
これじゃ
俺から仕掛けたのに意味がない。
何時の間にかまたあーたのペースだ。
「あー空が青いなー。ちくしょー!」
「畜生って(笑)」
それから二人でまた空を眺めて
煙草をふかして
手を繋いで
何度目かのキスをした。
この青い空の下
俺たちの関係が変わる。
■一言■
何か、突然こういうのを書きたい衝動に駆られて(笑)
何ていうかなーこういう結構意味の無い話が好きだったりします。
書くお話全部を「白」のイメージで書いてるんですが、それを押し出しまくりたかった。
でもまた撃沈した…凹。
くそー!文才が欲しいー!!!!!!
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