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もしも
自分の好きな人がミニマムになったら?
ミニマム大作戦。
「なッッ!!!あーた何その格好ッッッ!!!!」
「知らんッ」
俺がソロの仕事を終えて家に帰ると
ソファーにキリトの黒髪が見えた。
あぁ来てたんだ。
そう思って後ろから抱きしめると
ヤケにその身体が小さく感じて・・・。
おっかしいなぁとその姿を目の当たりにして
俺は夢でも見てるのかと思った。
「何でそんなちっちゃいの!??!」
「だから知らんッ」
俺が目の当たりにしたその姿は、
いつもより一回りも二回りも小さいあーた。
まるで子供。
いや、目の前に居るのは子供だった。
でもどうみてもその姿はキリトで、
もともとのキリトをそのまま子供体型にした感じだった。
ようするにミニマム化。
「どどどどどどーしたの!?何ッ!?何かしたの!?」
「・・・多分アレ」
そう云ってキリトが指指したのは、テーブルに置かれた小さな小瓶。
「何あれ?」
「タケオがくれた薬」
「はぁ?!何ソレ!?」
「風邪気味だって云ったらアレくれて。それ飲んで寝て起きたら小さくなってた」
っていうかタケオ君に貰った薬なんて信用すんなよッ!(酷)
と思ったけど、すでに飲んでしまった後。
どうする事も出来やしない。
どうしようどうしようと慌てふためく俺とは違い
当の本人はソファーでいつものように分厚い本を読んでいた。
「ってかさ・・・何でそんな落ち着いてんの?」
「だって解決方法見つからないし、慌てたって仕方ねぇだろ」
御尤も。
ってそうじゃなくって。
「いやでも一生そのままだったらどうすんの!?」
「んなわけないだろ多分。どうせすぐ元に戻るよ」
そう云ってまた本に視線を戻す。
確かに慌てたって仕方ないけどさ。
もう少し何かないの?
俺はキリトの横に腰を下ろし顔を覗き込む。
うあー
本当子供だ。
「とりあえず・・明日の朝になっても戻らなかったら何か対策考えないとね」
「んー」
本当に話を聞いてるのかどうか。
生返事しか返ってきやしない。
そっとその頭を撫でると、髪質まで子供みたいに柔らかかった。
「髪もやらかいなー」
「ん」
「とりあえずあーたその服どうにかしないと」
ふと服に目をやると、キリトはだぼだぼのズボンと
ぶかぶかのシャツを着ていた。
そりゃそうだ。子供服なんてウチにはありゃしない。
「いいよもう寝るだけだし」
「じゃあとりあえずパジャマ取ってくるから着替えなよ」
俺は引き出しからパジャマを取り出し、キリトに渡す。
そのパジャマはいつもキリトが着ているもので、デカイだろうなぁとは思っていた。
キリトはそれを受け取ると、ちっこい手でボタンを外し
もぞもぞと着替え始める。
着替え終えたその姿は、見事にパジャマに埋もれてしまっている。
ズボンの裾は綺麗に踏んでいるし、袖もありえないぐらい長い。
あーやっぱりデカイ。
「やっぱり大きいね」
「仕方ねぇよ。我慢する」
「んー・・・待ってコッチは?」
俺はもう一つのパジャマを引き出しから出し差し出した。
それは、夏用で半袖半ズボンのパジャマ。
ちなみに俺の夏の愛用品。
面倒だとかどうとか云いながらも、またもぞもぞと着替え始めて
着てみたら意外にピッタリ。
半袖半ズボンで丈は十分だった。
肩幅とかがデカイのは仕方ないし。
ウエストはゴムだから大丈夫。
「これでいけるかな」
「うん」
「じゃあベット行ってて?俺も着替えたら行くから」
「あぁ」
ソファーに本を置いて、キリトはとてとてと寝室へと入っていった。
何がって、ドアノブに背伸びして手を掛けている姿がヤケに可愛い。
キリトの子供時代はあんなのだったのかと思うと何だか可笑しかった。
そう思いながら俺もパジャマに着替える。
風呂は・・・・明日でいいか。
寝室に入ると、電気はついてなくて
ベットには何時もより小さい影が横になっていた。
キリトの隣に自分も身体を横たえる。
するとチマチマといつものようにキリトが寄ってきた。
「ちっちゃい身体だなぁホントに・・・」
寄ってきた身体を抱きしめると、自分の腕の中にいつも以上にスッポリ納まる。
頭を撫でるときゅっと胸にしがみついて顔を摺り寄せた。
「潤・・・」
「ん?」
「もし俺が元に戻らなかったらどうする?」
「え?心配ないって云ったのあーたじゃん」
「そう・・だけどさ」
何だ。
実は結構不安だったんじゃない?
「心配しなくても大丈夫だって。元に戻るよ」
「もし・・・戻らなかったら?」
「戻らなかったらねぇ・・・」
「別れる・・・?」
「へ?何で?」
「え・・・・だって・・小さいし俺・・・」
「や、小さくてもあーたはあーたでしょ?別れたりしないよ」
「でもエッチ出来ないかも・・・」
「あーうん我慢します」
「ホント?」
「自信ないけど我慢する(笑)」
「・・・・・よかった」
ポツリとそう呟いてまたキリトは俺の胸にスリスリと顔を摺り寄せる。
あー
云ってる傍からスリスリされるとね・・・・。
「キリト、あんまりスリスリされると反応するからさ」
「あ・・・あぁ御免」
俺の言葉にほんのり頬を赤らめて、キリトは俺から身体を離した。
仰向けになって、布団の端をぎゅっと握る。
その手も小さい。
「・・・・・」
「どうしたの?」
俺から離れたキリトはぼーっと天井を見ているだけで
一向に寝ようとはしなかった。
「ううん・・何でもない」
「別に離れなくてもいいよ?我慢するし」
「や・・・いい」
「淋しいんじゃないの?」
「・・・・・・・」
「どーしたのあーた。身体がちっこくなったら急に淋しがりになったりして」
俺がそう云って、軽い身体を抱き寄せると
ちっこく「御免」とだけ聞こえて俺に擦り寄った。
何なんだ一体。
本当淋しいがりの塊みたいになっちゃって。
不安なんだろうなぁ多分。
「不安?」
「・・・ちょっと」
「嘘。スゲェ不安な癖に」
「んな事ねぇよ」
「大丈夫だよ、朝になれば元に戻ってるから」
どうせタケオ君の薬だし、長続きはしないだろう。
そう俺が確信している横で、キリトは不安そうに目をつぶっている。
ありゃ。
本当に不安そうだな。
「大丈夫あーた。そんなに不安なの?」
「違う」
「え?」
「電気・・・」
「電気?」
「怖いから付けて」
「怖い?電気が?」
「暗いの嫌だ」
「あーたいっつも消してって云うじゃん」
「でも今は嫌なの」
そういや、子供って電気消すと怖いって云うよなぁと思い
俺はベットサイドに置いていたリモコンで電気を付けた。
部屋を蛍光灯が明るく照らす。
「これでいい?」
「うん」
「あーた、本当に子供になっちゃってるじゃん。感性まで」
「そう?」
「うんだって、暗いトコ怖いとか今まで云わなかったじゃん」
「・・・なんか怖いと思ったんだよ」
「いやまぁ別にいいけどね?」
改めてその身体を抱きしめる。
ちっこい足は俺の足の間に挟んで温めてやった。
「潤」
「はいはい?」
「顔寄せろ」
「顔?」
「届かないから顔寄せて」
「何なに?」
俺より幾分か下にいるキリトは届かないから顔を寄せろと云う。
云われる通り、俺が顔をキリトに寄せると
唇に小さな唇がそっと触れた。
「オヤスミ」
「ん。オヤスミ」
あぁオヤスミのちゅうか。
と思って普通に返事したけど・・・・。
何だろね、何時もと違う所為か何なのか・・・・
今の行動一つに萌えた俺って結構ヤバイ?(苦笑)
「エッチはしないからな」
「何で判ったのあーた・・・」
俺がふとそんな事を考えていると、胸元でポツリとそんな声が聞こえる。
何で判ったんだ?(笑)
「お前の考えそうな事だもん。我慢しろ」
「してるしてる。あーたが戻ったら十分やらせて頂きます」
「戻るのが怖いな」
「や、戻って戻って」
そんなたわいも無い話をしてる間にキリトの返事が聞こえなくなり
変わりに規則的な寝息が聞こえてきた。
「寝ちゃったかな」
そっとキリトに視線を向けると、俺のパジャマをぎゅっと掴んで丸くなって寝ている。
あー、何かイケナイ事してるみたいに感じるんだけどなぁ(苦笑)
その頭をぽんぽんと撫でてパジャマを掴む手をそっと離す。
眉間に皺を寄せつつも、暫くするとまた規則的な寝息を立て出したのを確認して
俺はベットから下り寝室を出た。
リビングに出て、携帯を取りソファーに腰を下ろす。
勿論、携帯はあの人に電話する為だ。
電話帳から番号を検索し通話ボタンを押す。
何回目かのコールで相手が出た。
『もしもし?』
「タケオ君?」
『おぉ潤。どしたー?』
「どうしたじゃないよ。キリトに渡したあの薬何?」
『へ?薬?』
「そう。風邪薬とか云って渡した小瓶に入った薬」
『あぁアレ?ただの風邪薬だよ』
「ただの風邪薬があんな怪しい小瓶に入ってるかっつーの!」
タケオ君と通話しながら、俺はテーブルの小瓶にチラリと目をやる。
紫色の禍々しい小瓶。丁寧にピンク色のリボンが結ばれている。
っていうかキリトもあんな怪しい瓶の中身を疑いなく飲むなよなぁ(汗)
『いやーでも楽しいだろ?』
「楽しくないッ!」
『小さくなってんだろ?キリト』
「なってるよ見事に。子供だよありゃ」
『何かね、DNAの並びをちょこっと狂わせる薬らしくてね。一時的に小さくなるんだよ』
「どっからそんなもん手に入れてくるんだよ・・・」
『秘密♪』
秘密。と云ったタケオ君の語尾に音符がついているのが
声だけで判る。駄目だこの人楽しそうだ。
「とりあえず害のあるもんじゃないんでしょ?」
『あぁそれは全然平気。飲んだの何時ぐらい?』
「判らないけど・・・俺が帰ったら小さくなってて・・・寝て起きたら小さかったとかどうとか」
『あぁじゃあ時間的に朝には元に戻ると思うから』
「あー・・・ならよかった」
『何?元に戻らないと思った?』
「俺じゃなくてキリトがね。凄い不安そうなんだもん」
『へー感性まで幼児化してんのな』
「関心してる場合じゃないよ!」
『でも小さいキリトにちょっとはムラっと来たんじゃねぇの?』
「いやまぁ・・ちょっとは・・・」
『だろ?そりゃそうだよねぇ』
「とにかくッ!もう変な物渡さないでよキリトに!」
『はいはい』
「じゃあそれだけだから」
『あいよ。オヤスミー。楽しんでねー』
「楽しむかッッ!!」
携帯の向こうでタケオ君がケラケラ笑っていたが
もう付き合い切れないので一方的に電話を切ってやった。
っていうか・・・・
本当ドコであんなもん仕入れてくるんだよ。
怖いなぁもう。
そんなこんなで結局朝にはキリトの身体は元のサイズに戻り、
キリトもその日の夜からは何時のように、電気を消して寝るようになった。
一時的なもんだからよかったけど・・・・
さすがにこれがずっとだったら参ってたかもなぁ。
キリトには我慢するとか云ったけど・・・・事実そんな自信はありゃしない(苦笑)
でもまぁ元に戻ってよかった。
なんて思っていたら
三日後。
キリトが紫色にピンク色のリボンの巻かれたダンボール箱を抱えて帰ってきた。
勿論それには
禍々しい紫色の瓶が沢山。
そしてそれにタケオ君直筆のカードが添えられていた。
『夜のお供に。楽しんでね♪ タケオ』
タケオ君?
本当に俺の話聞いてた??
■一言■
兄やんが小さくなるのを書きたくて書いてみました。
幼児化するとちょっとは素直になるかと思ったら…
幼児化しても私の書く兄やんは天邪鬼でした(苦笑)
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