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何時からそうだったかなんて
覚えていないし
気付きもしなかった。
■■■Jealous■■■
第2話:「見たくない現実」
<SIDE 潤>
どう云ったら泣くだろう。と
そればかり考えていた。
「別れよう」
そう切り出した俺の言葉に
返事はなかった。
そりゃそうか。
イキナリだもんな。
「聞いてる?」
身体を起こし、寝たままのキリトを見据える。
俺のシャツを掴んでいた手は、背中から離れていた。
振り返ったそこには、呆然と涙を流す姿。
「キリト?」
あぁやっぱり泣いてる。
涙を指でぬぐう。
冷たいほっぺた。
「泣かなくてもいいじゃない。別れたって逢わないワケじゃないんだし」
自分でもどうしてそんなに平然として居られるのか判らなかった。
俺はこうする事に悲しみとか、苦しさとか
そういうものがないんだろうか?
「毎日でも仕事で逢えるじゃない」
次々と、唇を突いて出る酷い言葉。
今までこれだけ一緒に居て、よくこんな言葉が吐けるもんだと
自分でも思う。
でもこればっかりは、仕方のないことなんだ。
頭をくしゃっと撫でると
1回瞬きをした。
大粒の涙がボロボロとシーツに落ちて音を立てる。
その手にキリトの手が重なった。
「じゅ・・潤ッ・・・」
手は微かに震えていた。
「なぁに?」
「何で急にッ・・・?」
「理由なんてないよ。ただもう辞めたいの」
「辞めたい・・・?」
「意味ないじゃん、俺等の関係」
そう。
それが理由。
子供が出来るワケじゃない。
結婚が出来るワケでもない。
俺達の関係に先なんてあるんだろうか?
このまま関係を続けていって
その先には何がある?
「意味・・・なんて関係ないだろッ・・・」
ゆっくりとその身体を起こし、膝を立てる。
俺の肩に両手をついて、服を握り締めた。
「俺は・・・お前が好きだから一緒に居るんだよ」
「ん」
「お前と一緒がいいんだって・・・お前と居たいんだよ」
「うん」
「意味とか・・そんなのどーでもいい。お前と居たいのッ!!」
「うん。・・・有難うキリト」
「でも、御免」
また涙がシーツに落ちた。
キリトはそのまま何も云わずにベットに身体を横たえて
俺の背を向けた。
ただ、しゃくりあげる小さいな声だけ
部屋に響いた。
俺はゆっくりとベットを降りて、寝室を出た。
音を立てて閉めたドアが、酷く重たく感じる。
リビングは真っ暗だったけど、窓から差し込む月の灯りで
十分辺りは見渡せた。
ソファーに腰を下ろして、ため息をついた。
***
理由はそれ以外にももう一つあった。
キリトが俺に好きだと云った時
俺も好きだよと返した時
毎回のSEXの時も
何時だってそう。
何時だって
キリトは泣いていた。
目に沢山涙を溜めて
瞬きする度に、それが頬を伝う。
口では偉そうに振る舞いながらも
でも何時も泣いていた。
どうして泣くの?って聞いたら
「お前が好きだから」
そう云われた。
じゃあもし
俺の事を嫌いになったら
俺と別れたら
あーたは泣かなくて済むんだろうか。
もう泣かないで居てくれるんだろうか。
俺にはあーたの涙が
酷く痛い。
「嬉し涙だよ」
と云われた時も
嬉しかった反面、やっぱりどこか痛くて。
苦しかった。
もうあーたを泣かせたくない。
俺の為になんて泣かないで?
***
結局、あれから一睡も出来なくて
そのままソファーで朝を迎えた。
時計の短針は6を指していた。
そろそろキリトを起こさなきゃ。
また仕事だ。
閉めた時よりも重たく感じた寝室のドアを開ける。
ベットの上のキリトは向こうを向いていて
起きてるのか起きてないのかすら判らない。
「キリト?」
返事なんて無かった。
近付いてベットに腰を下ろす。
身体を揺さぶると、小さく声を漏らした。
「起きてるよ・・・」
「仕事だよ」
「わーってる・・・・」
ゆっくり身体を起こして、ベットから立ち上がろうとするその腕を掴んだ。
突然の事に、必然的にキリトの身体は俺に倒れこんでくる。
それを受け止めて顔を覗き込んだ。
「・・・酷い顔」
「ッ・・・・」
目は真っ赤に晴れ上がっていて、
頬は涙を袖で擦った跡で赤く擦り切れていた。
どれだけ泣いたんだよ。
「ほっぺた、切れてるよ」
「・・・触んなよ・・・・優しくするな」
「そうだね。御免。でもその顔は仕事に差し支えるから何とかしなきゃ」
「いいよ・・自分で何とかする」
「俺の所為だから俺が責任取るよ」
「ッ!そんな気も無いくせに!!」
俺の言葉にキリトは俺の腕から逃れようとする。
でも俺がそれを許さない。
「放せッ!!!」
「嫌だ」
「俺はもうッ!・・・お前なんか好きじゃないッ!!!」
「俺は好きだよ」
「ッ!・・・なんだ・・よ・・それ・・・」
「好きだ」
「今更何ッ・・・・・」
「これで最後」
「え・・」
「あーたに好きだと云うのも、触れるのもこれが最後だ」
顎を捕らえて
細い腰を引き寄せて
「好きだよ。愛してる」
その唇に触れる瞬間にそう呟いた。
唇が重なっても、抵抗は無かった。
触れるだけのキスをして
身体を開放してやると、キリトはペタンとベットに腰を着いた。
「仕事。先に行くね」
それだけ残して
俺は部屋を出た。
後ろは振り返らなかった。
何も掛ける言葉も無かった。
携帯をポケットに突っ込んで
鞄を持ってジャケットを羽織った。
走るワケでもなく
でも急いで部屋を出た。
部屋を出たドアの前で
膝の力が抜けて、座り込む。
「云っちゃった・・・」
最後だと。
自分で決めた事を
何も云わずにただ押し付けただけの最後。
別れる時まで自分勝手だったと思う。
でももう泣いて欲しくない。
俺なんかの為に泣く必要なんて無い。
あーたが
涙を流す姿はもう見たくないんだ。
「はは・・・・ッ・・・俺って・・サイテー・・・」
自分で決めた事を
ただ実行する事がこんなにも重たいなんて
あーたとの別れが
こんなにも辛いなんて。
今頃こみ上げてきた苦しみは
俺のちっこいキャパじゃ抑え切れなくて
抑えられない物が
形となって頬に流れた。
■一言■
あぁもう何がなにやら意味の判らないお話に…(滝汗)
とりあえず、潤君はお兄ちゃんに泣いて欲しくないんですよ。
自分と居ると辛い思いばっかさせてると…。
でも事実はそうじゃないんですよね。
まぁ真実はこれから!
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