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嫌な予感がした。
俺じゃあなくて
アイツに何かあったんじゃないかって。
■■■THE TRUTH■■■
第4章:「月が出た頃に」
「あー。何で逃げるんだよー」
「あったり前だろーが!!!!」
「逃げちゃ駄目だよ。潤サン」
『サヨウナラ』と聞こえてきた瞬間、
突然やってきたその男の背中の翼が大きく広がって
俺へと向かってきた。
運動神経なんてゼロに等しいぐらい無いけど
条件反射って奴で何とか避けた。
玄関に大きく尻餅をついて、物凄い不恰好だったけど
それでも翼が向かってくる瞬間に感じた死よりは幾らかマシだった。
俺の居た所から玄関の両サイドの壁が
ありえないぐらいにひしゃげた。
ぐしゃり
と鈍い音を立てて。
こんなもんにマトモに当たったら・・・
考えるだけでゾッとする。
俺が避けた事で、男は逆上するのかとハラハラしていたら
相変わらずの笑顔とあどけない表情で俺に云った。
「潤サンは去年に死んでなきゃいけない人間なんだからさ。大人しく死んで?」
「無茶云うなお前ッ!!」
「いいじゃんー。どうせ死んでるハズなんだしさー」
「何かお前の喋り方ムカツク」
「あーひっでぇ!」
こんな時に呑気かもしれないが、コイツの喋り方は本当に頭に来た。
語尾を延ばすな語尾を!
俺は隙を見ては部屋の奥へと逃げ込んだ。
一番奥は、寝室。
「あー!逃げんなよー!」
そんな声が聞こえたが構っていられない。
とりあえず走って寝室に逃げ込んだ。
ドアに鍵がついていて良かった。
鍵をかけてベッドに飛び乗る。
くるな。
頼むから。
諦め・・・・・
ぐしゃっ
ぐしゃっっ
バキバキバキバキッッ
壁をも打ち砕く翼に鍵なんて意味無くて
俺の寝室のドアは意図も簡単に破られてしまった。
「無駄だってば。素直に殺されて?」
「んなワケいくか!」
男はニッコリ笑って俺のベットの上に足を掛ける。
ベットの端に追いやられる俺を見下ろすように
男はベットに仁王立ちになった。
「キリトとは寝たの?」
「は?」
「もうエッチした?」
「ッ!するわけないだろ!!」
「あれぇ?おっかしいなぁー。じゃあ何でキリトはあんなムキになってんだろ?」
「え・・・」
「エッチしてないならムキになることもないのにさー」
男は上の空を見て「あれ?」とか「おや?」とか素っ頓狂な声を出して
首を捻った。
一体何だって云うんだ。
俺がキリトと寝る?
そりゃキリトが好きだけどさ、寝るだなんて。
まだそこまでいってないし!
「じゃあ何でキリトは殺さないんだー?んんー??」
「んぁ?あーそうかそうかっタケオ様に飽きたんだ?えーでも違うかー?」
タケオ様?
誰だそれ。
ってか色々気になる事が沢山あるんだけど・・・。
今のうちに逃げ出せないかと思って、チラッとドアのあった方へ目をやると
その行動に男が気付いた。
「こんな男のドコがいいんだろ?」
そう云って俺の顔を覗き込む。
その距離10cmと云ったところだろうか。
大きな赤い瞳、サラサラの前髪、整った顔立ち。
どういうわけか顔が熱くなるのが判った。
「まぁいいか」
「ッ!」
男はそう云うと俺の顎を掴み上げる。
「キリトがどう思ってようと、殺すんだし関係ないか」
「ッ!!離せこの馬鹿ッ!!!」
「俺は馬鹿じゃないよ?馬鹿なのはキリトでしょ。大人しくして」
「嫌だッ!殺されてたまるか!」
「強情だなー。こんなののドコがいいんだ本当」
「失礼だぞお前!!」
男はうーんうーんと俺の顔を覗き込む。
勿論距離は先程と変わらない。
顎は掴まれたままだ。
「何だー?何がいいんだ?いいや。ちょっと味見」
「ッえ!?・・・ッんん!!」
そう云うと、男の顔がどんどんその距離を縮めて
俺と唇を重ねた。
唇はグイグイと押し付けられて、体制を維持するのがキツくなる。
片手は男の肩を押し返していた。
もう片方の手はベットでバランスを取っている。
でもそれも限界で、ガタリと力が抜けて俺は男の肩を掴んだまま
ベットに倒れこんだ。
「ッふ・・・」
その間も唇は離されず、離す所か男は舌を入れてくる。
抵抗して上に圧し掛かった身体をつき返そうとするが
男にしっかりと押さえつけられていてままならない。
次第に舌の動きは激しさを増して、歯列をなぞる。
それが快楽に変わるのに時間はかからなかった。
「・・・ぅッ・・・」
空気がまどろみ出して、意識がぼんやりしてきたところで
男は名残惜しそうに唇を離す。
「ッは・・・・」
「へぇ。中々」
「・・お前ッ・・・・・」
「お前じゃないよ。アイジ。俺、アイジって云うの」
「アイ・・・ジ」
されるがままいいようにされた俺にとって
コイツの名前がアイジだろうがサイジだろうが何でも良かった。
「死ぬ前に云っても仕方ないか」
顎に添えていた手をスルリと首に下ろし
長くてしなやかな指が俺の首に絡みつく。
「ッ!やめッ!!」
「キス上手だけどリスト漏れだから仕方ないよね。今度こそ本当にサヨウナラ」
「あぅッ!!!」
アイジと名乗る男は絡めた指に一気に力を入れた。
喉仏に両親指を添えて、骨を砕くように押し込む。
行き場を失った酸素は俺の喉元でせき止められて
上にも下にも回らない。
俺の喉はすぐに悲鳴を上げて、ヒューヒューと音を立てた。
証明の逆光で表情までは伺えなかった。
でも多分、コイツはこうしている間もきっと笑っているんだと思う。
必死に抵抗してアイジの手を掻き毟ったけど
意味は成さなかった。
いい加減本当に苦しくて、
目から自然に涙が流れて、抵抗する気も段々と薄れていく。
首に絡んだ手にいよいよ力が増して
もう駄目だと思った時。
俺の上に居たアイジが吹き飛んだ。
ッダンッッッッ!!!!!
床にアイジが叩きつけられる音。
と同時に俺の気管に酸素が流れ込む。
イキナリ酸素が流れ込んできて、余りの苦しさにむせ返した。
俺は何が起きたのか判らず、でも苦しくて
ゲホゲホとベットをのたうちまわった。
「ッゲッホ!!・・・ッゥ・・・・」
「潤ッッ!!!!!」
突然。
誰かが俺の身体を掴んで引き寄せる。
頭を胸に押し付けられて、誰なのか顔は伺えなかった。
でも、間違いは無い。
呼吸もままならない俺の身体を抱きしめたのは
「き・・・・リト・・・・ッ」
間違えるハズない。
首を締められて、本当に見えた死の淵で
浮かんだのはあーたの顔だったんだから。
遅いよ。
でも、お帰り。
分厚い雲は何時の間にかスッキリ晴れて、
綺麗な月が、町を煌々と照らしていた。
■一言■
死神話4話目です。
アイジが何か馬鹿臭くて申し訳ないんですが…(滝汗)
もっとこうリアルに首を締められる感じを出したかったんですが
言葉が浮かばず撃沈…(凹)何かこんなんばっかだなー(苦笑)
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