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あぁそれが規則だったっけ。
自分じゃどうしようも出来ない事。
それでも俺はお前と居たかった。
■■■THE TRUTH■■■
第3章:「月が出る頃に」
ある夜、家に帰るとキリトが居なかった。
「あれ?」
寝室にも、お風呂場にも、リビングにも何処にも居ない。
「キリトー?キリトー??」
声を掛けるも返事は無い。
ふと、リビングのテーブルに置かれた紙切れが目に留まる。
「出掛けます・・・月が出る頃には戻ります。・・・って月が出る頃って・・」
紙切れにはそう書かれていた。
綺麗な整った文字で。
ふと、窓から夜空を見上げると、空はどんよりとした雲で覆われていて
月なんて見えやしない。
時計の短針は21時を指していた。
「何時帰ってくるんだろ」
******************************
「どう云う事か、説明して貰おうか」
「・・・・だから何度も申しております・・・」
暗い部屋にキリトは立っていた。
漆黒の翼を背負って。
その前には同じく漆黒の翼を持つ一人のスーツ姿の男が居た。
暗い部屋の照明は全て間接照明で、僅かにその光で表情が伺える程度だ。
部屋には革生地の長イスとテーブル、そしてデスクがあった。
スーツ姿の男はそのデスクに足を組んで腰掛けている。
一見すると、社長室風なその部屋。
普通と違うのは、部屋が暗い事と男の背中に翼がある事ぐらいだろうか。
キリトを前にしている男は、分厚い書類を片手にキリトを見ていた。
書類の表紙には「リスト漏れ重要人」と書かれていた。
「このリストに載っている者を殺せない。と?」
「はい」
「それは、この男だと」
そういってひらりと翻した1枚の書類には、潤の顔写真が貼られていて
名前や住所やその他調べに調べた情報が記載されていた。
「・・・そうです」
「この男はー・・キリトの何だって?」
「・・・・・・大切な・・人です」
「・・・大切な人。ねぇ」
多分、この男の地位はキリトより上なのであろう。
男に質問される度に、キリトは身体を軽く反応させていた。
それだけとは思えない何かがキリトを押さえ込んでいるのかもしれない。
「で?どーするの?コイツを殺さないで居て」
「・・・・・・」
「どーするの?」
「・・・・一緒に・・・・居たいと・・」
バシッッ!!!!
途端にキリトの華奢な身体は床に叩きつけられる。
動いたのは男の黒い翼だった。
翼はキリトの身体にムチを打つようにブチ当たり
その身体を床へと叩きつけたのだった。
「ッぅ・・・・」
キリトの口許からは赤い血が流れていた。
口内を噛み切ったのだろう。
「もう一回云ってみ?何だって?」
男は体制を変える事なくキリトを見下ろしていた。
「何だって?」
「・・・潤と・・・一緒に居た・・・」
ガツッッ!!!!
「っぁ・・・ッ」
男はキリトの言葉を聞く間も無く、今度はその背中を強く踏みつけた。
「潤だって?リスト漏れした人間の事を、ただ殺すだけの人間の事を何時からそう呼ぶようになったんだ?」
「ッ・・・・・お許し下さいっ・・・」
「俺の事はどうしてくれるワケ?」
「お許し下さッ・・・」
「俺との関係は?お前は俺のペットだろ?」
床に這い蹲っていたキリトの髪を掴み上げる。
その頬にキスを落とす仕草は、その姿とは裏腹に
やけに愛しそうに見えた。
「ペットはペットらしく、ご主人の云う事だけ聞いてりゃいいんだよ?」
「俺はッ・・・・潤を殺せないッ・・・」
「少し地上に放しただけで、どうしてそんなに聞き分けが無くなったんだろうね」
「タケッ・・・オ様・・・お許し下さいッ・・・彼だけは・・・」
タケオ様と呼ばれる男は、キリトから離れるとテーブルにある電話を取った。
「いいよ。許してあげる」
「ッ・・・え・・・?」
「許してあげるよ。殺せないんだろ?」
「タケオ・・・様」
そして馴れた手つきで、番号をプッシュする。
『もしもし。アイジです』
「キリトが殺せないなら、他の死神に頼むまで」
「ッ!!タケオ様ッ!!!!」
「もしもしアイジ?」
『タケオ様っ!何か御用ですか!?』
「リストNO.205の人間を今すぐ消せ」
『了解致しました』
「やめて下さいタケオ様ッ!!!」
バシィィッッ!!!
キリトがタケオの持つ電話に手を掛けようとした瞬間、
またも翼がその身体を床に叩き落した。
「お前は俺に指図出来る程、偉くないだろうが」
「ッ・・・・」
「今日はココに居て貰うよ。その考え方をもう一度改めるといい」
******************************
時計の短針は23時を指していた。
窓から空を覗くと、まだどんよりとした雲に覆われていて
月は見えなかった。
「・・・・はぁ・・。まだ月出ないや」
あれから2時間。
今のキリトに行く場所なんてあったかなぁと考える。
どこに行ったんだろう。
まさか
ジゴクに戻った?
「まさかね」
ピンポーンッッ
「ほーら帰ってきた。はいはーい!」
誰かに云うワケでもなく、そう云うと俺は玄関に向かう。
ピンポーンッッ
「はいはーい!ちょっと待ってー」
二回目のチャイム。
鍵開いてんのに。
どうして自分で入ってこないんだ?
ガチャッ
「お帰りキリ・・・・・・・」
「初めまして。潤サン」
ドアの向こうに立っていたのは、望んでいた者ではない
見慣れぬ顔の青年だった。
大きな瞳。細く引き締まった体。
俺より幾分か背が高いにも関わらず、小さく見えるのは
その身体が細いからだろうか。
俺の名前をそう呼んで、ニッコリ微笑んだ。
「何で俺の名前を?」
「どうでもいいことですよ」
「よかないよ。勧誘なら断ってるから」
「イイエ。勧誘じゃなくって」
「勧誘じゃないなら押し売り?お金ないから」
「イイエイイエ。押し売りじゃなくて」
「じゃあ何?俺に用事?」
「イエ、ちょっと。貴方に死んで頂こうかと」
「へ?何云ってんの?」
「知ってるんでしょう?去年に死ぬハズだって」
去年?
去年って・・・・
『お前は本当は去年の2月12日に死ぬ予定だったんだ』
「も・・・しかして」
そして青年はまた微笑んだ。
口角を上げて。
「人間と死神のカップルなんて笑っちゃう。本気で幸せになれるとでも?」
「死神ッ・・・・」
青年の背中から生えた漆黒の翼。
瞳は赤かった。
「サヨウナラ」
ぐしゃり。
夜空は分厚い雲が被っていて
月なんて出ていやしなかった。
■一言■
死神話三話目です!ついにタケオさんとアイジ登場!(遅ッ)
地位的にはですね、死神の長みたいなのがタケオさんで
その下にアイジとかコータとかキリトが居るんですよ。
続きはまた後々。
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