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白い溜息
冷たい手と
冷たい距離。
■■■幸福論■■■
何が幸せかと聞かれたら
間違いなく俺はあーたとの時間を選んだ。
「俺たちさよならしようか」
突然そう告げられて
「別に構わないけど」
そう答えた。
「じゃあ」
「「さよなら」」
涙なんか出なかった。
辛いとも思わなかった。
今まで傍にいた人が離れていくだけのこと。
これまであーたに逢うまでは一人だった
その時間が帰ってくるだけのこと。
そう割り切ってしまったら
涙なんか枯れてしまった。
数日たってそれでもあーたは俺の家に居た。
隣に居た。
「何してるんです?ココで」
ソロの仕事帰り、玄関に並ぶ見慣れた靴。
慌ててリビングに入るとあーたは普通にソファーで本を読んでいた。
いつものように。
「別に。逢いたくなっただけ」
「そう」
逢いたくなっただけと、それだけ告げて俺に口付ける。
一体何がしたいのか
さっぱりわからなかった。
別れようと切り出したのはあーた。
さよならしようかと切り出したのもあーた。
逢いたくなったと、口付けるのもあーた。
別に俺もいやじゃなかったから、それなりに相手をしてそれなりに過ごしてきた。
逢いたいと言われれば逢って
キスしたいと言われればキスをした。
抱いて欲しいとベッドに誘われたらそのまま流れ込んだ。
何が欲しくてココにあーたがいるのか
俺に何を求めているのか、やっぱりわからなかったけど
抱きしめたあーたの体がいつになく冷たくて
死んでるんじゃないかと思うぐらい冷たくて
「俺たちもうそういう関係じゃないでしょ?」
って付き帰す気にはなれなかった。
こんなに手冷たかったっけ?
抱きしめても抱きしめてる感じがしない。
口付けても触れ合っている感じがしない。
繋がっていても何も感じない。
いつもと違うあーたが変に怖かった。
「・・・・・何してるんです?」
「別に。逢いたくなっただけ」
また次の日も
そのまた次の日も
キリトは俺の家に居て、同じ場所でいつもと同じ本を読んでいた。
そして同じ言葉を繰り返す
「俺は・・・お前が好きだよ」
そこに気持ちはないハズなのに
どうしてかその言葉が愛しくて仕方なかった。
毎晩毎晩、あーた俺の家に来て、同じ言葉を繰り返し続けた。
そんな日が続いたある日。
「お兄ぃ知らない?」
そうコータに聞かれて
「毎晩うちに来てるけど?」
と答えた、それが事実だから。
でも、そのあとにコータが見せた表情は今までのどの表情より強張って
驚愕していた。
「な・・・なんだよ、キリトがどうした?」
俺がそう問うとコータは声を震わせながらこういった。
「 お兄ぃは死んだよ 」
「・・・一応聞くけど・・・あーた何してるんです?」
「別に。逢いたくなっただけ」
ほらやっぱり。
家に帰ればあーたがそう言ってくれる。
でもね、なんでだろう。
こうやってずっと抱き合ってても、ちっともキリトの暖かさを感じない。
ここで抱きしめているハズなのに、ちょっとも傍にいる気がしない。
いやな予感がしたんだ。
家に入った瞬間にいつも感じていた空気。
あーたが俺に口付ける時の違和感。
やっぱりあーた
「 死んでるんだね。 」
俺が事実を突きつけると、黙ってうなづいた。
やっぱり
どうりでおかしいとおもったんだ。
傍にいても暖かさを感じない
存在を感じない
幸せを感じない
このあとあーたのおでこにキスをして抱きしめたら
いつもの言葉が追ってくる。
「俺は・・・お前が好きだよ」
それで
いつもどおり俺が言葉を返したら
もうそれでオシマイ。
これでもう夢を見るのはオシマイになる。
最後の言葉を口にするのは
簡単だった。
「・・・・・俺も大好きだよ」
ゆっくりと目を閉じて
冷たい体を抱きしめて
柔らかい髪に顔をうずめて
手を握った
次に目を開いた時には
また、朝がやってくる。
いつもと何一つ変わらない日常が帰ってくる。
夢から覚めて、そして時間が経つに連れてその夢さえも忘れていく。
あーたが居ない
あーたに出会うまえの日常が戻ってきて
そしてまたいつか、あーたに出会える日もやってくる。
少なくとも俺は
またあーたに逢える事だけを信じて
この部屋で待つ。
■一言■
デスネタで御免なさい(汗)
うんでも潤キリシリアスは大好きです。
書きやすいんですよね。この二人のシリアス。
もうちょっと情景描写が書けるようになりたいです;;
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