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教えてあげたい。
アナタに全部。
■戯言■
「何か疲れたカモ」
一発ぶん殴ってやろうかと思った。
「何だとお前」
何時もの行為の最中。
俺はアイジのモノを咥えて、奉公をしてた。
意外とデカいそのモノは、俺の口内にギツギツに詰まってて
餌付きそうになるぐらい苦しい。
大体俺は、男のモノを咥える事が生理的に受付けない。
まぁ普通は男が男のモノを咥えたりしないんだけど…。
今日だって嫌がったんだけど、アイジがどうしてもって云うし
好きな奴の為ならって、そう思って咥えてやってんのに…。
苦しい中でも一生懸命舌と手を使って頑張っている俺に
アイジは確かにそう云った。
「疲れた」と。
「お前なぁ…俺が一生懸命に咥えてやってんのに疲れたはないだろ」
「だってさー…本当疲れたんだもん」
「俺だって顎痛いんだよ!」
「大体さーキリト下手なんだもん」
ぁんだとこの野郎。
疲れただの文句抜かした上に、下手だと?
ナメてんのかコイツ。
その一言に、俺は脱ぎかけていた服を着なおした。
「やめちゃうの?」
「下手ならヤったってどうせイけないだろ?ならヤっても一緒」
「何でよ?咥えてよ」
「ふざけんなお前」
それだけ云って、俺はアイジの部屋を出た。
引き止める様子もなくて、リビングに出て鞄を掴んで
荒々しく家を飛び出した。
外はすっかり街の照明も落ちた真夜中の2時過ぎ。
夏前で湿度も高くムシムシする。
それでもこんな家にいるよりは幾分かマシ。
アンマリにムカついて、誰かにこの状況をぶつけたかった。
「それで俺んとこ来たの?」
「そう」
「勘弁してよお兄ぃー・・・」
「うぉっ。コータ!」
話を聞いてもらおうと、潤の家に押しかけたら
出てきた潤の後ろから、コータが顔を出した。
何でココにお前が?
ってか何で上着、着てないんだよ。
「あー…まぁとりあえず上がる?」
「おう」
「勘弁してお兄ぃ!!潤君も今の状況を考えてよー!」
潤に言われて中に入ろうとする俺を、コータが止めた。
ってか何でダメなんだよ。お兄様だぞ俺は仮にも。
「どうせすぐ済むんだから、ちょっとぐらい我慢してよコータも」
「無理だってば!」
「お前なんなんだよ。何がダメなんだよ。何でダメなんだよ」
「いや、あーた問い詰めすぎだから」
本当に切羽詰っているようなコータの姿。
額に滲む汗、落ち着かないそぶり。
何してたんだ?
「話ならタケオ君に聞いてもらってよー!俺だってキツイんだってば!」
「あんだとお前。何がキツイのか言ってみろ!!!」
「うっ・・・それは・・そのぉ・・・」
問い詰めれば問い詰める程、コータの顔からは汗が流れる。
相当いっぱいいっぱいのようで。
そんなコータを見かねた潤が、コータの腕を掴んだ。
「判った、判りました。キリト、ココでちょっと待ってて」
「んぁ?あぁまぁいいけど…」
「スグ済むから」
「ちょっ潤君!?」
潤はそれだけ言うと、玄関傍のドアを開けてそこにコータを押し込み自分も入っていった。
あそこは確か…トイレ?
何だか意味が判らないけど、とりあえず云われるがまま、玄関で待つことにした。
静かな玄関で座り込んでると、トイレから声が聞こえてきた。
「ちょっと潤君!今の状況で上がっていけとか云う普通?!」
「あーもう、お前ウルさい。コレだろ?」
「っぅ・・・そう・・だけどさ。途中でほっとかれた俺の身にもなってよ」
「後でちゃんと入れさせてやるって云ってるじゃん」
「そういう問題じゃねぇよ!咥えてる途中で普通ほっとく!?」
「ウルさいウルさい。すぐにイかせてやるから」
「つぅっ」
何だよこの会話。
普通に筒抜けなんですけど。
どうやら潤とコータもコトの最中だったらしく。
俺がジャマしちゃったみたい。
「んぅっ・・・・」
「はぁっ・・・潤く・・・んっ」
「ちゅっ・・・んんぅっ」
「スゲ・・・気持ちいいっ・・」
弟のこんな声聞いてもどってことないけどさ
俺もこんなこと言われて見たいなんて思ったのは
嘘じゃないかも。
それから暫くして、静かになったと思ったら
潤だけがトイレから姿を現した。
「御免。いいよ上がって」
「あっうん。コータは?」
「当分動けないからそのまましてていいよ」
「ふーん・・・」
当分動けないって。と、半開きのドアの隙間からトイレを覗くと
そこには床に座り込んでるコータの姿。
あぁ満足そう。
それをスルーしてリビングに入った。
ソファーに今日仕事の時にコータが来てた服が散らばってたり
テーブルにローションが置いてあったり。
コイツら何使ってんだか…。
「とりあえず座って」
「さんきゅ」
凝視しかけたローションのボトルをテキパキと片付けた潤は俺の前に腰を下ろした。
「で、なんだっけ?フェラがどうこう・・・」
「そう!それだよソレ!!!」
本来の目的を忘れるところでした。
潤は煙草に火をつけてそう云った。
「何、アイジが下手だって言ったの?」
「そうだよ!アイツ、俺が必死に奉公してやってんのに下手だとか疲れただとか!」
「・・・・・」
「大体なんなんだよアイツ!むかつくー!!!」
「ねぇキリト」
「あぁん?」
怒りMAXにクッションに八つ当たりする俺に、潤が言葉を刺した。
「キリト、そんなにフェラ下手なの?」
「お前…お前まで喧嘩売ってんのか?」
「違う違う。下手かどうか聞いてるだけ」
「・・・・自分で判るわけねぇだろ」
「まぁそりゃそうだわな。アイジは感じてた?」
「判んない。だって咥えるのに必死だったし」
「・・・どれだけデカいんだよアイツのは」
そういった潤は、2、3回しか肺に入れていない煙草をもみ消して
俺の横に腰掛けた。
「じゃあ試しにやってみてよ」
「は?」
「だから俺の咥えてみて」
コイツ馬鹿か?
俺はフェラが嫌いだって云ってんのに何を言うんだ?
しかも潤のを咥えろだなんて。
「俺のでやってみて、悪いところがあったら俺が指導したげるから」
「冗談じゃねぇよ。何で俺がお前のを。大体俺はフェラが嫌いだ!」
「でも上手くならないと、アイジは満足させてやれないよ?」
「うっ・・・・」
「感じさせてやりたいんじゃないの?アイジを」
「っ・・・・」
アイジのコトで怒ってるにも関わらず、その本人のことで突っ込まれると
どうしてひるんでしまうんだろうか。
確かに感じさせてやりたいと思うけどさ。
でも…
「いいからホラ。俺のでやってみて」
潤に背を押されて、俺は云われるがまま床に膝をついた。
丁度、潤の下腹部が俺の顔に来る位置。
「アイジにやってるみたいにやってみて」
「お前・・・コータはいいのかよ」
「コータ?まぁ大丈夫でしょう。お兄ちゃんの教育の為だし」
そういう問題じゃねぇんだけどさ。
仮にも俺はアイジと付き合ってるワケだし、アイジ以外の男のモノなんて
咥える事はないと思ってた。ってかそんなことするもんじゃないと思ってた。
なのにどうしてコイツは、そう思ってる俺の思いを覆すような事を簡単に言うんだろうか。
俺が不審な目で潤を見上げていると、顔に手を添えられた。
「何」
「アイジはヤるまえどうしてくれるの?」
「どうって・・・普通だよ」
「普通ってことはキスしたり?愛撫したり?」
「うんまぁそんなとこ」
「今日はベットで?」
「そう」
「よしっじゃあベット行こう」
「はぁ?えっオイ!ちょっと待てって!!」
潤は躊躇う俺に何を思ったのか、そう問いただした後
腕を掴んで奥の寝室へと誘導した。
誘導…というか、ほとんど無理やり。
バタンっ
電気をつけてドアを閉めて、律儀に鍵までかけた潤は
俺をベットに座らせると自分もベットに腰を下ろした。
「で、アイジはどうしてたの?横になってた?」
「そうだけど・・・なんでそんなこと・・」
「横ね。よっと」
人の話は一切耳にせず、返ってきた質問にだけ
忠実に潤は動いていた。
俺に云われたとおり、ベットに仰向けに横になり手招きをする。
「おいでおいで」
「ネコじゃねぇよ俺は」
「判ってるから。いいから来て」
人をネコみたいに…。
云われるがまま潤の手を取りベットに乗りあがる。
そのまま手を引かれ潤の上に覆いかぶさる形になった。
「さぁ始めよっか」
「俺にはお前の考えてる事がサッパリ判らない」
「何で?再現してるだけだよ?キリトがヤりにくそうだったから」
「普通は付き合ってる奴がいるのに、他の野郎のモノなんて咥えねぇよ」
「まぁそう固い事言わずに。教えてあげるからさ。それとも俺がシテあげようか?」
その言い方があんまりにもムカついた。
何で俺がお前にシテ貰わなきゃいけないんだよ。
ってか俺がお前にシテやることも本当はないんだ。
でも
「おっやる気になった?」
「黙ってろ馬鹿」
アイジが喜ぶなら。
アイジが感じてくれるなら。
俺は無造作に寝転ぶ潤のズボンに手をかけ、躊躇いなくジッパーを下ろす。
下着の隙間から潤のモノを手に取って、自分の前に露にする。
ってかさ・・・・
アイジのモンがデカイとかどうとか云うけど
お前も大概じゃん。
「どうしたの?怖気づいた?」
「うっさいってば。いいからお前は黙ってろよ」
どうしてコイツはこうも人を腹立たせる言い方しか出来ないんだろう。
イチイチ癪に障る。
俺は露になった、ソレにそっと手を添えて舌を這わせた。
いつもアイジがシテくれるのを思い出しながら。
根元から上に向かって舌を這わせて、先端を舐め上げる。
執拗に部屋に響きだす、艶かしい音。
ぴちゃぴちゃと響くその音の正体は、潤のモノに絡みつく俺の唾液以外の何でもない。
必死に舌を這わせて、咥え込む俺の姿を潤はただ何も言わずに見つめてるだけだった。
顎が痛いし、口の傍から唾液が零れ落ちて、息も続かなくて正直かなりしんどい。
咥えるのがいっぱいいっぱいで、舌を動かす余裕もないぐらい。
それでも俺は、何とか潤をイカせようと舌を動かす。
そこで潤の手が髪にそっと触れた。
「キリト。1回口から抜いて」
「っぅん・・・・はぁっ・・・んだよ・・」
「俺の云う通りにもう一回始めっからヤってみて」
「・・・なんだよソレ・・・」
「いいから。云うようにヤって」
「・・・・判った・・よ」
「イイコ」
潤は俺の頭をぽんぽんっと叩いて、ベットと対している壁に体を起こし預けた。
胡坐をかくような体制で座った潤は、俺の手を引いて顔を潤のモノの前にもっていかせる。
「始めっから咥えようとしないで、手で途中まで抜いてみて」
「えっ」
「始めっから口でしようとするからツライんだよ。
慣れるまでは途中まで手でやって最後は口でヤればいいから」
「・・う・・うん」
潤の言うことに一理ないと思った俺は、軽く勃ち始めているモノに手を添えて
上下に抜き始めた。
「そ。そのまま早さ変えないで下から上に抜いてって」
云われるがままに上下運動を繰り返してソレを扱う。
そのうちにソレは完全に勃ち上がりを見せて、大きく膨れ上がった。
ぷっつりと筋張ったものを目の当たりにして、俺は喉を鳴らした。
「っふ・・・キリト、そろそろ口でさっきみたいにやってみて」
軽く息の上がった潤は俺の頭を抱えて咥えるように支持する。
俺はそのモノにたじつきながらも舌を這わせ始めた。
「っぅ・・・」
「潤?」
さっきとは明らかに違う反応。
勃ち上がったモノに舌を這わせて先端を舐め上げただけの行為に
潤は反応を見せた。
俺が様子を伺うとそのまま続けて。といわれる。
そのまま、潤の先端を弄る様に割れ目に舌を這わせて咥え込んだ。
すると今まで軽く頭に添えられていた手に力がこもり、一気に奥まで押し込まれた。
「んぐぅっ・・・んふっ・・・ぅうっ」
「キリっ・・・ト・・・もっと奥まで・・・」
「ぅっ・・・・」
「舌使って・・・」
奥までとか舌使えとか云うけど、何度も云うように苦しいんだって。
ふざけやがって。
と思いながらも、自分の行為に感じてくれてる潤に何だか嬉しくて
動かせるだけ舌を動かして、後は上下運動で補った。
「ッ・・・キリトっ・・・もイキそ・・・」
その言葉を区切りに俺は強くソレを吸い上げた。
と、同時に潤の体がビクリっと反応して、俺の口内に精液が放たれた。
「んんぅぅ!!」
余りの濃さと鼻から抜ける精液の匂いに、耐え切れず俺はモノを口から離す。
「キリトっ」
「っんぅっ」
思わずその場に吐き出そうとした時、潤に頭をつかまれキスをされた。
あれよあれよと思っている間に、行き場をなくした口内の精液を全て舌で掻き出され
潤は自分の出したモノをティッシュに吐き出した。
「っぅ・・・口に出すなんて聞いてねぇよ・・はぁっ・・」
「御免。我慢出来なかった。もっかい・・・」
「えっ?・・・ぅん・・・」
息を着く間も無く、また潤にキスされて、今度はゆっくり舌で歯列をなぞる。
戸惑う俺の舌を捕まえて、ゆっくり絡めて。
アイジとはまた違うキスの味に、意識が飛びそうで、頭がぼやぁっと霧掛かってきた。
「・・ぅぅ・・・っん・・・」
「ちゅっ。・・・・はぁっ。・・・掃除オシマイ」
唇を離された瞬間、魔法でも解けたみたいに体の力が抜けて
俺は潤の上に倒れこんだ。
「キリトっ。大丈夫?」
「はぁっ・・・くるし・・」
「御免、口ん中に俺の出したモン残ってたら嫌だと思って・・・平気?」
「ん・・・平気・・・」
潤の胸の上に体を預けて、呼吸が整うのを待つ。
苦しかったけど、自分の行為にコレだけ感じて貰えるのだと思うと
何だか気分がいい。
あとはコレをアイジにしてやるだけ。
喜ぶかな、アイジ。
「キリト」
「ん・・」
ヤケに愛しそうに名前を呼ばれて、俺は顔を上げた。
そこには、俺の髪を撫でながら微笑んでる潤が居て。
何だかコレじゃ俺と潤が恋人みたいじゃん。
「御褒美。欲しくない?」
「褒美?」
「そう。俺をイカせてくれた御褒美。あげるよキリトに」
「何言って・・・ってうあっ!!!」
御褒美と言われて思いついたのはお金。
何でお前がそんなモンを俺に?
何て馬鹿なことを考えていた俺の体を、潤はいとも簡単に組み敷いた。
突然の事に状況のつかめない俺を尻目に。
「キリトもシテ欲しいんじゃない?」
「おまっ・・・何考えてんだよ」
「何って。そりゃ云わなくてもわかるでしょうに」
「冗談じゃねぇぞ!俺はお前に教えて貰うだけで何かシテもらうつもりなんてねぇんだよ!」
「今更ソレはないでしょ?自分でも分かってる癖に」
その言葉は、図星だった。
始めに潤に教えてやると云われたときに、こうなる事は予想してたハズ。
いや、どこかで確信していたハズ。
でも俺はそれを見ないフリした。
そのツケがこんなとこで回ってくるなんて。
「やっぱり。ちゃんと判ってるんじゃない」
「・・・・っ」
「悪いようにはしないから安心して。ちゃんと気持ちよくしてあげるからさ」
「ぅぁっ・・・・」
そういうと、潤は俺の服の中に手を滑り込ませる。
冷たい指先が肌に触れて、ピクリと体が反応した。
「敏感だね、キリトは」
「っ・・馬鹿っ・・・やめろって」
「本当にやめて欲しいようには聞こえないけどね」
「じゅ・・・っん」
「ココ感じるんじゃない?」
「っああ」
滑り込ませた指先は迷う事無く胸へと向かい、飾りをピンとはじかれる。
潤に奉公したことで、自分のモノまで反応していたことは嘘じゃない。
こんなときに、人間の生理現象を恨む。
「俺の見て感じてたんじゃないの?素直になりなよキリト」
「・・・はっ・・潤ぅっ・・・やめっ・・」
「やーめない。感じてるじゃんあーた」
「ちがっ・・ぅ・・・」
「違わない。ほら、キスしたげるから」
「んぅ」
胸の突起を弄りながら、浅く口付けられた。
唇が触れるだけの軽いキス。角度を変えて何度も何度も。
唇で唇を軽く甘噛みされたり、舌先で歯列をなぞられたり。
間違いなく潤のペースに落ちていた。
力を入れように全く入らないこの体。
アイジがいるのに、なのに抵抗すら許されない。
抵抗どころか、この行為に感じてしまっている。
頭の芯が溶けてフワフワした気持ちになってきて
いい加減ヤバイと思ったとき。
〜♪〜〜〜♪〜〜〜〜〜〜♪
ベットサイドのテーブルに置かれていた、潤の携帯がけたたましく鳴った。
「・・・この着メロは」
軽快に鳴り響く着信音に潤が軽く舌打ちしたように見えた。
携帯を荒々しく取り、電話に出る。
「もしもし」
『あーもしもし?俺だけどー』
「っ!」
静かな部屋では、相手側の声も良く通るもので。
皮肉にも電話の相手はアイジだった。
思わず俺は体を起こして衣服を整える。
別に見られてるわけでもないのに、何だかこの状況が恥ずかしかった。
「アイジ。何」
『何じゃないでしょ潤君ー。キリトまだそっちでしょ?』
「うん傍にいるけど」
何でアイジは俺がココにいることを知ってるんだろう。
さも当たり前のようにココにいることを知っている。
『潤君さぁ。キリトに何してるわけ?』
「っ」
その言葉に反応したのは、潤より俺のが早かった。
顔の熱が一気に上昇して耳まで熱い。
「云われたことやってただけ。それ以上は何もシテないよ」
『嘘吐き。フェラ教える以外にもヤろうとしてたんじゃないの?』
「・・・お前勘良すぎだよ」
『んなことだろうと思った。さっさとこっちに返して』
「わーってるよ」
『それ以上やったら俺許さないかんね』
潤とアイジの会話の内容はよく判んなかった。
一体何を云ってるのか、全く察しがつかない。
いや、ここでも俺は気づかないフリをしてるだけかもしれない。
ただ、アイジの一言一言が怖かった。
「分かってる。もう返すよ」
『あーそれから。キリトに変わって』
その言葉に体がビクリと反応した。
アイジにバレてるこの状況。
今電話に出たりしたら、どれだけ怒られるか判ったもんじゃない。
怖い。
電話を差し出す潤に俺は大きく首を振った。
『キリトっ。聞こえてるんでしょ?電話出て』
「アイッ・・ジ」
『俺は出ろって云ってんだけど?』
「っ・・・」
怒ってる。
間違いなく。
それは俺が一番良くわかる。
でも今出ないでいたら、もっと怒られると思って
俺は恐る恐る電話を受け取り電話に出た。
「アイジ・・・」
『ヤったの?潤君と』
「ヤってない!ヤってないよ!」
『そんな頭ごなしに否定しなくていいよ。ヤってないんだね?』
「するわけないだろ・・・・」
『そう?とりあえず帰っておいで』
ぶつっ。ツーッツーッツーッ。
それだけ言い放たれて電話は切れた。
「キリト」
「帰る」
電話をベットに放り投げて、俺はベットから降りた。
その時に腕を強く掴まれて、そのまま潤の胸まで引き寄せられる。
「っ・・潤!」
「判ってる。10秒だけ」
「・・・・」
「もっかいだけ・・・キスさせて」
俺の了承を得る前に、潤は俺に口付けた。
舌を入れる事もなく、ただ唇が触れるだけのフレンチキス。
愛しそうに唇を離すと、オデコにもキスを落として潤は手を離した。
俺はそれを確認してドアへと足を進める。
「キリト」
何度この名前をこんな愛しそうに呼ばれただろう。
俺は思わず脚を止めて振り返った。
アイジが待ってる。
早く帰らなきゃいけないのは分かってるけど・・・
「好きだよ。愛してる」
「・・・何だよ・・それ」
「あーたが好きだ」
「っ・・・ふざけんな」
俺はそれだけ言い残して、部屋を後にした。
後ろで潤の声が聞こえた気がした。
名前を呼ぶ声が。
でももう止まってはいられない。
今は一刻も早く、アイジの元に帰りたかった。
謝りたい。その一心で。
***
イキオイよくドアを開けたその音は
とても乾いていた。
乱れる息を整えて、恐る恐るリビングに足を踏み入れる。
リビングは静かで、シンとしていて人の気配がない。
アイジは?アイジはドコに…
「キリト」
突然後ろから声を掛けられて、心臓が飛び上がった。
何時も以上に低く聞こえるその声は、どこか怒りに満ちているようにも感じる。
振り返るのが怖かった。
「アイジ・・」
「お帰り。とりあえず座って?」
名前の次に出てきた言葉はとても優しく感じた。
いつものアイジだ。
さっきの一言が気のせいのように思えて、俺は胸を撫で下ろしてソファーに腰を下ろした。
アイジの手にはボルヴィック。
どうぞ。とテーブルに置いた。
ガラスのテーブルを挟んだ先にアイジは座っている。
ごくごくと喉を鳴らして半分までボトルを開けて、ゴンっとボトルを置いた。
「アイジ・・・あのさ・・」
「勉強になった?潤君ので」
俺が先に言葉にしたのに、その一言で優先権はアイジに移る。
俺の目をみようとしない。
「勉強って・・・」
「教えてもらったんでしょ?咥えたんじゃないの?」
「あ・・うん・・・」
「どうして、潤君とこ行ったの?」
「話・・・聞いてもらおうと思って・・・」
「話?」
「・・・・うん」
「俺が下手だって云ったから?」
「そう・・・」
「で、潤君が教えてくれるって云ったから云う通りにしたの?」
「・・・」
話が進むに連れて、アイジの返答と口調が早くなる。
怖い。
目が見れない。
最後の質問には、声を出す事も出来ないでただ頭を頷かせるだけだった。
「キリトはー、潤君に云われたら何でも云うこと聞くの?」
「違うっ。聞いてアイジ」
「フェラしてって云われたらーするんだ?」
「アイジ聞けよっ」
「じゃあ、抱いてやるって云われたら抱かれんのかよ」
途端に頬に痛みが走った。
視界が揺らめいて、思わずソファーに倒れこむ。
口内に広がる鉄の味。
「安いね。キリトの体は」
「っぅ・・・・」
アイジに思いっきり頬をぶたれた。
今まで見せたことないアイジの表情。
メンバーでもめた時でも絶対に怒らなかったのに。
ぶたれたところからアイジの怒りがビシビシ伝わってくる。
ぶたれた痛みより、伝わってきた怒りの方が痛かった。
「潤君にどうしてもらったの?優しくキスされて愛撫された?」
「アイッ・・ジ」
「何で・・・何で潤君なんだよ!」
俺の髪を掴んで耳元で質問を投げかけた後、
何もない空間にそう叫んで、アイジは寝室へと入っていってしまった。
イキオイよく閉められたドアは、いつもより重く感じた。
俺がいけなかったんだ。
アイジを喜ばそうと思ったことが裏目に出てこんなことに。
「アイ・・ジぃ・・」
名前を読んでも、それは空しく部屋に響くだけ。
いつもなら、喜び飛んでやってくるハズなのに。
いくら読んでも、アイジは来てくれない。
それでもこのままじゃいけない。
このまま放っておいていいわけない。
ソファーの背もたれに手をついて、ゆっくりと体を起こす。
立ち上がった瞬間に激しい目眩がして、またソファーに逆戻りしそうだった。
でもどうしても、寝室に行く必要があったから
そのままヨタヨタと足を寝室へと進めた。
寝室の前で一息飲んで、ドアを開ける。
寝室は真っ暗で、リビングから差し込む光で唯一見えたのはアイジの背中。
ベットに無造作に横になっている。
バタンっ
そんな背中に胸が何度かチクチク痛んだのを感じて、
部屋に足を踏み入れドアを閉めた。
「アイジ?」
声をかけても勿論返事なんてない。
一歩一歩足を踏み出して、アイジに近付く。
背中が大きくなるたびに、何時振り返って怒られるんじゃないかとビクビクする。
「アイジ・・」
ようやくその背中に手が届きそうな距離。
ピクリとも動かないアイジ。
ゆっくりとベットサイドに腰掛けると、アイジの体が重みでこちらに寄って来る。
何か云えよ。
「アイジ。話聞いて・・?」
「聞く事なんてない」
「いいから聞けよ」
「キリトが、潤君にフェラしたことには変わりないんだしさ」
「・・・だから・・俺はお前に喜んで貰いたいって思ったから・・・」
「別の奴とヤることを俺が喜ぶとでも思ってんの?」
「謝るよ・・潤のをヤってしまったことは・・・御免・・でも俺」
「あのまま俺が電話してなかったら、続けて抱かれてたんじゃないの?」
「そんな言い方すんなよ・・・・」
「俺怒ってるんだけど!!」
「判ってるよ・・・判ってる」
話をしてる間もアイジはこちらを向かない。
最後の俺の言葉の後に大きく息を吐くのが聞こえた。
「御免・・・本当に・・・。でも少しでも上手くなってお前をイカせてやりたいと思ったのは・・
嘘じゃない・・」
「・・・」
「御免アイジ・・御免」
「もういいよ」
「怒ってるくせに・・・」
「怒ってるよ!怒らないで居られるわけないじゃん!」
そういって俺に向き直ったアイジの顔は、本当切なかった。
また胸がズキズキうずいた。
「お願いだからもう他の奴んとこ行かないでよ・・」
そう言われて急に抱きしめられた。
「アイジ…?」
戸惑う俺に、アイジはただずっと抱きしめるだけで、何も言わなかった。
きつくきつく抱きしめられて体が苦しくなるぐらい。
「もう俺だけのモノで居てよキリト…お願いだから」
耳元で発せられる一言一言が酷く身に染みて
ただ俺は頷くことしか出来なかった。
ぎゅうっと握りしめたアイジの上着。
耳元で終始囁かれるアイジの声。
いつも傍にあったこの香り。
やっぱ駄目だ…
俺アイジじゃなきゃ駄目だ。
「アイジ・・」
「御免ね…下手だなんて言ったりして…」
「いいよもう・・・アイジ。ちゃんと座って」
そう言ってもしばらくは俺から離れようとしなかなったアイジ。
しばらくしてようやく体を離してくれて、きちんとベットに座り直した。
「今度は・・・下手だなんて言わせないからな」
小声でそう呟いて、アイジの股間に顔を埋める俺。
「ちょっ・・・キリト!もう咥えなくていいよっ」
戸惑うアイジを無視して、俺は口で器用にズボンのジッパーを下ろした。
下着の奥から、アイジのモノをそっと取り出して、手を添えた。
「キリト・・・無理にすることないからっ」
「そんなんじゃねぇよ・・黙ってろ」
潤は慣れるまでは手で抜いてやれと言った。
でも今ならちゃんと出来る気がして、俺はためらいなくソレを
口に含んだ。
「っぅぐ・・・」
「キリト…」
まずは下から。
そっと舐めあげて、割れ目を刺激するように舌先を扱う。
軽くアイジが反応し始めて来たのが、口内に伝わった。
「んぅっ・・・・キリ・・・ト」
口内から出しては入れるを繰り返すうちに、アイジの息が上がってくる。
唾液まみれでツラツラの唇をソレに這わせながら名前を呼んだ。
「あっぅ・・・・はぁっ・・・そのままっ・・もっと奥まで咥え込んで・・・」
「んんっ・・・ぅっ・・」
言われる通りに、口内の精一杯奥までアイジのモノを咥え込む。
先走りの流れる先端が、喉の奥に突き当たって
直接精液の味がする。
「気持ちっ・・いい・・」
その一言が一番聞きたかった。
俺は、そのままアイジのモノを吸い上げて吸い上げて。
やがてアイジは絶頂に達した。
口の端から流れ出る精液を、指ですくい上げて飲み干す。
その様子を満足気にアイジは上から見ていた。
「キリト・・・俺の上に乗って」
まだ荒い息を整える暇もくれなくて、腰を掴まれ
俺はアイジの上に向かい合わせに乗る形になった。
「もしかしてご褒美、潤君から貰った?」
「っ・・・お前なんでそのことまで・・」
「俺はーキリトの事なら何でも判るの」
「何でもって・・・」
「潤君からのご褒美なんて忘れさせてやるよ」
履いていたパンツを手際よく脱がされ、下だけ何も見にまとっていない
状態になる俺。
あまりの羞恥心にアイジから目を離そうとするが、それは叶わない。
大きな目に見つめられて、「俺だけを見て」なんて口パクされて
目なんてそらせない。
腰を掴まれ浮かされたと思ったら、一気に中へとアイジのモノが進入してきた。
さっき、熱を吐きだしたばかりなのに、ソレはすごく熱くて熱くて
思わず声を上げて首を横に振る。
「っあ・・・アイジッ・・・キツっ・・・」
「すぐに慣れるよ。気持ちよくなろうよキリト」
「あぁっ」
激しく腰を突き上げるリズムには着いていけなくて
おもわず不安定な体をアイジに預ける。
首に腕を回して、首元に顔を埋めて声を押し殺した。
服の上からでも擦れ合う胸が熱く感じる。
「キリト。ちゃんと奥まで入ってないよ」
「くっ・・ぅ・・・無茶言うなっ・・よ」
「もっと俺のを咥え込んで」
「無理だっ・・てぇ」
「出来るでしょ?キリトなら」
「あっぅ・・・」
その言葉の後に、腰を無理矢理押し下げられ
内壁の奥の奥までアイジのモノが突き当たった。
喘ぎ声とはとても云えないような声がおもわず口から出て
アイジの上着をぎゅうと噛み締めた。
内壁にビシビシ当たる感触と、入り口が引き千切れそうに痛む感触。
空いている手で俺のモノを掴んで抜き扱うアイジの手。
一度に訪れる激痛と苦痛と、快楽に
頭がオカシクなりそうだ。
「アイッ・・アイジっ!!待って・・痛っっ!」
「後でちゃんと薬塗ったげる。だから我慢して」
「もっ・・無理だって!・・無理ぃっ・・」
「すぐによくなるから。大体感じてるんでしょ?ココ、ビンビンだよ?」
「・・・はっ・・んぅ」
「力抜いて。俺に全部任せてよ」
丁寧に前も扱われて、先端からは先走りの白濁液が滲み出ている。
それを指の腹で救ってぺろりと舐めたアイジは
一旦動きを止めて、俺に力を抜くように言う。
だけど、ナカはギツギツだし前はアイジに掴まれている状態で
どう力を抜けっていうんだ。
「ほら。俺の目見て。何も問題ないでしょ?」
問題だからけだよ馬鹿…。
「愛してるよキリト。大好き」
俺の体を抱きかかえて、首にキスを落とす。
耳の裏を舐めて、髪にもキスをしてくれたアイジに
やんわり体の芯が溶けて、体から力が無くなっていく。
「もう潤君のとこになんて行かせないからね」
***
「アイジー・・」
「なぁに?」
コトが済んだ後のベットの上。
裸のままの体を投げ出して、シルクのシーツに包まる俺とアイジ。
煙草をふかすアイジに俺は聞きたいことがあった。
「何で俺が潤のところに居るって知ってたんだ?」
「・・・あー」
「しかもフェラ教えてもらってることまで・・」
「うーん」
「余りに当たりすぎてて怖かったんだけど」
「まぁあれはねぇ・・・勘なんだけどね。ほとんど」
「勘であそこまで当たるかよ!気持ちわりぃっつーの」
「愛だよアーイ☆」
「ふざけんな馬鹿犬」
マトモに答える気なんてサラサラないアイジに
俺は怒って背を向けた。
余りに当たりすぎるその勘に、本当電話で怖かった。
どれだけ正確で予想的中な勘なのか疑いたくなる。
やっぱ馬鹿だから?
俺には理解できねぇ。
「喉渇いた」
俺はそういって、シーツをクルクルとまいたままリビングへと出た。
ベットから立つ前に、アイジがオデコにキスをくれた。
あー・・何か安心した。
俺はちょっと熱くなった頬を押さえた。
***
「あーもしもし潤君?」
『あぁアイジ』
「さっきは有難う」
『いや、気にすんな』
「御免ねーキツイこと言っちゃってさ」
『いいよ別に。結局上手く行ったワケ?』
「もっちろん。キリトもフェラ上手くなってたし。潤君に教えて貰ったってのが気にいらないけど」
『お前が言い出したんだろ?文句云うなよ』
「まぁねー。キリトを怒らせてーフェラ慣わせてー上手くならせるって作戦。俺スゲー演技派じゃねぇ?」
『普通は自分でそういうこと言わないよ』
「ははっ。まぁ潤君もキリトに奉公して貰えて幸せだったでしょ?お互い様だよ」
『・・・・・お前普通に怖い』
「別にいいじゃない?これぐらい戯言だと思って聞いてよ」
『キリト傍に居ないの?』
「居ないよ。居たらこんな話できないでしょ?まさか、最初っから全部仕組まれてたなんてさ」
『鬼畜』
「それこそ戯言だよ潤君」
愛してることは事実。
アナタを誰にも渡したくないし、傍に置いておきたいのも事実。
でも、たまには吐きたくなる。
アナタを困らせて、俺に溺れさせる戯言を。
そう、全ては戯言。
子供の悪戯。
だから何時まで経っても俺は子供だっていわれるんだろう。
ね?キリト。
■一言■
何かイタイ話になってます。
苦手な方が居たら御免なさい(汗)
とりあえずアイジは計算してるってのが書きたかったんですよ。
ちょいミステリー系にしたかったんですが撃沈(涙)
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