無料-
出会い-
花-
キャッシング
それは水で溺れる苦しさにも似ていた。
Superfluity
第2話:「溺れる魚」
次に目が覚めたら
窓の外がぼんやり明るくて
思わず携帯を手に取る。
デジタル表示された時刻は
朝方の5時を映し出していた。
俺あれから5時間も寝てたんだ。
と思った刹那、キリトの事を思い出す。
慌てて自分の横を見ると
そこにはスヤスヤと眠るキリトの姿があった。
「良かった・・居た・・」
次に気が付いたのは
自分が服を着ていないと云う事。
勿論横に眠るキリトも服は着ていなかった。
まるで諸事情の後。
でもキリトを抱いた実感はない。
「俺・・・」
キリトの頬にそっと指の背を這わせると
眉間に皺を寄せて、うっすら目を開けた。
「・・・・んぅ・・・・」
「キリト」
「お前・・・・寝ただろ」
「うんそうみたい。御免ね?」
「いいよ・・・俺も結局寝ちゃったし」
「ね、どして服着てないの?」
「・・・・素肌でくっついて寝た方が気持ちいいから」
そういうと、俺の身体にぺったりとくっついてくる。
確かにお互い素肌でくっついた方が気持ちいい。
その背中に手を回して、さすってやると気持ちよさそうに目を細めた。
「ねぇキリト」
「ん・・・」
「どうして俺なの?どうして俺を相手に選んだの?」
「お前じゃなきゃ駄目だって云ったろ」
「じゃあどうして俺でないと駄目なの?」
一番聞きたかったのはそれだった。
アンタは俺でないと駄目だという。
じゃあどうして俺でないと駄目なの?
潤君や、タケオ君や、コータじゃなくて
どうして俺?
俺はそれが一番知りたかったんだ。
小さな沈黙の時間が流れて
キリトはポツリと呟いた。
「お前が俺の事好きだから」
と。
「っ・・・それどういう・・・」
俺の気持ちにキリトが気付いていた事は
前から知っていた。
でもSEXの相手に俺を選んだ理由がそれだなんて事は
想像も付かなかった。
キリトは俺の質問に答える事無く
身体を起こすと、ベットサイドで煙草に火をつけた。
「ねぇキリトってば。どういうことだよ・・」
「そのまんま。お前が俺の事好きだからエッチの相手に選んだだけ」
「それは・・・・それって・・」
キリトは俺がアンタの事好きだから相手に選んだと云う。
「それって・・俺の気持ちに少しは希望持ってもいいってこと?」
好きだと云っても、断られるのは目に見えていた。
キリトにも彼女が居たし、俺にも居る。
大体男同士で好きだの嫌いだの、付き合うだのどうのってのに
アンタが否定しないワケがなくて。
それを理解していたから、俺は好きだと口に出せても
奥の奥にあった気持ちに蓋をしていたんだ。
でもアンタのその云い方だと
「俺の気持ちを知ってて相手に選んだって事は・・・そうだよね」
そう思わさざるを得なかった。
部屋に紫煙が漂って
ふぅっと煙を吐くと、キリトは口角を上げた。
「勘違いすんなよ」
「え?」
「お前が俺の事好きだってのを知ってて相手に選んだのはその通りだけど」
「だけど・・・?」
「だからって俺がその気持ちを受け入れるのとは話が別だ」
別?
じゃあどうして、どうして俺を。
「なぁアイジ、『Superfluity』って意味知ってるか?」
「え・・・?」
突然振られたそんな話題に頭がついていかない。
『Superfluity』・・・・・?
聞いた事も無い単語だった。
「知ってるワケないか」
「・・・知らない」
「・・・・・・『Superfluity』。意味は『余分なもの』。お前のその気持ちだよ」
「え・・・・」
余分なもの?
「俺に持ってるその気持ち、感情。それが余分だってんだよ。それを打ち砕く為にお前を相手に選んだ」
「嘘・・・」
「ホント」
「嘘だろ・・・幾らなんでもそれってない。そんな事されたって・・」
「エッチすれば気持ちは大きくなるだけだって?」
「・・・」
好きな人と肌を重ねて、気持ちが揺るがない方がどうかしてる。
事実俺の気持ちはどんどん大きくなるばかりで
留まる事なんて無かった。
「大きくなるなら大きくすればいい。エッチだって、これからも幾らでもしてやるよ」
「何それ・・・・」
「だけど、お前のその気持ちには一生答えられない」
その言葉を聞いて
周りの空気が一気に無くなったみたいに
苦しくなった。
「何だよそれ・・・気持ちだけ持たせといて・・そんなのって・・・」
そんな憎まれ口を叩くのが精一杯だった。
短くなった煙草を灰皿に押し付けたキリトは
また布団に戻った。
「こういう関係を始める時に条件を飲んだんだからな。文句は云わせない」
云われて見て、今一度条件を思い出す。
互いの性欲処理の為である事。
更に先の快感を求めるだけの行為である事。
勿論、お互いの相手には秘密。
そして
私情に流されない事。
「今のお前は契約違反だよ。私情に流されてるじゃん」
好きな人間を前にして
SEXをして
でもそのSEXに愛があるのは俺だけで
一方通行のままでやっていくなんて
どれだけ酷な事なのか
アンタには判らないんだ。
空気の無い所で俺は煙草に火をつけた。
煙を吸い込んで吐き出したら
水で溺れたみたいに更に苦しくなって
もうそれ以上何も云えなかった。
■一言■
兄やんがただの意地悪さんになっただけだ(笑)
もう自分で書いてて何がなにやら判らなく…。
アイキリはやっぱり難しいと思いました…くすん。
でも続きますッ!!!
[PR]動画