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「あーた、俺がいなくなったら悲しい?」
「んなわけねーだろ、バーカっ」
「だよね」
■■■雨■■■
雨ばっかり降ってちっとも晴れない。
雨が降り続いて今日で3日目。
俺がキリトの家に居ついてもう3日目。
帰ろうかと思ったら、雨が降って結局帰れなかった。
っていうか帰らなかった。
「はーいお茶」
「さんきゅ」
俺からお茶の入ったカップを受け取り、読んでいた本に再び目を落とす。
しとしとしとしと
外では雨が止みそうになくて
TVさえついていないこの部屋に酷くその雨音は響いた。
本ばっかり見ててちっともこっちを見ようとしない。
話すのは俺ばっかりで
「ああ」とか「うん」とか「そうだな」とかそんな返事しか返ってこない。
帰ろうかな。
テーブルにカップを置いて、席を立った。
チェアにかけていた上着を取って玄関に向かう。
その俺の腕をキリトが掴んだ。
「帰るのかよ」
「だってあーた、本読んでるんでしょ?」
「読んでる…けどさ」
「俺居たって仕方ないじゃん」
「いいから。いいからここに居ろよ。雨・・・なんだし」
じゃあもし雨じゃなかったら。
あーた
何て言って俺をとめてた?
結局ここに居座ることになり
俺を引き止めたキリトはまた本を読み始めた。
ザザザザザザザザザー
次第に雨足は強まって
窓から先が見えないぐらいに降ってきた。
さっきより更に雨音が部屋に響く。
大きくなればなるほど
2人の間の沈黙も大きくなった。
「ねぇ」
「あーた、俺がいなくなったら悲しい?」
そんな言葉を投げかけたら
やっとこっちを向いてくれた
「お前何言ってんの?」
「俺がいなくなったら悲しいかって聞いてんだけど」
「んなわけねーだろ、バーカっ」
「そういってくれると思った」
そうしてまた沈黙。
黙々と本を読んで、俺の方を見ないあーた。
あ、こっち見た。
「じゃあさ」
「お前はどうなんだよ。俺がいなくなったら悲しいのか?」
そうくると思ったよ。
俺が聞いた後に絶対聞き返してくると思った。
でもさ、「悲しいのか?」って聞かれたら 嫌でも「悲しくない」って
言わなきゃいけない気がするでしょ?
それが魂胆だってわかってる。
悲しくない
って言わせたいんでしょ?
そんなあーたがにくいよ。
「俺はー」
「悲しいよ?」
「何だよソレ」
口角の端であざ笑うキリト。
俺の横へ腰掛けて軽く口付けた。
外の雨は止む気配も無く
降り続いたまま
「俺がもしいなかったら。あーた誰とこうしてた?」
「あぁん?」
暖かいベッドの上で、煙草に火をつけた。
横でキリトが「この上何言ってんだ」って顔で見上げてくる。
「俺がいなかったら誰としてた?」
「知るかよそんなの」
「アイジ?」
「タケオ?」
「それともコー・・・」
あーたはいつもそう。
都合が悪いと
その唇で言葉を濁す。
「っ・・・またそうやって・・・それで口塞いだつもり?」
「悪いかよ」
ふいっとふてくされた顔で俺に背を向けて、黙ってしまった。
背中に残る赤い痕。
そっと指でなぞると、嫌がって更にベッドの端へ行ってしまった。
ってかさこのベッド広いよ。
タダでさえ何もない部屋なのに
余計広く感じてなんかイヤだ。
あーたが遠い気がして。
特にこんな雨の日は
雨音が部屋にイヤに響いて 部屋が広く感じる。
もっと近くにいて。
煙草を灰皿に押し付けて
抱きしめた体はさっきまで熱いぐらいだったのに
ひんやり冷たくて
これも雨のせいかな。
「ねぇ。本当に俺がいなくなっても悲しくないの?」
卑怯者。
こんな言い方したら、あーたが否定できないの分かってた。
もちろん 確信犯。
「悲しいよ」
「だよね」
そういってくれると思ってた。
雨は止まないまま
世の中の汚いものも 嫌なものも 悲しいことも
全部洗い流していった。
そう。
悲しいことも全部。
■一言■
シリアス書きたくて書いたらもう何がなにやら。
とりあえず白っぽいイメージで書いたつもりなんですが…
見事に撃沈。シリアス難しいよー!
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