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どこかに忘れてきた小さな出来事は
何時しか完全に闇へと消えてしまうだろう。
vanish
第2話:「近付くもの」
「何でこんなとこにティッシュがあるんだ?」
確かに昨日までベットサイドに置いてたハズなのに。
誰が持ってきたんだ?ココに。
「俺持ってきてないよ・・・なぁ」
「潤ー・・・水ー・・・」
「あっ?あぁはいはいッ」
足で軽く蹴ったティッシュの箱。
どうしてあんなとこに転がっているのか俺には判らなかった。
疑問に頭を捻らせていたらキリトに呼ばれたので
ティッシュの箱を拾い上げ寝室へと戻った。
「あーた昨日コレ、アッチに持っていった?」
「んぁ・・・?」
「コレ」
「持っていった。・・・ってかお前見てたじゃんそれ」
「へ?そうだっけ?」
「覚えてないのかよ」
「全然。いつの間に持ってったの?」
「エッチしようと思ってアッチに持って行った」
「あれー?ホント?記憶にないや」
「・・・もうボケが始まってんのか?」
「失礼だよあーたソレ」
聞けば、向こうに持っていったのはキリトで
それを俺も見ていたとのこと。
全然記憶にないんだけどなぁ・・・・。
「まぁいいか。はい、水」
「んー・・」
まぁ何かしらしてて大方忘れているだけだろうと気にも留めず
俺はキリトにボルヴィックを渡した。
「あーた早く起きて準備してよ?遅れるから」
「やだ」
「やだって・・・・」
「やだ」
「我侭云っても駄目。仕事なんだから」
「そんな潤君に質問です」
「イキナリだなオイ(笑)」
「今ココで俺とエッチするのと、仕事先でエッチするのとドッチがいいですか?」
「どっちにしろエッチするんですか(笑)」
本当この人だけはどうしようもない。
何でこんなに盛ってんのかも判らない。
「ドッチ?」
「いや下に車来るから」
「じゃあ仕事先?」
「それはそれでマズイでしょうに」
「じゃあココで決定だな。しよ」
「あーた俺の話聞いてる?(苦笑)」
キリトはそういうと、俺を引き寄せ首に腕を絡めてくる。
そのままベットへと引き込まれて逆戻り。
「車来るからホントに」
「あとどれぐらいで?」
「5分か・・・10分ぐらい?」
「じゃあ10分で終わらそう」
「無茶苦茶云ってくれるねあーた・・」
「いーから早くしろ」
「ったく・・・立てなくなっても知らないからね俺」
「いーからいーから」
「そう云って何時も怒るクセに・・・・」
何だかんだ云っても結局は折れてしまう俺も俺だ。
10分でとか到底終わるわけもなくて
結局は遅刻決定。
あぁまた怒られる・・・・。
「なぁ何か変わった事したい」
「変わったこと?」
白い首筋に唇を這わせていると
上からそう云われた。
「何時も一緒じゃん。刺激がない」
「あーたねぇ・・・10分で済ますんでしょうに。無理だよ」
「無理じゃない」
「じゃあどうすんの?」
「俺が上になってやる」
「へー!珍しい!」
「やっぱ辞めた」
「ドッチ!?」
「嘘。上になってやるよ」
何だかよく判らない間に
キリトが上になることになって・・・
何時もは「しんどい」たら「疲れる」だとか文句垂れるんだけど。
それならエッチしなきゃいいじゃん。
ってのは云わないでやって下さい(笑)
結局それからもうワンラウンドやって
遅刻は免れない状態。
事を終えたキリトがすぐに動くわけもなくて
すぐに向かうからと迎えに電話をかける俺が居た。
あぁ何やってんだ俺ーッ。
***
そして遅れて仕事場に二人して到着。
新年早々遅れるなんて。
ってマネに厳重注意受けて、他のメンバーからは「お盛んですね」なんて嫌味。
あぁもう正月から散々ッ!
とりあえず今日は打ち合わせだけだから
早く家に帰ろう。
そう思いながらイスに腰を下ろして、葉巻に火をつけた。
「潤君ーコレ」
そう云って俺の横に腰を掛けたのはコータ。
手には幾つかのCD。
「おうコータ。って、何そのCD」
「何って・・・潤君がずっと貸せって云ってたんでしょーが」
「ふえ?俺が??」
「忘れたなんて云わせねぇぞー!散々貸せって云ってたクセに!」
「ちょちょっ・・・俺そんな事云った?」
「マジかよ潤君ッ!」
「や、悪りぃ覚えてない」
「マジで??」
「うん全然」
CDを善く見ると、確かにその全ては俺が聞きたいと思ってた曲ばっかで。
でもコータが云うように催促した覚えなんてないし。
寧ろコータがそのCDを持ってる事も俺は知らなかった。
「ふーん・・まぁド忘れしてるだけじゃない?とりあえず貸すね」
そう云ってコータはCDをテーブルに置きその場を去った。
にしても
本当に俺が何度も催促していたんだろうか?
あのコータの云い方に嘘があるとは思えない。
何時だ?
俺は何時・・・
「潤じゅーんッ!」
「うあっ!」
記憶を辿っていたら
背後からアイジに抱きつかれる。
お前ゴツゴツしてて本当肩とか痛いんだけど・・・
「ぁんだよアイジ」
「今晩楽しみだねー」
「へ?何が??」
「あー!!ひっでぇ!!俺と約束したじゃんッッ!!」
「約束?」
今度は一体なんだっていうんだ。
「今晩仕事の後、初詣行くって約束したじゃん!!!」
「初詣ぇ?」
アイジ曰く、俺はこの仕事の後
初詣に行く約束をしていたらしい。
が、事実家に帰りたいと思っていた俺は
そんな約束なんてした覚えすらない。
「年末の仕事納めん時に約束しただろー!?」
「したっけ・・・?」
「したー!!!」
「マジで・・・?悪ぃアイジ、穴埋めは絶対するから今日は・・・」
「何?具合でも悪いの潤じゅん」
そう云ってアイジが自分と俺のおでこに手を当て
「熱はないなぁ」なんて云ってみせる。
「いやそういうわけじゃないんだけど」
「うんまぁ俺は別に構わないけど?どうせ元旦は人多いしなー。次は忘れんなよ!!」
「わーったよ」
しかし本当さっきから何なんだ。
ティッシュの箱の事といい、CDの事に初詣の約束。
どれもこれも記憶にはない。
寧ろ何だか
大事な事をどんどん忘れていっているような錯覚に捕らわれる。
疲れてんのかなー
なんて勝手に自己完結して、大して気にはしない事にした。
やがて打ち合わせが始まって、元旦だしという事でいつもより手短に済ませ
解散の時間になった。
俺はコートと鞄を持って、控え室を出ようとする。
それをキリトに静止された。
「どうしたの?キリト」
「今日もお前んち行く」
「来るの?おっけ。車回して待ってる」
「おう」
キリトが今夜もウチに来るという事で
俺は急いで車を回しに云った。
車をビル前に止めて、5分程してキリトが出てくる。
寒い寒いと車に乗り込んだキリトは
暖房を強にした。
「さびーマジで」
「暖房もうすぐ効いてくるからね」
「おう。あ、そうだ」
「ん?」
車を交差点に向かって走らせる。
時間は昼過ぎにも関わらず、車通りも人通りも少ないところを見ると
やっぱり元旦なんだなーなんて思わされる。
「お前なんかド忘れしてんだって?」
「あーうん。何かねー」
「何?ボケ?」
「失礼だよあーた(笑)この歳でボケが始まったらヤバイでしょ」
「まぁな」
「ド忘れっていうか、元々そんな事記憶にないっていうか」
「ふぅん」
「まぁどうせただのド忘れかなんかだろうけど」
「ならいいけどー」
「何?何かあんの??」
「コータの約束とか、アイジの約束とか忘れんのはいいけど」
「いいのかよ(笑)」
「けど、俺との約束を忘れたらぶっ殺ーす」
「判ってますよ。忘れないから平気平気」
「本当かよ」
「信用してよ(笑)」
そんな話をしている間に、車内は暖房で暖まってきた。
「あー」
「今度は何?」
「なーんか、したくなったなぁ」
「や、意味判んないからね(笑)」
「車どっかで止めて」
「へ?」
「どこでもいいから止めて」
いきなり何を云い出すのかと思ったら
車をどこかに止めろと云う。
どこかって云われても・・・・・
キョロキョロを辺りを見回しても止められるような所はない。
「無理だよこんなとこじゃ」
「無理じゃないッ」
「無茶云うなぁ本当」
とりあえず目についた有料駐車場に車を入れる。
正月で、全然人の通らない筋。
駐車場になんて誰も車を止めちゃいなかった。
「はい、止めましたけど?」
「うっし。じゃあしよう」
「何を?」
「セーックス」
「ぶはッッ」
「イチイチ噴出すな馬鹿」
「だだだだって」
「どもるな」
「イキナリ何云うのかと思ったら!あんだけ年越しにしたじゃん」
「っさい。俺は今したいの。年越しはもう過去の事なの」
「さようですか」
「だからしよう」
「ココで?」
「何の為に車止めたんだよ馬鹿潤」
あぁそういう意味で「したくなった」って云い出したのね。
一体なんでこんなに盛ってんだ本当。
とりあえず俺はキリトと自分のシートベルトを外し
キリトのシートを倒した。
「狭いなぁ」
「文句云うな!」
「家に帰れば広々と出来んのに」
「ココでがいいんだよ。ったく・・・・仕方ねぇなぁ」
キリトはそう云うと、俺のシートを軽く倒し
俺の上に向かい合わせになるように跨ってきた。
「これなら文句ねぇだろ」
「あーたが辛いよ?」
「いいよ、俺から誘ってんだし」
「ふえー。素直だねぇ本当」
「俺は何時でも素直だ」
「そりゃ嘘だ(笑)」
「もういいからさっさとしろよ」
「はいはい」
上着を脱いで、キリトが俺に抱き付いてきた。
その背中をなでなでして、首筋に唇を這わせと
ぴくんと身体が上に反応して、肩をきゅうと掴んでくる。
「ねぇ」
「ん」
「次の雑誌撮影何時だっけ?」
「んだよ急に」
「何時?」
「・・・4日後・・だったハズ」
「4日か・・・じゃあいいね。痕つけるよ?」
キリトの了承を得る前に、その白い首筋に軽く歯を立てた。
肩を掴む手に益々力が籠もって、俺の首筋で小さな声が聞こえる。
「痛い?」
「っ・・・ん平気」
「じゃあもう少し我慢してね」
それから首筋に幾つか痕を残して
鎖骨にも鬱血するぐらいの痕を残してやった。
撮影日聞いたけど・・・これ4日じゃ消えねぇな多分(苦笑)
「潤。お前にも付けてやる」
「ぅえ?俺はいいよ」
「駄ー目。人に散々付けといてそれはないだろ?うらッ脱げ」
「やだ寒い」
「お前なぁ・・俺はシャツ1枚なんだぞ!?お前だけコート着てんじゃねぇよ!!脱げッ!」
「あーたが脱がしてよ」
「はぁ?」
「あーたが脱がして」
俺の言葉にキリトが小さく舌打ちするのが聞こえた。
でもしぶしぶでも俺のコートを脱がし始めるあーたがやっぱり愛しいと思った。
コートを後部座席に放り投げて
ジャケットを脱ぐと、俺もいよいよシャツ1枚。
暖房ガンガンの車ん中は寧ろ熱いぐらい。
キリトはシャツを開襟して、俺の首筋に唇を寄せてきた。
ほんのり暖かい唇が肌に触れる。
あー何か気持ちいい。
と思ってると、キリッと肌を噛まれる。
いててててててて。
「痛い痛い」
「お前は何時も俺にこんだけ痛い事してんだよ」
「えー。俺そこまで噛んでないから」
「噛んでる!見ろコレだってクッキリ歯形残ってんだろッ!」
おら見ろっと今付けたばかりの後を見せてくる。
確かにキリトの鎖骨には鬱血した歯形の後がクッキリ。
「何時もはそこまで噛まないもん」
「噛んでる!」
「あーほら、俺も鬱血してきたじゃん」
ミラー越しに首筋を見ると、そこには赤黒い痕が。
地味に歯形付いてるし。
「お前が物忘れしてるっていうからなっ」
「?」
「そんだけ痕残しときゃ忘れねぇだろ」
「ぷ」
「何笑ってんだお前(怒)」
「いやいや、可愛い事するなぁと思って」
「っさい。忘れたら許さねぇからな」
「はいはい」
どうやら俺があーたを忘れない為の痕残しだったらしい。
んな事しなくても、あーたの事忘れたりしないのに。
それから車で1ラウンドやって、
ベタベタして気持ち悪いと、自分から誘っておいて文句を云うキリトを家に連れて帰った。
■一言■
2話目ようやくUP出来ました。
潤君の記憶のお話なんですが、ちょっとずつその記憶に歪みが。
今後この歪みがドコに響いていくのかが問題です。
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